18.《ネタバレ》 オリジナルは未見。“黒澤映画を知らない世代”である自分がオリジナルを観ずにリメイクを観ることで、他の人とは違う感じ方や、他の人とは異なったレビューができるのではないかと考えたため、鑑賞することとした。一言でいえば、“普通に面白い”というところか。角川映画の変なところにチカラが入った気合が、逆に新鮮に感じられる。
織田も相当気合が入りまくっており、彼のキャラクターには魅力を感じられた。
しかし、「ものわかりが良すぎる」のが欠点だろうか。
「鞘に収まらない刀」という設定の割には、彼は「いい人」過ぎる。
外見は粗暴であるが、中身はそれほど悪い人ではないというところまでは同意できる。
しかし、本質であるコアな部分は「鞘に収まらない刀」であるということをきちんと描いて欲しかった。
切りたくなくても人を切らざるを得ない性分、争いごとに巻き込まれて困惑するのではなく、争いごとにクビを突っ込まざるを得ない性分を描いてこそ、「鞘に収まらない刀」なのではないか。
残り9人に慕われるのではなく、最後の最後には残り9人から嫌悪されるようになってこそ、本作の深みが増すような気がする。
エンドクレジット中に背を向けて一人歩く彼の姿に、彼の孤独がみえない。
“狼”はいくら頑張っても“羊”や“兎”にはなれないという孤独があってもよかったのではないか。
単なるヒーローモノとしては“普通に面白い”が、“傑作”にはなり得ない作品だ。
気になったのは「織田と豊川の対決時の風の音」だ。
二人の対決時の効果音として、「風の音」「草木が揺らめく音」などが盛り込まれていた。
この演出自体は緊張感を高める効果としては悪くないと思うが、肝心の“風”がほとんど吹いていないのが問題だ。
なぜ“風の音”の演出が必要かというと、最大のクライマックス時に“まったく音がしない”という演出をしたいがためである。“まったく音がしない”という状況を効果的に描くためには、何かの“音”を立てる必要があった。そのため、何かの“音”を立てるという演出自体は、理にかなっていると思うが、プロとしてとことんこだわるのならば、きちんと“風を待つ”という姿勢が大事なのではないか。
人をいくら切っても血が出ないことにはまったく違和感を覚えないのだが、こういう部分には違和感を覚えてしまう。