35.《ネタバレ》 ヒッチコック作品の今までの観賞の中で一番面白かったです。
この作品はヒッチコックにしては珍しい作りです。
舞台劇のようであり、他の(といっても観た作品は少ないのですが・・)
カメラワークに凝った演出や不思議な幻想のシーンはありません。
・・というと変かもしれないかなぁ。
今まで見た現時点のヒッチコック作品は・・
裏窓、北北西に進路を取れ、めまい、白い恐怖・・
これらの有名な作品の中でこの作品が一番好きかもしれません。
ただし私の採点がそのわりに厳しいのは配役と演出です。
配役がなぜか私には合いませんでした。
J・スチュワートがキャプラ映画のアメリカの良心というイメージで、
このような卓上論の先生役はどうかと・・
これはもっとヒトクセもフタクセもあるちょっと強気で固そうな人か(C・グラントとか)
老練の少し太った嫌味な役をうまく演じられる(R・オリビエとか)
J・スチュワートは「スミス都へ行く」のあとで観賞したのでギャップ損かも。
あと演出としましては最初から首を絞めるシーンを持ってくると、
全くそれからが怖くはないのです。
棺おけのように食台に入れられている死体は映さないのですが、
やはり最初の丁寧な殺人が怖さよりもこっけいでした。
叫び声だけで見せなくてもよかったかも・・
役が合ってないと文句をいう割にはJ・スチュワートが出てきてからが面白い。
でもなかなか出てこないのです。
お互いの人間関係もセリフで説明するだけでわかりにくい。
犯人が最初からわかり解いてゆくやり方は苦手なコロンボみたいで、
それでも後半が面白かったのは舞台劇の面白さがあるから。
これは白黒のほうがよかったかもしれません。
窓から見える夜景の色も鮮やかすぎるし陰影演出がイマイチでした。
でも短い舞台劇のような例えばエドガー・ア・ランポーの短編小説映画のようで、
気軽にサスペンスを楽しみたい方にお勧めします。
ショッキングな殺人描写映画としては「コックと泥棒その妻と愛人」が怖い。