7.《ネタバレ》 なんとも消化不良な気分になる映画です。
内容自体は、とてもよく出来ていると思います。
実話を基にした作品ですから、内容はあるし展開もドラマ性に満ちているはずです。
それなのに「面白い」とは言い切れないのです。
この作品に漂う妙な残念感、物足りなさは、いったい何なのか?
私の答えは、以下の3つです。
(1)まるで「フィクション性の高い良質なドキュメンタリー」を観ている気分になる。
(2)ストーリーが散漫、故に作品としての主張も中途半端になっている。
(3)脚本が稚拙&監督の力量不足のせいか、冗長な部分も多い。
町を丸ごと一つ作って当時の生活を復元したセットは、とても見応えがあります。
キャスティングも豪華で、製作側の意気込みも窺えます。
それなのに、肝心のストーリーが淡々と進み過ぎているのです。
せっかく「異国の地で生きる日本人の苦悩、存在意義、民族的ルーツが、弱小野球チームの快進撃により人種問わず認められ、誇りと互いを尊重する気持ちを見出していく」
という、非常に解りやすく描きやすい王道のテーマなのに、それを活かしきれていません。
「頭脳野球」に至っても面白く出来る要素は多々あるはずなのに、その展開は冗長で漫然としています。
チームで掘り下げている様子も特に描かれず、ひたすら試合でバントに終止。
スポーツを扱っている映画のわりに動と静で言えば「静」の撮り方が多く、
スローモーションも多用している所為か、焦れったさが残り高揚感に欠けています。
また、移民差別による苦悩、辛さ、葛藤などにおいても、話が中途半端です。
これは無駄に役者を豪華にした弊害でしょう。
出来るだけ多くの役者にスポットを当てようとしたが故に、どの話も上澄みだけ掬った印象しか残らないのです。
時代背景も相俟って、戦争の理不尽さ・平和の尊さも訴えたかったのでしょうが、
尻すぼみになって駆け足で終わるなら、いっそ無駄に描写しない方が得策だったのでは?
脚本の稚拙さや監督の力量不足は、こうした点にも影響していると思います。
独特の感性をお持ちで将来を期待される監督さんですが、まだ若い分、力不足は当然かもしれません。
しかし、だからこそ「王道だが素晴らしい映画になり得たかもしれない」作品を手掛けるのは、少し早かったのかなと思えてなりません。
「もったいない」この一言に尽きます。