2.《ネタバレ》 本来はホラージャンルに強みを発揮する監督だろう。
睡眠薬を抽斗から取り出した夏菜が浮かべる表情などは絶妙だ。
ところどころで画面に風を吹かせたりもするし、
ヒロインも美しく撮ってはいるのだが、勿論それだけでは彼女は輝かない。
決定的に拙いのが、自堕落なまでの携帯端末の濫用である。
友人の結婚式場での会話中に至っても、そっちのけで端末画面に見入っている。
男も男で、両手で端末を抱えて公衆の中を歩きながら彼女と動画交信する有様だ。
マナーがどうこう以前に、映画の被写体として、「アイドル映画」のメインキャストの動作として間抜けでみっともなく、大いに幻滅させる。
ドラマ的にも、この通信機器によって簡単にコミュニケーションが取れてしまうのだから
遠距離恋愛など障害とはなりようがない。
案の定、男の海外への出発は飛び立つジェット機のショット一つと素っ気なく、
その後も延々とメールだ、動画だと惚気けたやり取りばかりしているのだから、
再会の感動もへったくれもないだろう。
この「小道具」は映画から人物間の距離を奪い、その間に生まれるエモーションを奪い、その距離を狭めようとする人間のアクションを奪う。
クライマックスの告白のなんと淡白で、なんとお行儀良いことか。
携帯機器を出さねば出さないで「リアルでない」と批判されるのを恐れるのなら、
まずは吉田康弘らを見習うがいい。