13.《ネタバレ》 ダイアンクルーガー、本作に関して言えば、素晴らしい俳優。今まであまりご縁が無かったのであくまでも本作についてです。クールで芯が通った強い女性像は、ジョディフォスターを思わせる。似てはいないけど。
普通の幸せな家族が巻き込まれた悪夢のような事件。一生のうちに一番言われたくない言葉「DNA鑑定で身元の確認を。」もう泣き崩れるしかない。そして「あなたがちゃんとみてればあの子は…」これもきつい。
度々ドキュメンタリーのような撮り方の映像をはさみ、視聴者にまるで実話のように見せ、感情移入させる。
ネオナチやギリシャの極右団体など日本人にはあまりピンと来ないが、サムライのタトゥーを入れた主人公カティヤの魂の物語であることは痛いほど伝わった。
重たい題材を106分にまとめられたのは、全く無駄のないストーリーテリングだったから。多くの事は法廷で語られる形式をとり、犠牲になった家族の遺体など一切出さず、法廷での証言で聞かされる残酷な死因と現場の状況。それをただ黙って聞くしかないカティヤは、込み上げる悲しみと怒りで気が狂いそうになる。
凶器となった爆弾のことも法廷でレクチャー、彼女が元々エンジニア系が得意な点もさり気なく伝えられている。
彼女は決断したが、一度目は断念した。小鳥のせいか。
家族で行った海でのホームビデオを繰り返し見返すカティヤ。「ママもおいでよ」と言う夫と子供のセリフ。
事件以降ストレスで止まっていた生理が、来る。自分の信念と関係なく、時の経過は心と体を徐々に癒そうとしている。控訴して、このまま前向きに立ち直ることも出来るかもしれない、もう私は大丈夫かもしれないと正気を取り戻したうえでの「二度目の決断」だったんだと思う。誰も救われない、やるせない結末。それがテロなんだ。