1.《ネタバレ》 ザ・マミー、つまり「ミイラ再生」のリブート作品である。
本作も含めて何本かのリブート・リメイクが存在しているが、僕の年代で「ミイラ再生」と言えば、なんと言っても99年に公開された「ハムナプトラ」だ。
当時僕は小学生だったが、親父の借りてきたVHSを家族で囲んで観た思い出がある。ホラー映画に最先端のVFXを掛け合わせ、アドヴェンチャー超大作として登場した「ハムナプトラ」には、夢やスリル、冒険ロマンの全てが詰まっていた。また、独自のシリーズを展開できるほど興行的に成功をおさめており、リメイク・リブートの大成功例としても映画史に名を刻んでいる。(ついでに現在ハリウッド最強の稼ぎ頭であるザ・ロック様も発掘している)
僕が映画に親しむきっかけとなった一本でもあるし、今見直しても本当に楽しめる傑作冒険映画だと思う。
話を本作に戻すと、今回の「ザ・マミー」はどうやら単なるリブートではないらしい。
「ようこそ、神と怪物の新世界へ」。過去ユニバーサル・ホラーからの引用(フランケンシュタインの花嫁)と、「ダーク・ユニバース」レーベルが示す通り、本作はこれから発表されるホラー・シリーズの最初の一遍なのだ。
さらに主演は大スターのトム・クルーズを投入。企画ありきのリブートが、トムとどのような化学反応を起こすのか。
結果的に言えば…トムが走ってトムが跳ぶ、トム大活躍のいつものヤツであった。
そもそもこれは何の映画だったのだろうか。
ダーク・ユニバースの説明にかなりの時間が費やされており、エジプトマミー勢の影が薄すぎる。
なまじラッセル・クロウなんかのビッグネームが出てくるため、本筋であるべきのマミーの話は中盤から停滞気味だ。
ラッセルはアベンジャーズでいうところのニック・フューリー的ポジションなんだろうが、トムと格闘まで披露するのはまだ先の話でも良かったのではないか。(ちなみにラッセルがトムに向かって「若いな」と言うが、実はトムの方が年上である。トムスゴイ。)
オリジナルでいうイムホテップもテコ入れが図られ、今作はソフィア・ブテラのかわいい女マミーが登場するが、これもうまく機能していない。
というかジキル博士とハイド氏などの他要素に押されてしまい、印象が薄いうえ、その強さや凄みに対しても疑問が残る。エジプトから遠く、アウェイのロンドンで監禁された上に、現地にたまたまいたミイラで応戦するなど、ラスボスらしからぬ必死ぶりじゃないか。
言ってしまえば今後の作品のために、トムが魔人になるキッカケを作るための壮大な噛ませミイラである。
アメン・ラーの書(プロジディウム内で一瞬登場する。「ハムナプトラ」のアイテム)などのリメイクリスペクトも良いが、本作のマミーをもっとフィーチャーして欲しいものだ。
また冒険感に乏しいのも問題か。イラクから帰還した後は例によって、ダーク・ユニバースとの脚本の兼ね合いで、ロンドンをうろつく程度である。リブートということで、エジプトをできるだけ遠ざけたい狙いもあったのかもしれないが、過去「ハムナプトラ」において、「エジプト感」が魅力を添えていたのも事実である。
古代の宗教儀式、呪い、伝説、エジプトアイテム。こういった要素が好奇心をそそり、冒険心をくすぐるのである。
全力でエジプれとは言わないが、本作の舞台装置では冒険に必要な夢やロマンが圧倒的に欠けているのである。
「おいおい、アドヴェンチャー魂はどこ行ったんだい?(ニカッ!)」
うん、本当にどこに行ったんだろうか。
総じて、とくに取り柄のない凡庸な仕上がりであった。
「ミイラ再生」に絡めての、今後のダーク・ユニバースとの連携。さすがのクリストファー・マッカリー(脚本)も、会社からの意向や注文を違和感なく繋げるところで力尽きてしまったか。
今回、自分は勝手に「ハムナプトラ」ライクな冒険活劇を期待していたため、残念な部分もあったが、それを考慮しても全体的に盛り上がらない作品だったと思う。
映画なのだから、今後の展望抜きで、単体で観客を楽しませる作りの方が良いだろう。