1.ピカソの絵画制作過程が、特殊キャンパスの裏面を通して直に画面上に描写される。
モノクロの簡素な描画(スタンダード画面)から始まり、
最後には大掛かりな油彩(シネスコサイズ)にスケールアップして
変幻自在に絵筆が展開される様が非常に圧巻であり、劇的な構成も工夫されている。
中盤では、色鮮やかなキャンパスと対比して色を落とした硬質な画面で
撮影風景が挿入されその手法の種明かしをしてくれると共に、
フィルム残量を示しながらの時間制限のサスペンス要素を取り入れたりと、
『恐怖の報酬』の監督らしい趣向が凝らされている。
最後の油彩制作過程は裏面からのリアルタイムの撮影は当然出来ない為、
表面側からコマを割っての撮影となり必然的に画家の試行錯誤の「間」は
省略されてしまっているのが残念だが、
このクライマックスの画面変化は凄まじい。
完成品の内側に込められた膨大な下書きと手直しの過程。
絵がまさに躍動する。
モーション・ピクチュア=映画である。