42.《ネタバレ》 1990年代から映画をたくさん見始めた年代の者にとって、トム・ハンクスとメグ・ライアンという俳優は「絶対的」な存在であると言って間違いない。
そんな二人のもっとも幸福な共演作こそが、この「めぐり逢えたら」だということは、この映画を観ていようが観ていまいが、映画ファンにとっては常識であろう。
今作の直後、2年連続アカデミー主演男優賞を受賞したトム・ハンクスは、コメディ出身のナンバーワン俳優としての片鱗を存分に見せつける。息子役の子役とのやり取りは“父子もの”として、映画史上に残る絶品だと思う。
ただし、このラブコメ映画において、何よりも素晴らしいのは、やはりメグ・ライアンだ。
90年代、“ラブコメの女王”として、男女問わず世界中の映画ファンと虜にした彼女のキュートさは、その存在感そのものが映画史に残る“宝物”だと思える。
彼女がこの作品で演じる“アニー”というキャラクターは、決して清廉潔白な女性ではない。
あまりに自分本位で、身勝手な愚かな女である。
「なんてクソ女なんだ!」と心の片隅では感じているはずなのに、観客のほとんどは、無意識的にそれを無視して全力で彼女の盲目的な恋の成就を願ってしまっている。
ハリウッドにメグ・ライアン以上の名女優は数多いるが、おそらく彼女以外のどの女優が“アニー”を演じたとしても、これ以上の成功は見込めなかったと思う。
この映画の中で、主演の二人が邂逅するシーンは、たった3つだが、この二人の共演でなければ、この映画の幸福感は導き出されなかっただろう。
振り返れば振り返るほど、なんて自分勝手な映画なんだと思う。
しかし、「恋」とはそもそも自分勝手なものであり、映画くらいはその自分勝手を貫き通した愛すべき人たちの姿を見たいと、世界中の人が思っている。だから、この映画は世界中に愛されている。
P.S.メグ・ライアンに一方的な婚約破棄を言い渡される誠実で可哀想過ぎる男を演じたのは、ビル・プルマン。
彼はこの3年後、アメリカ合衆国大統領としてエイリアンを迎え撃つ。
攻め込んできたエイリアンはいの一番に“あのエンパイア・ステート・ビル”をぶっ壊すので、彼にとってはいささか胸のすく思いだったはずだが、彼はそんな私情をまったく挟まず、自ら戦闘機に乗り込みエイリアンを追っ払う。
「やっぱりあの大統領は信頼できるぜ!」と、映画ファンならではの妄想が加速する。