17.黒澤明監督が自身では脚本を書かずに演出した2作品のうちの一本。前半はストーリーがつかみ辛くやや退屈したが、後半はけっこう引き込まれた。特に原節子演じる主人公が野良仕事をするシーンはかなり壮絶(「七人の侍」エンディングの田植えシーンとはえらい違い。)で、そこに黒澤監督らしいエネルギッシュさを感じるし、その演出に見事に応えている原節子の熱演ぶりがまたすごい。以前原節子を見たのは木下恵介監督の「お嬢さん乾杯」だったと思うけど、その時の令嬢役とはまるで違う逞しい女性を堂々と演じていて驚かされる。黒澤監督の作品の中では珍しく女性の生き方について描いている点も(描き方がちょっと男っぽく感じられてしまうのだが)新鮮だった。 【イニシャルK】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2008-03-16 16:41:16) |
★16.こんな壮絶な田植えシーンははじめて見ました。ちょっと理想主義的すぎるかな、という内容ですが、自分の信念を貫くにはそれぐらいの覚悟は必要なんですかね。 【ゆうろう】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2006-05-02 12:45:11) |
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14.とにかく、亡夫の農家に戻り、畑仕事をする原節子の姿が凄い。、、、泥に汚れ、日に焼け、汗を流し、エネルギッシュに動く原節子のこんな姿は他では見たことがありません。また亡夫の農家に対して、誹謗中傷を加え、白い目で見る、農民たちの表情を、短いカットでつなげてゆくところとか、リズム感とリアリティがあります。、、、、、、しかし、話全体としては、あまりに単純な構図になっているように思う。戦時中に節を曲げなかった野毛一人が英雄だ、みたいで。、、、、、特に、八木原が京大に戻った時の、学生を前にしたスピーチで、「一番残念なのは、ここに野毛君がいないこと云々」というくだりは最低。、、、戦場で死んでいった多くの学生よりも、野毛一人の方が評価できるのだろうか。そういう英雄主義、エリート主義が、映画全体を貫いているように思えた。 【王の七つの森】さん [DVD(字幕)] 6点(2005-06-30 11:15:10) |
13.小津の映画で、妹役の有馬稲子にマージャン屋のおじさんが「あんたのお姉さん、 きれいだねえ」と言う場面があります。考えてみれば、 映画に出ている女の人は皆女優なので普通の人より綺麗な人ばっかりなのに、 その中でこの台詞に観客が納得してしまう女優、が原節子でしょう。 この映画でも、村八分状態の中堂々と歩いていく場面があります、 しかもお嬢様が野良着を着て。 村の人は気迫に負けて距離を置いて非難の目で見ているだけです。 やはり、あの顔なので成立つというのは否定できません。 それは黒澤監督がいかに原節子の魅力を撮るかを追求した (と勝手に思い込んでいますが) この映画の全ての場面に言えると思います。 【amicky】さん 7点(2004-09-12 20:08:33) |
12.黒澤明の戦後第一作。戦前の京大滝川事件、スパイゾルゲ事件を背景に、原節子が教授令嬢役を熱演する。ストーリーは戦中の国威高揚映画の反対の、取って付けたような戦後民主主義のプロパガンダで、深みはない。全編原節子、原節子による原節子ファンのための映画といってもよく、小津作品とは違った、若く美しく激しく、汚れ役にも果敢に挑戦する原節子が可憐である。(友人の感化により、すっかり原節子ファンになってしまった。) 【きりひと】さん 6点(2004-08-06 06:13:37) |
11.黒澤の映画はまず、どうしても伝えたいことがあり、それは言葉だけでは伝えきれないという狂おしいまでの渇望があり、その伝えたいことをどうしたらもっともインパクト強く伝えられるか、ということのためにあらゆる技術が総動員されてる気がする。映画であれ何であれこれが表現の基本で、とくべつ撮りたいことがなにもないのに、ただ映画が好きだから映画が撮りたいなどという人は、見せられる方が迷惑なので映画など撮るのをやめてください。 黒澤の映画はすごくシンプルで、てらいがないし、ストレートで、つよい。その光はあまりにもぎらぎらとつよすぎて、目をそむけたくなるほどだ。だから日本人に黒澤アレルギーの人が多いのもなんとなくわかる気がする。 それから黒澤映画はひとつひとつの絵の構図がとにかく完璧です。 【ウェルテル】さん 9点(2004-06-06 02:11:06) |
10.哀愁の糸川検事!!可哀想な糸川検事!!一番真っ当なのは彼だ。それなのに、「戦争阻止!!」で自分よがりな親不孝者の非国民である野毛に原節子を取られちゃうし、その原節子には軽蔑の眼差しで睨まれちゃうし、理不尽である。糸川検事が学生時代、政治運動に挫折したのは臆病風に吹かれたからではない。女手一つで育ててくれた母親への親孝行の為、断腸の想いで離脱したのだ。だのに、不当に卑怯者に描かれておる。不憫で涙を禁じ得ない。私には原節子が健気で勇敢なヒロインとは思えない。どう見てもファナティックでどう猛な女だ。 糸川君、嘆く勿れ、泣く勿れ。君は美しい。時代の運命に従順である者は美しいのだ。糸川検事よ永遠なれ!!糸川検事に7点!! 【水島寒月】さん 7点(2004-04-26 19:35:39) (良:1票) |
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9.見所は原節子のヨゴレ役ですね、白痴でも悪女に仕立て上げる黒澤監督、原節子って眼力あるしハキハキ喋るから意思の強い女性が似合います。思想の左右ってのは時代によって判断分かれますから、どちらが正しいというのは一概には言えないでしょう。ただ一点の悔いも残すことなく信念を貫くというのはなかなか出来る事ではない。そして戦争よりなにより一番恐ろしいのは思想もなにもない普通に生活している市民です。 【亜流派 十五郎】さん 7点(2004-02-14 01:21:51) |
8.ちょっと途中途中退屈な所はあったけど、全体を通して見るとまとまってた印象がある。中でも「顧みて悔いの無い生活」という言葉は強く心に残った。 【ボーリック】さん 7点(2004-02-07 01:34:58) |
7.黒澤作品に於いて、女性が主人公という数少ない本作。京大・滝川事件とゾルゲ・スパイ事件をモチーフに大平洋戦争をはさみ、反戦運動家を選んだ女性の、信念を持ち強く逞しく生き抜く姿を描いている。当然見どころは、スター女優原節子の演技。しかも、定番のお嬢様役のみならず、ドロドロの汚れ役を好演したところが本作の売りでありミソ。見方を変えれば、敗戦直後ということもあり、愛する夫や息子を失った世の女性に向けて“強く逞しく生きる”というエールを送っている作品とも言える。やはり野太い仕上がりの中、黒澤節を感じ取ることが出来た。 【光りやまねこ】さん 8点(2004-01-14 22:02:04) |
6.原節子が美しい・・・らしい?生き方のことならまぁそうでしょうが、顔のほうはどうも・・・。いまいち退屈でした。 【のほほん息子】さん 4点(2003-10-31 03:04:39) |
5.演技はちょっと芝居がかっていて古い感じがするし、途中やや退屈な部分もあったけれど、後半の展開には引き込まれてしまった。主人公の心理に焦点をあてて分かりやすい手法で描いているので、古い映画にしては見やすいと思う。 |
4.この話にはモデルがあって、京大教授八木原は法学部教授・滝川幸辰、野毛は尾崎秀実だという。時代背景は昭和8年から20年の敗戦まで。京大教授の娘のお嬢様が時代に流されることなく、信念を持った男を選び、苦難の末に自分の選んだ道に悔いはないという、強い女性の生き方を描いている。黒澤は男くさい作品が多いのでこれと戦時協賛映画の「一番美しく」などは珍しい女性映画。この映画とは180度転換、戦後価値観のひっくり返ってまだ1年という時に、反戦、民主主義をたたえるようなこの作品ができたのは、アメリカ占領下で検閲があり内容に制約があったことがある。原節子がこんなに泥まみれの強い女性を演じたのも他にない。知性と強い意志を感じさせる大きな目に説得力がある。女は平和で安定した生活を選ぶのが常なので、こういう生き方のできる女性は少ないだろうと思うけど・・ 【キリコ】さん 7点(2003-05-24 15:22:46) |
3.時流に流されず、自分の信念にもとずいて生きていくことは大変な困難を強いられます。これがなかなか出来ない事ですが、この主人公ぐらい強い人(変わり者といっていいほど)でしたら進んでいく価値があるでしょう。行動とはまさにこの事。正義を成すには長い月日が必要です。やはり黒澤のスタイルを確立する前なのでやや退屈さも・・。黒澤作品はこれと「どん底」を見ていなかったのです。 【チューン】さん 6点(2003-02-02 11:13:56) |
2.「顧みて悔いのない生活」「自由とはその裏に苦労と責任を背負っている」・・・こんなテーマの映画は他にないのでは?黒澤ってスゴイ。まさに日本映画の秀作と思う。 【Tomo】さん 10点(2002-03-01 20:05:49) |
1.原節子がこんな泥まみれになる作品って観たこと無いですね。テーマはやはり黒澤作品。勿論彼にとって初期の作品なんで、“やはり”と言うのも妥当かどうかは分かりませんが、京大紛争からスパイと罵られてって展開は、これが1946年作ってことを考えると凄いことだと思います。差別に屈しない強さを感じさせる原節子の大きな瞳に、観ているこっちもたじたじになりました。 【イマジン】さん 8点(2002-01-27 15:45:16) |