1.芸達者を集めて当時のプログラムピクチャーの贅沢さがうかがえ(うち二人がのちの文化勲章受章者だ)、しかも監督が豊田四郎、それなのにぜんぜん楽しめない。芸達者が芸惜しみをしてると言うか、テキトーなくすぐりで終始してしまうので、観てて歯がゆい。まあ24作続いたシリーズの22作目ということで、かなり疲労が来てはいたのだろう。設定は悪くないんだ。東口にスーパーが出来、西口にマンモス団地が出来、しかし間をつなぐのが開かずの踏切で、それによって東口商店街と西口商店街の思惑が交錯する、って現実の赤羽駅界隈を生かしている。さらに公害問題も絡め、68年の世相の記録としては上等。なのに大枠の設定が個々の笑いを生む段になるとあんまり生きてなく、どこかにあったような恐妻コントと戯画化された悪徳政治家風刺をつなげていくだけなの。人情喜劇という手法が社会との落差をを埋め切れなくなったということか、とも思ったが、この翌年(つまり駅前シリーズが終わった年)から『男はつらいよ』が始まっているわけで、要するに制度疲労による世代交替の時期だったと思ったほうがいい。映像の記録としては、団地の脇に広がっていた連隊跡地の広漠とした風景が収められているのが貴重。