【K】さん [映画館(邦画)] 9点(2010-06-28 16:58:01) |
50.予想に反してこんなにも観終わった後にすっきり爽快な気分になるとは。この爽快感こそがまさに中島哲也の力なんだろうと思いました。今までの邦画界にはなかった新しい才能だと思います。 逆に言えば、この映画を観てすっきりした自分は、現行の少年法に少なからず不満を持っているのでしょう。でも悪質な少年犯罪をより厳しく取り締まるために法改正するべきだとも言い切れない。それから自分が少年の頃とは全く異なる現代の少年達に対して、怖れや嫉妬の気持ちもあるのでしょう。 だからこそ、教訓めいた部分を排除して、ファンタジーの衣をかぶせたこの映画が必要だったのかもしれません。いまこの映画が大ヒットしているのは、そう感じている人が少なからずいるんだということでもあるのかもしれませんね。 【HAMEO】さん [映画館(邦画)] 8点(2010-06-28 15:10:11) |
49.《ネタバレ》 ○原作未読○世間ではかなり絶賛されているようだが、そこまで斬新さなど感じはしなかった。○中島監督作品は初めて観たが、視聴者を映画の中へ引き込む力が感じられた。冗長な感もそれほどなく、テンポの良い2時間弱であった。○自分としてはあくまで人の言うことを信じすぎるなというのが一番のメッセージに感じたのだが、そう観てしまうといったいどの人物のどの発言を信じたらよいのかという、若干本末転倒的な現象が頭の中で起こってしまった。でも、この手の映画なら仕方ないか。○展開としては、ミステリーとは称しているものの、効果的は伏線はなく、その人物から見える、製作者として都合の良い部分だけ見せている印象だった。また、あまりにも現実から離れているシーンが散見された。○思春期の子供たちをなかなか上手に描いているなと感じた。○映像としての斬新さはなかったが、緩急の付け方が非常にうまかった。ただ、予想以上にグロかった。○映画を鑑賞してから予告編(30秒ver.)を見てみたが、ちょいと面白そうな学園ミステリー。軽い気分で観に来たカップルなどには残酷な結果だったかもしれない。 【TOSHI】さん [映画館(邦画)] 4点(2010-06-27 21:50:45) |
48.《ネタバレ》 『告白』は今年の日本映画界の「事件」だ。完全に心を捕えられた。 あとで興味を持って原作も読んだが、湊かなえ氏が心の深い所で抱えながら 文章では描ききれなかったかもしれない、その凄まじいほどの「熱」を この映像は見事に描いてみせた。 原作もショッキングな内容であるため、いくらでもおどろおどろしく描くことが出来たに違いない。或いは「少年法」云々…という社会性の強いメッセージが残るようなリアリティーのある表現法を用いることも出来たはず。しかし中島監督の関心は恐らくそんなところにはなかったのだろう。驚いたことに中島監督はこの『告白』を、ほとんどファンタジーとして描いた。「報復」というテーマをそのままリアルに描いたところで、それは偽善的か偽悪的にしか多分ならないし、報復を「Yes」や「No」で描くことはいずれでも人間を絶望させてしまうだろう。しかし詩的でさえある卓越した映像表現(そして、予測がつかないような見事な音楽表現)によって、観る者の心に自由に語り、観る者を信頼して委ねている、そんな完成度の高いファンタジックな作品だ。 そしてその根っこに見えてくるのは、中島監督の、人間に対する熱い熱い「愛」だ。特に「逆回転時計」(原作ではそれほど多く言及されない)をクライマックスに持ってくる映像には息を呑んだ。「時」は絶対に元に戻らない。そこに人間の悲劇がある。「あの時、あんなことがなかったなら!」と、人は何度過去を呪ったり、後悔したりすることだろう。そんな人間に対して「時よ、戻れ!」と中島監督はやってみせた!スローモーションの多用も、残酷な「時」の流れに対して「待った!」をかけているとも言えるのではないか。また、時折挟み込まれる、空の映像も印象的だ。いつも太陽が隠れている。希望が見えにくい人間の現実。しかし最後の最後、エンドタイトルで、太陽が雲から現れようとしているようにも見える!これは監督の祈りにも似た思いのようにも思えた。他にも、カーブミラーを効果的に用いることによって、自らの姿を相対化して見ることへの促しと、大きな者(神)の存在に映る視座さえも感じる。 松たか子は意外なほど登場している時間は短いが、その存在は圧倒的。ああ、今年も主演女優賞(キネマ旬報等)は松たか子か。だとしたら、去年はぺ・ドゥナ(『空気人形』)に取って貰いたかった! 【ワンス・モア】さん [映画館(邦画)] 10点(2010-06-27 21:21:18) |
47.《ネタバレ》 邦画を見に映画館に行くのはとても久しぶりでした。前知識ほとんどなく、中島監督だし外れないかなーくらいの心持で行ったら、・・・おもっ!ちょっとびっくりしました。原作を読んでいないので、森口先生の言動が、どこまで本気なのか、実はあぁは言っているがどこかで許そうと思って苦しんでいるのではないか、などと見ながら見てましたが、許す気なし!だったということでいいんでしょうか。 いや、やはり許す許さないという話ではなく、絶望。それだけなのかもしれません。 最後のシーンが、ちらりと「模倣犯」のラストを彷彿とさせ、一瞬ま、まさか・・・とドキリとしましたが、きれいに終わりました。ここは一安心。笑。 中島監督らしい進め方で、ぐいぐい引き込まれます。俳優陣も見ごたえありました。 中学生の、いっちょまえな嘘だったり、不安だったり、でもすげー子供だったりするところが、見ていてすごくいらいらするけど、自分にも覚えがあるような。 血しぶき飛びまくりで、予想外にグロいですが、見ごたえありました。 【しゃっくり】さん [映画館(邦画)] 8点(2010-06-27 00:09:44) |
46.《ネタバレ》 はじめに映画と関係ない話。未成年の殺人検挙者は戦後1960年代をピークに減少し、2002年以降では年間100人を越えたことはない。これはピーク時のおよそ1/4以下の数字だ。 映画「告白」は全く衝撃的でも問題作でもない。これを観て命の重さとか少年法とかそんなことを真面目に考える馬鹿が出てくるなら、その面でこの映画は多少なりとも罪深いんじゃないかと思う。 何故なら、これは中島哲也と湊かなえの悪意によって、子供たちを悪の化身的モンスターに仕立て上げ、血みどろの犯罪劇を描いたエンターテイメントでしかないからだ。 また映像も新鮮味はなく凡庸で、よくテレビで見るような広告的あるいはミュージッククリップ的な映像の羅列だ。それを映画として用いたことで映像的センスがどうのこうのと勘違いし、また逆にそれは非難の的ともなる。ただ思う。そんなのどーでもいいよと。これはこれでいいじゃん。イメージとしての映像。意味を求めたショットでなく、あくまで悪というイメージを表象化しただけのショット。であるから、そこにリアリズムなどというものは存在し得ないという表現ともなる。そんな現実味を感じさせないところから、問題提起や答えを見出そうとするのは阿呆くさい作業だ。 この映画が徹底して悪のイメージを描こうとしていることは、登場人物に潔白な正義というものが殆ど皆無であることからもわかる。松たか子ですら正義ではない。木村佳乃が言う通り、彼女は自分の子供可愛さに娘を学校に連れ込み、先生としての職務を怠慢している。それは事実で、端からこの学級は崩壊していて、彼女の話に耳を貸す者など殆どいない。そう、この映画の唯一のメッセージらしきもの、それは子供をしっかり育てろよ馬鹿親!ということだ。渡辺修哉をモンスターにしたのは、息子に自己を押し付け終いには放置した母親だ。涙を流し散ってゆく姿は母性的だが、あの母親もまた悪の根源だ。モンスターの親はモンスターだ。 そう、この映画は人間という名のモンスター・エンターテイメント。意味なんてない。悪と悪が対立する、リアリティの欠片もない、ただの映画。それとしてこの映画は面白い。 最後にもう一度関係ない話。この映画と同様、未成年の犯罪が増幅されているように見えるのは、報道の自由という名のエンターテイメントが創り出した幻想であり、それは子供たちをモンスターにしているのは大人だという事実だ。なーんてね 【すぺるま】さん [映画館(邦画)] 8点(2010-06-25 03:19:41) (良:3票) |
45.最後の場面。生徒Aと対峙した森口先生の表情が、頭から消えません。押し殺してきた幾つもの想いが、今まさにこの瞬間、渾然一体となって発露した。壮絶な心情はある種の美しさを伴い、観客の心を打ち抜きます。先生が口にした最後の言葉が本作の全てだと思う。これほど重い軽口を聞いたことがありません。たった一言の皮肉に、どれほどの意味が込められているのか。その真意を量れるかどうかで、本作の評価は変わると思う。 【目隠シスト】さん [映画館(邦画)] 10点(2010-06-24 19:54:02) (良:2票) |
44.教師の知り合いが何人かいるが、彼らに見せてあげたい! |
43.《ネタバレ》 すごい意欲作。映像,ストーリー,音楽,登場人物など,どれも斬新。ただ,あんな生徒はいないだろうなというところや,復讐方法がかなり回りくどくて確実性もないところなど,現実味が感じられない。意外と見終わって何も残らなかった。 【Yu】さん [映画館(邦画)] 7点(2010-06-22 15:31:33) |
42.一言で言うと凄い映画。前評判の高さからか平日のレイトショーにもかかわらず30人以上の観客がいたが、エンドロールが終わるまで誰も席を立たなかった。ただ中島監督の「下妻物語」「嫌われ松子の一生」「パコと魔法の絵本」はDVDを買ったが、これはコレクションしようとは思わないかも。 【Q兵衛】さん [映画館(邦画)] 8点(2010-06-22 10:44:33) |
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41.《ネタバレ》 原作未読。ここで評判がやたら良いので観にいった。 この先どうなるのか気になる作りで面白かった。 電気ビリビリポーチもあの程度の破壊力の物しか作れない少年Aに あれほどの大爆発を起こす爆弾が作れるとは思えないし 主人公も大勢の無関係な人達を巻き込むことは望まないだろうから 最後の話は牛乳同様にウソだったと考える。 …と、観た人に色々と考える余地をわざと持たせてある。 観た人同士であーだこーだと話ができるのは良い映画と思います。 【虎王】さん [映画館(邦画)] 8点(2010-06-20 23:11:04) (良:1票) |
40.《ネタバレ》 スプラッタームービーですか?というくらいの血しぶきの演出。飛び過ぎてかえってリアリティを感じないのか、それが狙いなのか、途中から感覚が麻痺してきました。もう少しこういった場面を控えてくれれば「見応えあるエンターティメント作品」として人に勧められるのに・・・。多少の不快感は覚悟の上で、かつ過剰な期待を抱かなければ満足できる映画だと思います。内容には全く肯定できないけど、作品としては楽しめるという変な感じ。それにしても今の子どもってあんなに残酷なんでしょうかね?イジメを誇張しているけど、完全にフィクションとも言い切れずという・・・精神が未熟な分もあって子どもが生きにくい世の中になりました。子どもは大人の映し鏡というように、子ども達が異常なら大人の社会が異常だということなんでしょうね(余談ですが)。教師森口が少年Aを追い詰めるためにAの母親の爆死を誘導した旨はやはり狂言かと。でないと複数の他人を巻添えにするだろう(都合良く母親が死ぬとは限らないし)ことは、結局Aがやろうとしていたことと何ら変わりなく、それも想像出来なくなるほど正気を失っていない限り整合性が保てなくなると思います。ところでHIV注射の件を生徒が皆黙っていたり、いくら無実とはいえAを壇上で演説させ生徒達が大喝采の豹変ぶりとか、ネットで流した爆破予告が全く騒がれなかったことなど、話の流れ的にリアリティに欠ける部分が散見されたのが惜しい。 【LORETTO】さん [映画館(邦画)] 7点(2010-06-20 00:34:40) (良:1票) |
39.人と人となんてのは分かりあえる生き物ではなく、そもそも誰しも本当の自分なんて他人に分かって欲しいとも思っちゃいない。心のすれ違いという言葉では生ぬるい、もっとドロドロとした沼底みたいな見通しの悪さが社会にはある筈で、そこにエゴという黒い汚染が混入してしまうと仮初めの秩序はいとも簡単に乱れる。みんなそれに気づいてはいるんだけれどもあえて知らないふりをしていて。そんな当たり前のことをこの映画は深く抉ってつきつけてくるから、不快だ、怖い、ナンセンスだと思いつつも目が釘付けになる。決してまた見たいと思う作品ではないので1点減点はしたが、正直面白かった。それにしても松たか子はすごい。抑える演技をしつつも、突如内側からものすごい輝きを放つ瞬間を見せたり、次の瞬間にはオーラをかき消したり。主演の割に彼女の出番が少なかったのが一番残念。 |
38.《ネタバレ》 一言では言い表せられない作品です。後味が悪すぎて、簡単には人にお薦めできないです。でもとにかく凄い!こうも映画化しにくい物語を、忠実に、むしろ映像の良さが表現されていて…。原作では、第六章で成り立ち、とにかくそれぞれの人物が一方的に語っていく訳ですが、映画で表現すると、このような展開になるのか…と、中島監督の手腕に脱帽です。また、役者陣の思わず唸ってしまうような芝居も魅力でした。主役の松たか子は文句なしです。原作ではとにかく冷静な(非情で冷血ともいえる)イメージですが、彼女が演じることによって、どこか柔らかい女性像がみえました。演技指導が厳しいことで有名な中島監督ですが、撮影現場はどのようなものだったのでしょう?(笑)一番感心したシーンは修哉が母親に見捨てられた時に聞こえた、泡が弾ける音。シャボン玉。これは映像でないと表現されませんね。私は、映画を見て、原作を読みましたが、もう一度映画を見ようと思います。 【西川家】さん [試写会(邦画)] 10点(2010-06-19 07:41:39) |
37.しばらく日が経ってから思い返すと、意外に大して心に残ってないことに気づいた。 観た直後は、いやースゴいものを観てしまったと興奮しきりだったにも関わらず。 そしてもう一回観てみたいとも別に思わない。 なぜかと考えると、「あのシーン、あの画がよかった」と言えるところがないからではないか、と。 ストーリーの面白さ、撮影、編集の見事さにまんまと熱中させられたが、ある意味勢いで観させられたというか、画がお話を語るためのものでしかないからでは、とも思う。 美しいものにしろ怖いものにしろ、心に残る映画がいい映画だと思う自分にとって、この映画はそれほどいい映画とも思えなかった、ということだ。 【とと】さん [映画館(邦画)] 7点(2010-06-18 19:20:21) (良:1票) |
36.《ネタバレ》 凝った映像が印象的でした。映画全体に悪意だけが漂うストーリーなので好き嫌いは別れるかも知れません。冷酷で異常な少年も、結局は捨てられたママに会いたいのが理由で・・と言うよくあるパターンに多少がっかりもしました。 【東京ロッキー】さん [映画館(邦画)] 8点(2010-06-18 18:27:30) |
35.この映像感覚はすごいなぁ。逆再生はやりすぎで、最後も邪魔に感じてしまったのだけど、スローモーションやあえてカットを飛ばすところなど、すごく斬新で、ポップで、観やすいのだけど雰囲気を壊していなくて素晴らしかった。ストーリーに関しては特に言うこともないというか、今思い返してみるとよくある話、といっては語弊があるけれど、よくあるキャラ、要素を合わせた感じでした。とはいえ松たかこ始め、演じてる方々は力が入っており、迫力があります。うーん。すごい。一気に観させられる。 【Balrog】さん [DVD(字幕)] 8点(2010-06-17 01:05:42) |
34.《ネタバレ》 レディースデーの劇場で鑑賞。周囲は、団体のおばちゃん達がたくさんで、「うるさかったら、やだな・・」と思いつつの鑑賞だったが、そんな心配は全く無用。周囲に人が居ることすら忘れるほどに、冒頭から映画の世界に吸い込まれ、そしてエンドロールが終わるまで、観客全員が息をのんだ状態だったような気がする。ずっと読みたかった原作だったが、未読のまま、先に映画を見ることになった。監督のこれまでの作品と比べてどうかとか、難しいことは一切わからないけど、単純に、すごい映画を見てしまった・・と思う。中学1,2年の頃の自分は、自意識過剰で自己中心的で、ものすごく打たれ弱くて、今の年齢になって考えると心底虫酸が走る嫌な人間だった。大人になって初めて見えてくる、あの年代特有の嫌な部分を、これでもかって程に見せつけられる不愉快さ。自分の子どものことにしか心が動かない、少年B母の狂気。愛するわが子を失ったことで、感情も失ってしまったような森口の顔(妙に眉毛が薄い、松たか子のメークが絶妙!)。さらに、個人的には、牛乳をこぼすと、何度も何度も拭いて、匂い残りをチェックせずには居られない方なので、牛乳のシーンには、かなり不快感を煽られた。そして、憎いはずの少年A の「告白」シーンでは、少しだけ彼に同情してしまったり、森口の復讐行為に、「ちょっとやりすぎじゃ・・」と思う反面、実は胸のすく思いがあったりと、相当に感情を揺さぶられた。そして重苦しい空気に包まれた100分間だった。 【おおるいこるい】さん [映画館(邦画)] 10点(2010-06-16 22:11:37) |
33.この監督さんのセンスは、日本一と思うのだが、毎回題材が極端に明るいか暗いかになるのが気になる。今回は暗い方。娘を教え子に殺された教師が、復讐をする話だが、そのやり方はどうだろうと思った。告白するだけで、十分いじめの対象にできたと思うし、犯人Bには有効だったが、犯人Aにはかえって強みにしてしまった気がする。あの女子生徒はかわいそうだった。あれがなければ、犯人Aにも救いようがあったのだが・・・先生の最後の言葉は、どっちとも取れるが、まあやってないという事でしょうね。 【Yoshi】さん [映画館(邦画)] 6点(2010-06-16 22:02:23) |
★32. 原作未読。/CMかミュージックビデオのように手の込んだサービス精神溢れる映像。それをずっとテンションを保ってたたみかけるようにテンポよくリズミカルに見せ続ける。この監督の魅力的なスタイルです。私は好きです。その映像は派手で悪趣味ですが(こんなの映画じゃないと言う人も多いだろうが)、バズ・ラーマンやダニー・ボイルに勝るようなカッコ良さがあると私は思います。おそらく日本独特のサブカルの土壌の上に成り立っており、見せ物的に見事だと思います。/そうした映像の手法は、前3作では存分に威力を発揮し、私は映像の勢いに流されるままに楽しませてもらいました。しかし、本作ではそうはいきません。本作は復讐劇、サスペンスとしてはたしかにそれなりに面白いでしょう。人間の闇の部分なども結果として垣間見えているかもしれません。だが、物足りません。本作には倫理の根幹を揺り動かされるような衝撃がありませんでした。現実味のないばかばかしいストーリーでも構いません。ただ、こんな人間の悪意を描くような話だと私はどうしても心に対する強烈な一撃を求めてしまうのです。「罪と罰」なんかを下敷きにもってくるからには、いわば自分の存在自体に不安を覚えるような恐ろしさや気持ち悪さを感じさせて欲しいと思ってしまうのです。人物ごとのモノローグで展開という形式や過激なストーリーから「紀子の食卓」を勝手に連想してしまったのですが(全く別物だけど)、衝撃や強度、叙情性といった点で本作はあれには全然及ばないと思います。中学が舞台の残酷な話という点から「リリィ・シュシュのすべて」も連想してしまいましたが、あれを観た時のように心が痛くはありませんでした。/パンフを読むと、監督はこれまでの自分の作品には「余白」がないと反省して本作を作ったというようなことが書いてましたが、その点改善があるとは思えません(別に改善しなきゃならないとも思わないが)。映画全体をコントロールしてしまおうとするかのような姿勢(別にそれが悪いとは思わないが)が本作ではやや傲慢で単純に感じられてしまいました。勝手な印象ですが、特に逆再生の部分なんかは余計な作り込み(前作まではそういうのが良い方に働いていたが)で陳腐に感じられたし、不要だとすら思います。/ところで、「ヴィヨンの妻」に続いて松さん良かったですね。どこか浮世離れしたかわいらしさが好きです。 【しったか偽善者】さん [映画館(邦画)] 6点(2010-06-16 01:25:01) |