1.《ネタバレ》 予告編から想像した通り、心理的表情と観念的ダイアログがくどい映画。
諜報のプロとしての側面や家族のドラマなど、内容をいろいろと欲張ったのも冗長さの原因の一つだろう。
その割に、帰国後の顛末はほとんど省略というのも物足りない。祖国からの迫害には極力触れないという配慮か。
外務省を追われて以降こそ、夫婦のドラマの見せどころではないか。
襖を介しての語りかけが二人の出会いのきっかけとなるが、そこでの一方向的な会話が
後の領事館での対話に活かされる形となる。であればその出会いの瞬間はもっと繊細に
映像で印象付けて欲しいし、
『ゴッドファーザー』もどきのダンスに時間を割くくらいなら、要である二千通のビザ発給を映画らしく肉体労働として描写しつつ、
それを支える妻の姿をこそ描いて欲しいところでもある。
ともあれ、エンディングの杉原一家の家族写真が最も感動的である。
戦後70年を主題とする今年の邦画も、残すところ山田洋次のみ。