12.《ネタバレ》 家を出た妻の置手紙は「みんな月でした。もう、我慢の限界です。さようなら」
月は自らの裏側を決して見せず、太陽があって初めて輝く。
駆け落ちした妻は誠実な面しか見せないつまらない夫といては一生輝けないと思ったのだろう。
退職金目当てだったはずの由美が冴えない中年男に本気になっていったのが腑に落ちなかった。
が、昔飼ってていつも後ろをノタノタ付いてきたウサギに似ていたからだという言葉に、二人のキャラが浮き彫りにされる。
そんなソープ嬢を吉本多香美が熱演。
北村一輝のサディスティックなキレっぷりはハマってたが、主役の奥田瑛二が役に全然合ってない。
義兄と由美が同居を始める日に、アキラがキッチンで義兄に見せつけながら乱暴に由美を犯すシーンはインパクトがあった。
自首したときの姉との別れは、肩を噛まれて恍惚となるアキラの姿に近親相姦の臭いが強く漂う。
アキラのほうが主人公を喰うくらいの存在感があった。
原作者の花村萬月の作品は幾つか読んでいたが、背徳感やバイオレンスなど毒気をはらんだものが得意のようだ。
ラスト、主人公が由美を置き去りにしようとして、また思い直して戻ってくるなどわけがわからず。
主人公に魅力を感じないのが一番の泣きどころ。