1.《ネタバレ》 「芸術(音楽or絵画)がテーマ」「幼女がゲストヒロイン」という共通点を考えると、前作と似たり寄ったりな映画になってしまうんじゃないかという懸念が有った訳ですが……
そんなアレコレは吹き飛ばす傑作に仕上がっており、もう大満足です。
しかも今回、言葉で語るのが難しいような「映像で見て分かる面白さ」が満載な品となっているんですよね。
映画公開前に刊行された小説版と、映画本編との面白さのギャップが一番大きかったドラ映画という意味でも、記憶に残る逸品となりそう。
序盤の時点で「クレアが工事現場に迷い込む場面」の面白さに心奪われたし「逆さまにされて地面に突き刺さるクレア」の可笑しさには、映画館の客席で声が出そうになったくらい、ツボに嵌っちゃいましたね。
そういったギャグの面白さだけでなく、ラスボスのイゼールが登場して以降のシリアスな面白さも格別であり、そのギャップが心地良い。
「色を奪って生命活動を停止させる」という特性を持った敵だからこそ「どうやっても殺せないはずのメインキャラ達の死亡シーンを疑似的に描ける」って形になってる事にも、観ていて感心。
それによって「のび太達を庇って死ぬジャイアン」「頼みの綱のドラえもんすらも死んでしまう絶望感」などを描く事に成功しているんだから、本当に見事です。
ラスボスが歴代でも一番ってくらいに(えっ……コイツどうすれば倒せるの?)っていう圧倒的な存在だった事も、素晴らしいと思います。
モーゼステッキを兵器として活用して巨大な怪獣を倒すという作戦が熱かっただけに「それでも倒せなかった」という衝撃が大きかったし、その後の「射撃の天才のび太が的を外すという、有り得ない事が起きる」→「実はラスボスの後方にある水の砦を狙った攻撃であり、背後からの洪水によって倒す」という決着の付け方も、実に鮮やか。
強敵である事を存分に描いた後、それを説得力の有る形で倒すって流れになっており、観ていて気持ち良かったです。
色んな過去映画のオマージュが織り込まれているので、それらを探す楽しみも有るし……
主人公であるのびドラ二人だけでなく、残り三人のジャイスネ静香にも見せ場が有って「いるだけ参戦」のキャラがいなかった事も、凄く良いですね。
静香ちゃんは知性派としての魅力を見せているし、スネ夫も敵の弱点は水と気付いてみせたりして、全員が活躍してる。
特にジャイアンの恰好良さは特筆物であり、柔道十段のおじさんに習ったのであろう柔道技を駆使して悪魔達と戦う場面なんかは、痺れちゃいました。
処刑シーンで板に嚙みついて絶体絶命なのに、それでもスネ夫を離さない場面なんて、もう最高。
脚本も丁寧で「この時代には存在しない『不思議の国のアリス』がキッカケでパルの正体がバレる」→「その事が伏線になってて、静香ちゃんがこの時代には存在しない『チョコレート』をブラフにして偽物クレアの正体を見破る」って展開は、特に見事でしたね。
何気無い「クレアは、お風呂が嫌い」という場面さえも「彼女は水を浴びると溶けちゃうから」という伏線になっていた訳だし、答えを知った上で二度三度と観たら、初見の時とは違った面白さを味わえるという、贅沢な作りになってます。
「空飛ぶ箒で間一髪助けると思わせて、間に合わない」という展開で観客を驚かせた後「今度は、ちゃんと助けられたという場面も見せる」という形で、意外性だけでなく王道の魅力も提供してるから、驚かせた上で満足させるという、映画として理想的な「観客の楽しませ方」をしているのも、凄かったです。
難点としては……
ゲスト声優は過半数が上手かったのに、出番多めで重要キャラなパルが棒読みだった事。
王妃がいたら子供達の処刑に反対する為、邪魔だから出番が無くなったんでしょうけど、それでも「急に王妃が出てこなくなった」という違和感が有った事なんかが挙げられそうですね。
この辺りは、画竜点睛を欠いた感が有り、残念至極。
ちなみに、おまけ映像からすると来年は矢嶋哲生監督による「新・海底鬼岩城」あるいは「海を舞台にした映画オリジナルストーリー」となるようで、こちらも今から楽しみです。
本作同様、絵の中ならぬ「映画の中」に入り込んで、観客も一緒に冒険したくなるような……
そんな素敵な映画であって欲しいですね。