64.号泣しましたけど、尊厳死がテーマの映画には必ずこのフランキーのような「究極の選択」を迫られる人物が出てくるので、その辛さに共鳴して必ず泣いてしまいます。感動とはちょっと違う。この映画が本気で心にズシンと来るのは多分、自分がフランキーと同じぐらいの歳になった時だと思う。今は年齢的にどうしてもマギー目線で観てしまうので「これでヨシ!」と思ってしまうけど、フランキーの歳になったらきっと、今よりずっといろんな見方ができて、その時にきっと、心の底から涙が湧き出るんじゃないかな、とぼんやり思いました。数十年後に必ずもう一度観ます。 【エムラ兄妹】さん [映画館(字幕)] 4点(2005-06-21 06:25:49) |
63.イーストウッド監督の『ミステッィク・リバー』は、個人的には良く思わなかったので、この作品も期待はありませんでした。 しかし、『ミリオンダラー・ベイビー』この作品の持つ静かさ、自然な佇まい、語り口がとても気に入りました。 普段の振る舞いはさりげなく、ごく自然に見えます。 その合間に垣間見られる、負い目、葛藤、ジレンマなど。 抑えた演技ですが、実に見事な演技だし演出だと思いました。 一級品です。 成功物語に見える前半も見事ですが、がらっと変わった後半は忘れることが出来ません。 主人公二人きりだからこそ、心情がこちらに迫ってきました。 ヒラリーさんの涙、真実に見えました。 私はマギーほど強くないですが、叶えられない悔しさには共感しました。 作品も素晴らしいですが、パンフレットもまた秀逸です。 最近では珍しく縦書きで、企画も文章も構成も上質です。 大林監督と大橋美加さんの文章を読めたのも、収穫でした。 いつもこのレベルのパンフレットを作って欲しいと思います。 【たんぽぽ】さん [映画館(字幕)] 10点(2005-06-20 22:32:30) (良:1票) |
62.イーストウッドだから、いつやりきれない事件が起こるかどぎまぎして見てた。 やっぱりやりきれなかった。なんかしとしととした雨に似合う映画だった。 ん、でも最後はハッピーだと思う。ミスティックリバーに比べたら、全然救いがあります。 |
61.いやー、予備知識ありで観に行ってしまったので、それほどの衝撃を受けなかった。それでも人間の尊厳について、深く考えさせられる映画でした。映画自体の評価は分かれるところだと思うけど、主役の3人の演技は凄い。 【Andy17】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-06-19 21:57:59) |
60.不器用すぎる男が愛する女に下した決断・・・それはあまりも残酷で儚い。そして知らないうちに僕はKOされていた。それは“感動”という名のパンチに。 【ピルグリム】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-06-19 20:28:00) |
59.《ネタバレ》 ストーリーを知らないまま観に行ったので、前半はありがちなボクシングのサクセスストーリーかと思って何度も寝そうになりました。うとうとし始めたところでいきなり事件が!。。そこからの尊厳死をめぐる話には考えさせました、泣けました。、と思ったらもうエンディング。。前半が長すぎんではないの~? とりあえずラストは納得できる内容でした。 【レンジ】さん [映画館(字幕)] 7点(2005-06-19 20:00:18) |
58.《ネタバレ》 最近「海を飛ぶ夢」という映画を見ていたので、「尊厳死」について多少は考えていたのと、その作品のレビューでこの映画の展開について書いていた人がいたので、あまり驚きも感じられませんでした。主人公は舌を噛んで自殺しようとしますよね。その点では「海を飛ぶ夢」よりはマシです。ただし、基本的には私は映画には夢や希望を求めますのでこういう救いのない作品の評価は下がります。実は私は最後までひょっとしてイーストウッドは彼女を励まし続け、なんとか助けるじゃないの?と思ってました。用意していた注射も魔法の液体で生きる意志が生まれるんじゃないの!?で、イーストウッドが本当に実行したんなら、その後モーガンが速攻病室に駆け込み彼女を助けて、「長生きも悪く無いよ」とかね(ノンキかなあ)。最後の行為を「タオルを投げた」とかいう見方があるようですが、逆だと思います。タオルはボクサーの意思(死の覚悟)に反して、命を救うために(ボクサーの尊厳を無視して)投げるのでは?イーストウッドは何度もタオルを投げようとしますが、結局、彼女の尊厳を重んじて、苦渋の決断で最後までタオルを投げなかったんじゃないのかと思います。モーガンに無理をさせて失明させてしまった事をずっと後悔し、以後選手達に無理の無い試合の組み方をしてきたイーストウッドですが、己の尊厳の為に生死を賭けて戦うボクサー達との付き合いの長さが、「尊厳死」(タオルを投げない)を認める思考回路を生んだんだと思いますが、障害者になっても懸命に生きている人はたくさんいるわけで(パラリンピックなんか見てると自分が恥ずかしくなります)、「拍手喝采を浴びてないと生きている気がしない」というのは、一度栄光を味わった人間の脆さであり、イーストウッド行為は単ににそれに同調しているだけのような気もします。 そもそも人間は脆いものだとは思いますが、だからこそせめて映画ではそれを克服する姿を見たいものです。 【東京50km圏道路地図】さん [映画館(字幕)] 5点(2005-06-18 23:40:38) (良:3票) |
57.前半と後半の二部構成といった感じでした。私は断然に前半が好きです。余分な言葉が削ぎ落とされたそれぞれのシーンは、怒涛のラストより感動的に思えたのです。ラストの決断も、両者の抱えた深刻な問題や闇をこちらに提示してくれていたので、私はすんなりと受け入れられました。が、正解かどうかはわかりません。 ただ、一緒に戦い、愛で結ばれた二人の選択です。第三者には計り知れない「絆」を感じずにはいられませんでした。 【プリシラ3103号】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-06-18 11:04:13) |
56.《ネタバレ》 あちこちですすり泣きの声がする館内で、私は泣けませんでした。「初恋のきた道」では5回も泣いた私(笑)が、いったいどうして?と、見終わってから考えたのですが、一つには、よく計算された脚本&演技&演出の「計算」が(私には)透けて見えてしまったこと。いま一つは、ラストにいたる筋書きが想像を超えたものではなかったこと。そして決定的だったのは、私にはこの幕切れは受け入れられなかったこと、でした。 むしろ、ラストは「こういう結末にだけはしてくれるな」という想いを抱いたもの。たしかに、人間が生きることの意味を問うたとき、フランキーのとった行動は一つの選択肢ではあるでしょう。しかし、私にはあの道は「進んではならない道」に思えるのです。それは、現実に同じような境遇にあっても、なお懸命に生き抜こうとする人が少なからずおられるから。 たとえば、ほぼ全身不随でありながら、わずかに動く口だけで見事な水彩画を描く星野富弘氏は、その生きざまで逆に健常者に勇気を与えてさえおられます。彼とて一度は絶望の淵に突き落とされています。でも、そこから「再生」を選んでいます。その道は決して平坦ではないはずで、大変な勇気と努力を要したと思います。行きつ戻りつ、悩んだり悟ったり、また苦悩したり……そんな繰り返しを経て、ようやく今日にいたっていらっしゃるのです。私は、その過程こそが素晴らしいと思う。 また、前半のマギーのド根性ぶりを見せつけられたあとでは、本作におけるマギーの死への願いは不自然に感じるのです。マギーなら、車椅子の生活でもマギーらしい生き方をするはずだと思えてなりません。犬のアクセルにしても、決して自分から死んだのではない。殺されています。アクセルは、そのことに逆に無念の想いを抱いていたんじゃないでしょうか。 はっきりいって、「お涙頂戴」のためにあの結末を用意したことで、本作の意義と値打ちは制作者自らがブチ壊したと思っています。映画って、こんな結末を描くためにあるの? という疑問が残ります。人が生きることの強さや可能性を信じきらなかった本作は、だから、私には9点や10点はつけられない作品となりました。ということで、6点也です。あ~、また「ショーシャンク」みたいにマイノリティ……。 【delft-Q】さん [映画館(字幕)] 6点(2005-06-18 01:53:28) (良:3票) |
55.精神的にも肉体的にも痛い映画でした。すごくいい映画だとは思うけど1回だけでいい感じです。やるせない感じがやっぱりイーストウッドだな~っと思いました。 【ジョナサン★】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-06-17 19:37:58) |
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54.去年のミスティック・リバーがつまらなすぎたので,どうかなーと思ったら・・・「最近ハリウッド映画はアジア映画に圧されてるなぁ」なんて考えていた私に,格の違いを再認識させてくれました.アカデミー賞と相性の悪かった私が初めて納得させていただきました.イーストウッドの表情に脱帽です.この映画は,尊厳死がどうとか,悲しすぎるとかいうことではなくて,ありがちなボクシングサクセスストーリーで終わってしまうのか?でもこのままでは「ロッキー」には遠くおよばないぞと思わせておいて,それを完全に忘れさせてしまう濃密な後半というギャップを素直に驚けるかどうかが重要なのではないかと思います. 【マー君】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-06-16 23:19:53) |
53.見た後しばらくはいろいろと考え込んでしまうことが多い。しばらくたつと、他の見た人といろいろ語り合いたくなる久しぶりの映画だった。ボクシングを描くための映画ではないが、ボクシングのシーンも迫力があり、しっかり感情移入してしまった。イーストウッドが持っていたアドレナリンは止血のためとして持っていたものなのかよくわからないけどそんなことは全く重要ではない。 【HK】さん [映画館(字幕)] 9点(2005-06-14 22:48:50) |
52.ラスト30分は泣き続けていました。私はたいてい音楽につられて泣かされるんですが、この映画はそんな音楽の盛り上がりや決定的なセリフに頼ることなくじわりじわりと涙を作り出す映画だと思いました。どばっと涙があふれるポイントがないわけですから、ずーっと目に涙って、状態で終わったあとは目が真っ赤でしたヨ。脚本自体はそんなにおもしろいものじゃなかったと思い、イーストウッドの監督としての手腕と俳優たちの演技に脱帽です。熱演って、怒鳴ったり泣き叫んだりすることじゃない、その泣き叫びたい気持ちを押さえ込んで淡々と言葉を発しているんだ、と観客に見えない心情を悟らせることなんだ、と初めて実感させてくれました。 【椎花希優】さん [映画館(字幕)] 9点(2005-06-14 12:44:08) |
51.打ちのめされましたよ、俺も。イーストウッド、フリーマン、ヒラリー・スワンクの三身一体中枢神経攻撃に。映画観ている間、最近とんと燃え上がらなくなっていたあらゆる感情、怒り(青い熊許さーーーーーん!マギーの家族連中絶対許せーーーーーん!)痛み、悔い、闘争心、悲しみ、愛しさみたいなもの全てが、振り幅激しくこれほど揺り動かされたのは本当に久しぶりの事でした。自分の中のこういう感情を覚醒させてくれた事だけでも、この映画には大感謝です。音楽も最高でした。 【放浪紳士チャーリー】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-06-14 11:00:27) |
50.流れに逆らうようですが、微妙な作品だと思います。 自分も、エンドロールはおろか、明かりがついても劇場の椅子からしばらく立ち上がれなかったのは確かですが、それは、ストーリーの物理的な「重さ」から来たもので、「感動の波に飲まれて立ち上がれなかった。」ってのとは少し違う気がしました。 「あとは各自で処理するように。」と言って渡された大きな漬物石を抱えて、しばし茫然自失としたという感じです。 映画の終わり方としては,反則技に近いかも知れません。 肝心のボクシングのシーンはかなりお座成りで、イーストウッドのトレーナーとしての手腕や、ヒラリーのボクサーとしての圧倒的な強さに説得力のないまま簡単に成り上がってしまうので、その部分で一喜一憂する面白味がありませんでした。 話の顛末から鑑みて、前半の「生」の輝きをもっともっと眩しく描くべきだったんじゃないかと思いました。 ストーリーにメリハリが足りなかった気がします。 更に、ジムの連中を含め登場人物のほとんどが捨て駒で、モーガンの役どころにしてもどこか中途半端で、ストーリーの中での確固たる存在理由が希薄だった気がします。 主人公二人のラブストーリーという側面もありますが、はじめは断っていたトレーナーを結局引き受けた心情の変化が曖昧だったりして、クッキリとした輪郭が見えて来ません。 命の尊厳についてもひとつの答えが提示されているものの、悲壮感のある安いメロドラマ以上のパッションは感じませんでした。 良く言えば、泥臭くて不完全な人間臭いドラマと言えるかも知れないけれど、個人的には「傑作」とは言いにくいです。 【Beretta】さん [映画館(字幕)] 7点(2005-06-14 03:52:04) (良:2票) |
49.《ネタバレ》 ■かつてイーストウッドがヒーロー=正義の味方だったことがあっただろうか?彼は、いつも飲んだくれていたり、家族をないがしろにしたり、やたらと女性にちょっかいをだしたり、盗みを働いたり、あげく人を躊躇なく殺すことすらしてはいなかったか?どちらかといえば、彼は、負け犬の味方、いや実は負け犬そのものだったのではないか!(最近はやりの意味じゃなくてね) ■愛するものにとって、相手が自分のために苦しんでいるのを見ることほど辛いものは無い。それが人生の中で唯一愛したひとであればなおさらだ。彼あるいは彼女は、ウィンクひとつで愛する相手が何を望んでいるのか立ち処に理解してしまう。そこに世間の倫理は意味をなさない。愛するものができることは、ただ相手の望みを叶えてあげること。 ■とはいえ、彼と彼女のとった行動に、正直私は泣けなかった。(泣けるわけがないだろう!)それと、ラストショット(まぶぜ氏にまるで落語のさげのようだと言ったのはこの私です)。この映画に最初から漂っていた「終わること=死への希求」の気配は、じつはイーストウッド一流の罠で、我々観客は彼にまんまと一杯食わせられたのではないか?なぜなら、窓越しからのレモンパイに舌鼓を打つ彼の背中は、私には、まるで次の罠を考えながらひとりほくそ笑んでいるペテン師の不敵な姿にしか写らなかったのだから。 ■それから、まぶぜ氏が本作の異様さについて語っているが、それは本作に限ったことではなく、処女作『プレイ・フォー・ミスティ』の頃から既に顕著だった気がする。フォードやホークス、あるいはヒッチコックのように軽々と映画を撮りながら、画面に否応なしに現れてしまう“異様さ”。だが、それはイーストウッドだけの特徴ではない。思えばそれは、リュミエール兄弟が列車をラ・シオタ駅に到着させた頃にはもう既に現れていたはずだ。現実をありのままに撮りながら、現実とは違う“異様さ”への変貌、すなわち映画そのものに!? ■最後に、ゴダール、リベット、ロメール、そして我らが清順と、映画の最先端をひた走っているのが、なぜか老人ばかりなのは、映画の現状が正に『スペース・カウボーイ』的状況だからか?(ニガ笑) ならば、私は彼にこう言おう。「イーストウッドよ、オリベイラに負けるな!」 【なるせたろう】さん [映画館(字幕)] 10点(2005-06-13 19:55:24) (良:1票) |
★48.何か本当のプロの作品を見せて貰った気がする。ありがとう。 |
47.エンドロールがこんなにも短く感じだ映画は初めてです。最後はずっと泣き続けて映画館を出た時には目が真っ赤でしたね・・・。まず、さすがアカデミー賞を取った作品ですねストーリーも俳優陣も凄い素敵です、特にヒラリー・スワンクの演技には圧倒されましたね、鍛え上げられた肉体は本当にビックリしましたそして彼女が女だとゆうことを途中忘れてしまいました(汗)クリント・イーストウッドは本当に俳優としても監督としても素晴らしいと改めて思いました!もうおじいさんですね・・・(笑) 私が今まで観た作品の中で最高に泣ける作品だと思います!!劇場では鼻水を我慢するのが大変でした・・・。 【愛しのエリザ】さん [映画館(字幕)] 9点(2005-06-12 17:54:32) |
46.《ネタバレ》 ボクシング映画だとは知らなかった……。イーストウッドにボクシングって事前に知っていたら、間違いなくスルーしていました。ボクシングってストイックでしょ? 事実、あんまり好みの話ではありません。でもちゃんと観せられました。『ミスティックリバー』ほどの解せなささもありませんでした。しかし、この映画には、夢がありません。死に場所を求めている、そんな雰囲気があります。哀しさ、やりきれなさに、救いを求めようとしています。あの家をプレゼントするシーンがありますよね。母ちゃんや妹の強欲さが出ていますが、マギーだってプレゼントの押しつけ。互いにコミュニケーションがとれていないから、からまわりをしてしまうんですよね。「私には、もうあなただけ・・・」。その言葉には悲壮感があります。結果があーだったからこそ、余計に悲壮感があふれ出てしまうのでしょうが。実際、人は身近な人に依存します。誰かがいるから、誰かを見限れるなんてことも(意識の有無にかかわらず)あるでしょう。それを咎められるはずはありませんし、人間というものはそーゆーものなのでしょう。だけど、口に出してしまったらオシマイなのです。寅さんがいいますよね。「それを言っちゃーおしめぇよ」と。何か違うよーな気もしますが、ホントのコトを口に出しちゃーいけねぇんです(何故かちょろっと江戸弁)。逆に“モ・シュクラ”というリングネーム(←ってボクシングでも言うの?)の意味を彼女は最後まで自分の言葉では認知しなかった。自分のもうひとつの名前(分身)なんだから、さすがに意味を調べたと思うんですよ。たとえ“ボス”を盲目的に慕っていたので告げられるまでは我慢してたとしても、あそこまで有名なんだから、その意味は必ずなんかの雑誌で書かれているはず。そして自意識、名誉心の強いマギーは、自分が載った雑誌などを気にしているはず。もしかすると由来が出てきそうになったら目を逸らしているのかもしれません。ボスに告げられるまで知らなかったフリをするそんなマギーのやさしさと「あなただけ」と寄り添われる心地よさ。それが老いたフランキーの心を癒す最良のエピソードなのかと思うと、あのボクサー志望の女性は、すべて老人のために存在したということになって、なんともやりきれなくなってしまうのです。 【元みかん】さん [映画館(字幕)] 7点(2005-06-11 15:28:21) |
45.「ミリオンダラー・ベイビー」はそのタイトルからくるイメージとは程遠い、実に重みのある作品だった。もちろん途中までは、確かにアメリカン・ドリームを実現しようと奮闘する、いわゆるウエルメイドな痛快篇であることには違いないが、人生、好事魔多しで、奈落の底へ叩き落とされた途端、ドラマは後半急速に深刻さを帯びてくる。実の娘あるいは家族への想いが届かないもどかしさに、人生のほろ苦さを味わうフランキーとマギーは実の父娘以上の、まさに運命共同体である。そんな戦友とも言える二人が見た束の間の夢は、残酷な形で跳ね返ってくる。それはたまらなく悲惨で、ひたすら重苦しく、ほんの僅かな望みさえ奪われてしまう二人の無念さが、胸に迫ってくる。本作で表現される光と闇は他で類を見ないほど巧みであり、暗い情念の世界がスポットライトを浴びているファイトシーンとの対比で、悲惨さをより際立たせるには実に効果的だったと思う。そしてフランキーが応急処置のスペシャリストでもあることが、図らずも皮肉な形となって表れるのが終盤のシークエンス。その一部始終を暗闇から見届ける親友のスクラップの眼差し。神に背いて究極の選択をするフランキーに対し、スクラップのその眼差しは、まるで沈黙する神のようである。自らの運命を宿命として受け入れるスクラップの生き方に対し、見るに見兼ねてひたすら行動に移すフランキーのイメージは、「許されざる者」のマニーの姿とだぶる。そして、生きることに絶望した人間に一縷の望みを叶えてやるという魂の救済の物語としては、「ひとりぼっちの青春」のM・サラザンとJ・フォンダの関係に重なり合う。まさしくフランキーは“廃馬を撃った”のであるが、マギーの微笑と一滴の涙がすべてを物語るように、彼自身の魂をも救済されたと思いたい。これが本作が究極の愛の物語と言われる所以であろう。人間とは哀しく生きることは苦しいという使い古されたテーマが、これほど切実に心に響く作品も滅多にお目にはかかれない。どうやらアカデミー会員は最良の選択をしたようだ。 【ドラえもん】さん [映画館(字幕)] 10点(2005-06-08 18:36:39) (良:3票) |