2.《ネタバレ》 わかったふりをする。理解し共感した体をする。
自分を偽り、相手の望む、好まれる自分になろうとする。
でも巧くいかない。上手に出来ない。思い通りにならない。
本当の自分のことを理解して欲しい。
でも、本当の自分のことなんて、自分以外に分かってもらえるはずはない。
エヴァンがついた「嘘」が、一瞬の竜巻のように周りを巻き込んでいく。
SNSという大きなうねりになって、エヴァン本人も周囲にいる人達をも。
でも、それは偽り。共感も感動も一瞬の流行り病。
一過性のブームが終わり、今度は非難と否定に姿を変えた。
自分だけが不幸で苦しんでいたわけじゃなく、
いろんな人が自分を偽って、胸の中で泣き叫んで、助けを求めている。
どうでもいいと思っているたわけではない。否定していたわけじゃない。
上手に出来なかった。どうして良いか分からなかった。
そんな自分を責めながら生きている。
コナーの両親もエヴァンの母親も我が子を想いながら。
終盤、SNS上で好意的だった人たちの冷ややかな視線を浴びながら、
エヴァンがコナーの好きだと残していた本を読み続け、
コナーが何を思い、求め、愛していたのかを理解しようとします。
その末にたどり着いた、優しくて、ちゃんとした自分を切望するいコナーの歌声。
誰にも届かなかった、コナーの本当の想い、苦しみ、絶望。
エヴァンはSNS上の言い訳に使うことなく、
みんなの前で自分の想いを歌うコナーの姿を知って欲しいと思う人だけに伝えます。
ゾーイがエヴァンを果樹園に招待し、今のあなたとここで初めて出会いたかった、と言ったのも、
出会いのきっかけは言葉の偽りだったけれど、
誰もが抱えている痛みや悲しみを、
今のエヴァンは誰よりも理解している人だと信じたからではないでしょうか。
ベン・パレットの歌声は圧倒的でした。
押しつぶされそうな心の叫びがダイレクトに突き刺さるような、
息を呑んで聞いてしまいます。