5.《ネタバレ》 明らかにアンリ・ヴェルヌイユ版のオープニングを踏まえたのだろう
ビラの舞い落ちる街を進むトラッキングのショットから、構図は奥行きを意識し、
そこに描写されるのは誤射も飛び交う敵味方不明の銃弾、爆撃の恐怖である。
ビーチに突っ伏した主人公を手前に、画面奥から順々に着弾・爆発していくショットなどはなかなかの緊迫感だ。
が、担架を運び桟橋を渡って船に乗り込もうとするシーンなどで距離感やタイムリミットの提示に難があるのは毎度の事である。
あるいはこの距離感と計時感覚の失調こそがねらいかもしれないが。
三者それぞれの状況を音響などをブリッジさせることでクロスカットさせていくわけだが、
曇天・晴天、日の傾きまで編集で徹底出来ないなかでの時間軸の帳尻合わせは単に無謀である。
シーンの緊張を途切れさせて散漫にしている箇所も数知れない。
また評判の良いハンス・ジマーの劇伴だが、ほぼ全編というのもやり過ぎ。
サスペンスを阻害し、民間船舶集結シーンのヒロイズム煽情も過剰に思える。