112.家庭内の暴力が新たな暴力を生むという暴力の連鎖とメディアによる暴力の垂れ流しが人々の暴力への感覚を麻痺させるという二つの仕組みが暴力の源のように描いていると思う。
このあたりは大体の人が納得できると思う。
しかし、テレビのレポーターが銃を喜んで乱射することを描くことによって人はみな心に悪魔を抱いているとかみな罪を犯しているようなことまでを描いているが、このあたりまで来ると多少分からなくなってくる。
確かに暴力願望というのは誰でも持っているかもしれない、メディアと共に暴力への好奇心を募らせているかもしれない、しかし罪を犯す人と犯さない人は紙一重ではない。
もちろんある環境に置かれれば罪を犯さざるを得ないというケースはあるかもしれないが、やはりこの境界線には決定的な差があるのではないか。
そして、この映画が導く暴力に対しての答えが見えにくいと考えられる。
ストーンのことだからよくは分からないが、暴力を推奨しようという人はまずはいないだろう。
しかし嘘だらけの一生より純粋な一瞬を望むというようなセリフもあり、暴力を実行することこそ「生きている」人生であり、暴力を頭に留めておくことはまやかしのようなことも描いていた気がする。
この映画は「暴力」について考える一助にはなるが、これでは答えがないだろう。
しかも「暴力」に加えて訳の分からん「愛」まで持ち出してくるともうこれはちょっとお手上げ状態に陥る。
しかし中身のテーマ性はともかく、この映画を見てその映像の奇抜さに相当の衝撃を受けたことは事実。
その演出に果たして意味があるかどうかは置いておいて前半1時間はまさに驚きの連続だった。
後半は多少ダレルような気がした。特に暴動から脱獄に至る部分はやや平凡な創りという印象。
レポーター殺しは良かった分、この辺りはもっと何とか出来たような気もする。