12.山中貞雄をただ早逝の天才という知識だけで、初めてこの作品を見た時には、正直、うわーなんと厭世的、諦観的な作品なんやと。山中貞雄=ペシミスティックと勝手に式化してました。ところが・・・『丹下左膳餘話 百萬両の壺』『河内山宗俊』を見ると、ありゃりゃーー。さらに評伝などを読むと『街の入墨者』の脚色にはルビッチの『私の殺した男』、演出にはキャプラの『或る夜の出来事』を取り入れた、らしい。『人情紙風船』の憂色の濃さを時代に見るのはたやすいかもしれません。しかし三村伸太郎の生き生きとした脚本を全く反対にしてしまった山中の心情はいかなるものだったんでしょう。空と流れゆく雲のカット、金魚売りの長閑な声、ラストの紙風船。うーん、切ない。特にラストの紙風船、静かに向こうへ流れていく姿、あれはもう山中そのもの・・・。10点はいつか見ることができると信じて『街の入墨者』『国定忠治』にとっておくとしよう。 【彦馬】さん 9点(2004-05-25 01:01:38) |
11.昔、山中貞雄というすごい監督がいた、という話を聞いて早速大学の図書館で本作品を見た。生まれて初めての戦前の邦画だった。戦前の邦画なんて今の学生自主映画くらいのもんだろうという誤った認識を持っていた僕は再生ボタンを押すや愕然。画面には江戸時代にそのままカメラを持って行ったような生き生きとした長屋が映し出された。失礼ながら、想像を遥かに超える出来だった。呆気にとられながら見つづけ、見終わってしばらくは衝撃で席を離れることができなかった。これほどまでに心をえぐる映画を見たのは初めてだったし、しかもそれが戦前の邦画。山中貞雄が20代でこの作品を撮り上げ、そのまま出征して亡くなったという話と合わせて、その場で泣いてしまいたいくらいだった。その後すぐに図書館で山中貞雄関連の本を探してむさぼり読んだ。 ただただ、山中貞雄の最高傑作と言われる『街の入墨者』のフィルムがいつかどこかで発見されやしないかと心から祈っています。 【藤村】さん 10点(2004-02-12 19:32:13) (良:2票) |
10.髷を結った現代劇の傑作。人一人が自殺したというのに、「今夜あは通夜で酒が飲める」と内心ほくそえんでいる長屋の住人、そこに徹底した監督のニヒリズムを感じる。とにかく凄い。こんな映画、ちょっとない。 【ひろみつ】さん 10点(2003-12-21 00:41:10) |
9.ふとしたきっかけで友情を交わし、そして破滅へと向かっていく二人の男…。29歳という若さで戦地にて病死した山中貞雄が、まるで死を予感したかのような物語。 しかし、深い諦念と絶望の中に、それでも生きていこうという極限の希望が、演出や撮影技術などとは別のところで、目に見えない力として存在し、この映画を動かしているような気がします。 今までに何度見たのかわかりませんが、その度に、カッティング、撮影、構図、演出、照明、あるいは偶然、謎の力、ようするに映画のすべてを堪能し、発見し、感動します。 絶望的なまでに青い空と白い雲、土ぼこりが緩やかに舞う大通り、縁日に降るにわか雨、雨宿り、魔がさす瞬間、残された傘、暖簾、手紙…。 「映画」は1930年代に完成し、しかし今なお、新たな発見や可能性を生み出している。1本だけ映画を選べ、そう言われたら迷わずにこの映画を挙げます。私のベスト1です。 【まぶぜたろう】さん 10点(2003-12-03 20:54:37) (良:2票) |
8.なんとも言えないような寂しさ・悲しさを感じるラストシーン。長屋の住人たちは、今まで見たどんな時代劇の人物たちより江戸に生きてる「人間」そのものを見るようだった。浪人の海野も商人もやくざも、みんな人間くさいのに一人、海野の妻だけは武士の魂というか誇りを持って希望のない人生にきりをつけた。明るい話ではないのに、前進座の俳優陣の面々の名演といい素晴らしい時代劇になっている。しかし監督の山中貞雄は「これが遺作ではチトサビシイ・・」と言って出征して帰らぬ人になった。惜しい、、、本当に惜しい、、生きていればこれ以上の素晴らしい作品を見られただろうに・・・ 【キリコ】さん 10点(2003-11-29 15:53:21) (良:1票) |
7.江戸時代の長屋における「チトサビシイ」お話。浪人夫婦の境遇が「チトサビシイ」。ラストの紙風船が転がり落ちるシーンも「チトサビシイ」。紙風船の如く、才能を「膨らましていた」山中監督にとって、この作品が遺作となったことも、やはり「チトサビシイ」。そして、戦争の所為で、その紙風船が割れんばかりに「膨らみきった」姿を見せることなく萎んで落ちたのは、「非常にサビシイ」。それだけに紙風船のシーンがいつまでも目に焼き付いて忘れられない。 【STYX21】さん 9点(2003-11-27 00:08:26) |
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6.誰が言ったか知らないが、僕がこの人を批評するにふさわしいセリフがある。「山中貞雄が生きて再びメガホンを握ったならば、日本はおろか世界にその名が轟くであろう。」 黒澤が世界の巨匠ならば山中は日本映画の巨匠である。 【モンド】さん 10点(2003-10-25 19:58:20) |
5.ラストは背筋がゾクッとする。人生へ対する暗さというのはこの映画が製作された戦争時、物語の舞台である江戸時代、そして公開から70年近く経った現在にも当てはまっている。 けど、日本映画の最高傑作って言われると・・・。ぷしゅ~ 【紅蓮天国】さん 7点(2003-10-13 08:35:14) |
4.現存する日本映画の最高傑作でありながら、山中貞雄の最高傑作ではない。これは、彼が、あるべき未来を奪われる予感に襲われつつ、それでもなお、映画への並々ならぬ愛情を微笑みと共にフィルムに塗り込めた珠玉の絶品! 【なるせたろう】さん 10点(2003-08-09 17:58:10) (良:2票) |
3.戦争で若い命を失った天才映画作家、山中貞雄の最高のペシミズム表現。前進座の名演、長屋のセット、雨、雨上がりの美しい映像、運命を暗示してころがる紙風船。窮極の名画、日本映画の最高傑作!! 【チャターBOX】さん [映画館(字幕)] 10点(2003-06-12 14:10:02) (良:1票) |
★2.この映画に映し出される空も風も雨も夜も人も、全てが愛しく、そして怖い。厭世観たっぷりの映画なのに、暖かい血がかよっている傑作。 【るーす】さん 10点(2003-02-07 21:28:44) (良:2票) |
1.潔さ。愛情。絶望。すべてにおいて史上最高の傑作。 【GTR】さん 10点(2002-03-24 22:04:15) (良:1票) |