1.《ネタバレ》 公開直後は散々な言われ方をされた映画である。
「これはウルトラQじゃなく怪奇大作戦だ」
「ナギラはいったいなんだったんだ。」
等々。
そもそも企画の推移の中に「金子監督や河崎実監督を起用して、オムニバスのウルトラQを」というのがあったから、一般ウルトラファンはそれを期待してしまったであろう(ちなみにこの企画自体は年月を経て、テレビ「ウルトラQダークファンタジー」に帰結する。)
しかしこの作品は、一部のウルトラファンには大きな思い入れがあるのだ。
80年代初頭、実相寺監督と脚本の佐々木守が企画した「ウルトラマン 怪獣聖書」と言う作品が、ATGで企画されていた。その内容は鮮烈にして繊細で、かつメッセージ性とダイナミズムに溢れた傑作であったが、やはりATGとウルトラマンというのはソリが合わなかったのだろう、企画は流れてしまった。
その「ウルトラマン 怪獣聖書」を換骨奪胎したのが本作だったのだ。
当時企画断念に至った経緯を知った者の、本作への思い入れは大きく、そしてまた期待を裏切らない出来であった。
実相寺式ナルシズムや映像美への偏り、物語の歯切れの悪さや怪獣の扱い等で、評価を悪くされる方も多いかもしれない・
ただ「ウルトラQ」という存在の本質(何かのバランスが崩れ、そこで社会の裏面に隔離されていた真実が顔を覗かせる)を思うとき、この作品が「ウルトラQを唯一無比代表する映画」なのではなく、2004年に放映された「ウルトラQダークファンタジー」等と併せて観れば、その意義や存在感がまた見えてくるのではないかと提唱しておく。