7.《ネタバレ》 原作は未読ですが、どうも大藪春彦の『人狩り』をかなり翻案した内容みたいです。大藪春彦の小説は独特の文体にはまって昔よく読んだんですけど、映像化されると凡作・失敗作になった映画が多いという印象が強いですね。この映画はその中でもましな方だという感じですが、鈴木清順が撮っていますから原作はあくまでモチーフと思った方が良いでしょう。 モノクロ映像の殺人現場の室内で、テーブルの花瓶に活けられた花だけが真紅の色彩を放っている、初っ端から清順ワールド全開です。でも清順の持ち味であるアヴァンギャルドな映像はどちらかというと控えめな印象であります。アヴァンギャルドとハードボイルドとは相性が良いと思うので、もっとぶっ飛んでも良かったかもしれません。それでも小林昭二と川地民夫のボス兄弟の変態っぷりをはじめ、登場キャラたちの妙な作りこみ具合は訳が判らなくて面白かったです。そう考えると、主役が宍戸錠というのがミスキャストだった気がしてなりませんでした。この人はどう見たってハードボイルドが似合うタイプじゃないでしょう。 余談ですけど、現金強奪のシークエンスで発煙筒をダイナマイトに見せかけて発煙させますが、これって後に起こる三億円強奪事件と手口が一緒なんですよ。あの犯人ももしかしてこの映画を観ていたのかも… 【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2018-04-21 23:38:49) |
6.タイトルに「青春」とあるが、全く青春要素は皆無でひたすらハードボイルドでバイオレンスな作品だ。清順特有の美学が開花した作品でもあり、単なるヤクザものとは一味違った魅力が満載である。 キャバレーのマジックミラー越しの構図や透明な床下からのショット。原色を基調としたセット。紅白ツートンカラーの電話。スクリーンの裏にある事務所。突然巻き上がる黄色い砂嵐。それらの清順特有のこだわりを観ているだけでも楽しめる。また、基本のストーリーはしっかりとしてるし、『東京流れ者』や『殺しの烙印』ほどぶっ飛んではいないので、清順初心者にもオススメできる、入門編に最適な作品であるとも言える。 【ヴレア】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-12-10 21:10:28) |
5.記憶の中でひときわ美しく残っている「夢のようなシーン」てのは私の映画受容史で二つあって、一つはムルナウの『サンライズ』の夜景、もう一つがこれの、ヘンタイの会長が嵐の外へ女を追いかけていく黄色い風のシーンだ。しかし記憶の中で磨かれて実際以上に美化いているような気もし、どちらも再見はしていない。ほかの多くの「美しかった名シーン」とは別次元の、息を呑んだ体感の記憶になっていて、この印象を壊したくない。こういうのはこちらの体調やら何やら好条件が重なった一度きりの体験であって、とくに本作のほうは褪色したフィルムで観たカラー作品なので、現物はまたかなり違っていた可能性もあり、たとえばDVDで見ても、あの「夢のような」感じはもう訪れない気がする。とにかくそういうワンシーンが際立って記憶されている映画です。スクリーンの裏側の事務所なんてのも面白かった。上映されている映画のほうの銃声で慌てたりするところもあって。あとプラモデルの飛行機がたくさんぶら下がっている部屋とか、そういう異様な空間設計で面目躍如の監督。話を円滑に進めようという気など全然ないもんね。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 8点(2011-02-12 11:00:00) |
★4.《ネタバレ》 誰が野獣で、何が青春なのかさっぱりわからない、日活時代の鈴木清順にしては珍しくコミカルさを廃したハードボイルドものだ。 冒頭、花だけが赤いという、要するにそこに注目を置きたい強調したいだけに過ぎないことを、そうやって派手にやるのが日活時代後期の鈴木清順なのだ。世には美学美学、美しいと言われるのだが、大きな間違いで、ただのデフォルメに過ぎないのだ。 当時の日活撮影所で作られる映画の本数など数えきれないほどだった。ではその中でどうしたら目立てるか、どうしたら人と違うことが出来るかということ、それがデフォルメということだ。やくざの事務所などという設定はあまりにもありふれている。しかしそれで映画を撮らなければならないのが、撮影所所属の鈴木清順の仕事なのだ。そこで思いついたのがキャバレーのミラー越しの事務所、映画館のスクリーンの裏の事務所、更には黄色い砂風荒ぶ荒野にまで及んだということだ。つまり何度も言うが、美学なんかではない、どうすれば他とは違うかという、既存の映画に対するデフォルメでしかないのだ。要するに文化祭の模擬店などで他の店より目立とうと屋台を派手に飾り付けるようなものだ。売っている焼きそば自体はどこも味は大して変わらないのにだ。 そして宍戸錠というなんとも覚束ない歩き方をするこの役者、この人が鈴木清順の最高の共犯者なわけで、とてもじゃないが二枚目でかっこいいなどとは言えないこの男、むしろ泥臭くてかっこ悪いのだが、宍戸錠は宍戸錠を自分でデフォルメする力を持っているらしく、それがかっこ悪いのだけれどかっこいいのだ。やること為すことあまりにも出鱈目で無茶苦茶過ぎてかっこいいのだ。あの笑顔が似合わない憎たらしい顔といったらこの上ないくらいにかっこ悪いけどかっこいい。 日活時代の鈴木清順の映画は、当たり前のように美味しい焼きそばは作る(ま、それ自体が凄いのだけど)。ただそれだけでは売れない。だから屋台を飾り付ける。つまり本当は目立ちたがりでちょっと気恥ずかしくなるなというようにかっこ悪いはずなのだが、あまりにもそれが出鱈目過ぎ(るにも関わらず、鈴木清順のたちの悪い知性が見え隠れしてしまっ)てかっこいいのだ。 【すぺるま】さん [映画館(邦画)] 8点(2009-03-23 03:54:29) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 時折、不自然に思えるようなショットのつながりがありますが、それが必然なのだと思えてしまうくらい一つ一つの画面に力があります。またジョーと竹下が内密な話しをするのは当然のごとく雨の埠頭のような場所であって、野本が女房を殴るのは当然のごとく砂埃が激しくまう荒野のような場所になっているのが面白いところです。 さらに男と女という生き物も巧く描かれていまして、例えば野本の女房の狡猾な振る舞いもそうですが、三波の治療をするシーンで全く目をそらさずに見る竹下の奥さんが怖い。これは刑事の妻だからではなくヤクザな女だったからなわけですが、表では編物教室なんかやっていて実は怖~いという二面性が凄いです。それに対して男はとことんバカなのです。竹下もバカだったしジョーもバカだったし、極めつけは三波であって、その行動原理は短絡的で言うに及ばずですが、そこには絶対的な決まりというものもちゃんとあって、たとえ親分を撃ち殺すことになっても男なら何であろうと貸しは返さなきゃならんのです。 【ミスター・グレイ】さん [DVD(邦画)] 9点(2009-01-30 18:53:27) |
2.モノクロ画面に赤い花が映し出されハッとして、カラー画面に変わってまたハッとする。冒頭の数分で一気に引き込まれた。キャバレーをマジックミラー越しに覗えるヤクザの事務所では店内の音を聞いたり消したりできるのですが、その音の出し入れが絶妙。対立するヤクザの事務所も壁一面がスクリーンになってて面白い。鞭打ちの刑のシーンの黄色すぎる砂嵐の画に、今につながる清順の自由な美学を感じる。映画ってこんなふうに撮っちゃったっていいんだよ、という奔放な発想の実用化がこの頃から始まる。とはいっても清順の初期作品はストーリーだけはオーソドックスに語られるほうなので、この作品も誰にでも楽しんで観ることができる作品だと思います。そのオーソドックスなストーリーの流れの中で清順だけが持ち得る空間の美を堪能できれば言うこと無し。 【R&A】さん [DVD(字幕)] 7点(2005-12-20 14:23:58) (良:1票) |
1.ジョーさんはやってくれてますねえ。ムチャクチャですよ、笑った笑った、でもムチャクチャかっこいいんですわ。ねこさんなんて存在だけで笑っちゃう、ヅラ?カツラ?気になったなあ。途中まではストーリー破綻してるかと思いきや以外にちゃんとしてるしラストも面白い。車に発炎筒ってのは三億円事件で採用されてるんですね。 【亜流派 十五郎】さん 7点(2004-03-22 22:14:45) (良:1票) |