180.完成度は相当高い作品だと思うが、リアリティの高さを狙ったためかやや演出が押さえられすぎている感がする。
劇場で見たときはその押さえすぎた演出のため面白くない映画だと思っていたが、改めて観て見ると隠れたメッセージが見えてきた。
この映画が伝えたいテーマは「人間性」だと思う。
人間を完璧な兵器にする計画が「トレッドストーン計画」であったが、結局ボーンは完全な兵器にはならなかった。
それは何故かというと、人間には子どもを愛する気持ち、人を愛する気持ちがあるからではないか。
どんなに訓練しても、無くそうとしてもなくならないものが「人間性」のような気がした。
特に夜中に心配して子どもを見つめるシーンと、子どもたちとブランコのようなもので遊ぶシーンは何気ないシーンだが見逃せない。
デイモンも記憶を無くして苦悩する男を上手く演じきったと思う。
記憶が戻った方が良いのか、それとも自分が何者であったか知りたくないという気持ちに揺れている微妙な心が垣間見れる。
そして、ケイトブランシェットに似ている気もするが、あまり可愛くはないマリーも良かった。
特に巻き込まれ動揺する仕草が良い。ボーンを捨てるのかそれとも一緒に行動を共にするのかの選択を迫られるシーンや心細さに耐えられなくなりボーンにキスするシーン、どれも内面の微妙な気持ちが感じられる演技だ。
また、二人が抱き合うシーンには二人の不安な気持ちや誰かを求めずにはいられない想いがストレートに感じられる。
アクションとしても面白く、特にカーアクションはこの映画の代名詞だろう。
逆走するシーンは他の映画と違い、実にリアルだ。
ボーンのライバルとなる「カステル」と「教授」だが、ボーンとレベルの違いがありすぎてやや緊迫感に欠けると感じた。
ただ、カステルでは接近戦と肉弾戦を描き、教授とはライフルでの銃撃戦を描くという二つの異なる戦いを描いたことでそれだけのボーンが高い技能を持っていることが感じられる良い脚本・演出とも思った。
ラストの「マンハイム」の使い方も中々面白い。
CIAのミスは許さない、そして全ては闇に葬るという姿勢が感じられる。