6.《ネタバレ》 いや、これって成瀬監督の作品の中では比較的マイナーな方ですが、傑作なんじゃないでしょうか。
高峰秀子と飯田蝶子の掛け合いの面白さ、話が次々と展開されていき全てが分かっていくというストーリー展開の巧さ、女同士のバトルの凄み、相変わらず「イライラする男」を演じると素晴らしく巧い森雅之、仲代達矢の意外な(?)清々しさ、そしてラストの“親はなくとも子は育つ”的な終わらせ方など、全てにおいてハイレベルな本作です。
高峰秀子と森雅之が共演しているせいもあって、成瀬監督の代表作『浮雲』を連想してしまいました。
『浮雲』は救いようのなさ加減がまた逆に良かったんですが、それに対し本作は、最後に「子供は子供」みたいな救いがあって、とてもバランスが取れていました。
そういう意味でも、本作は『浮雲』より自分の好みに合った作品となりました。
結局「不倫」というものや、「浮気」という名の裏切りは、「悲劇」しか生まないということを本作は語っている様な気がします。
それと同時に、男女の仲というものは、なるようにしかならない、理屈では割り切れない、そういう“やるせなさ”も主張されているんではないかと思うわけです。
それらを観る者に散々訴えかけた後で、上にも書いた様な「親はなくとも子は育つ」的な救いのあるラスト。
いやぁ、実に味わいがあって、しかもバランスの取れた傑作ですね。