4.太平洋戦争真っ只中、日本中が暗い影に陥る中で、密かな恋心を募らせた男女。
出征、肺結核、二人に示された道はあまりに過酷だ。
それでも、離れることが出来ず、与えられた限られた時間を共に過ごした彼らの姿と事の顛末は、今となってはあまりにありふれたストーリー展開に見える。
けれど、もはやそれは物語としての王道であり、決して劇的な顛末を得られないことは、実際に同じような運命を辿った恋人たちが、あの時代この国には数多くいたということを表しているようで、感慨深い。
初めて、山口百恵&三浦友和の映画を観た。山口百恵に至っては、出演映画を観ることすら初めてだった。
初めて観たが、この二人が日本映画史に残る「ゴールデンコンビ」であったことは充分に納得出来た。
決して劇的ではないこの映画の唯一無二の見所は、この二人が生み出す空気感に他ならない。
そこには「演技」というアプローチの限界を超えた「表現」が確実に溢れ出ており、ある意味ベタなストーリー展開において、心から主人公二人の幸せを願わずにはいられなかった。
今夏(2013年)に公開される宮崎駿の最新作「風立ちぬ」と原作が同じではないらしいが、一部着想は得ているらしいということで、この映画の鑑賞に至った。
自分自身が歳を重ねていることも影響しているだろうけれど、このところ戦前戦後の日本のありふれた生活風景を描き出した映画に弱い。
そこに生きた彼らが、厳しい社会の中で、健気に力強く時代を紡いだからこそ、今この瞬間の僕たちの生活があるのだということを考えると、胸を熱くせずにはいられなくなる。
もっと若い頃ならこの手の文芸映画は退屈でたまらなかったことだろう。
宮崎駿版「風立ちぬ」も楽しみでならない。