32.《ネタバレ》 僕たちは、映画史を学ぶために映画を見ているのではなく、想像力を刺激してもらったり、楽しんだりするために映画を見る。だから、映画史的に画期的な作品であっても、つまらないと思える作品は少なくない。・・・・・こうしたアングルは画期的だったとか、史上初のカラー映画だったとか、言われても、現代では珍しくないことならば、映画の面白さを増してはくれない。・・・・・そういう意味では、この映画は、すぐに面白い、と思える作品ではない。僕も、BSから録画して、見終えるのに3日かかった。・・・・とはいえ、次のように考えると、味わいの深い映画だ。 ・・・・テーマは、必然である死を前にしての二つの生き方の対比。昭和10年代だ。男は、30歳まで生きられる見通しは明るくない。誰もが戦争での死を覚悟していた。冒頭の長屋での縊死は、そうした必然としての死をはっきりと示している。・・・・そうした中、新三は、あくまで権威に抵抗し、人々と楽しく、自分の人生を潔く謳歌しようとする。海野は、権威におもねることで活路を見いだそうと、無駄な努力をしている。二人とも、必ず死ぬことになるのだが、どっちの人生を選ぶのか。・・・・個人的には、ラストの紙風船の映像については、まあ、あってもいいけど、「そんなに斜に構えて、無情を力説しなくてもいいじゃん」と思った。 【王の七つの森】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2009-11-15 12:27:49) |
31.《ネタバレ》 髪結新三は、お駒誘拐を決行した時点で、最期を覚悟していたのだろう。又十郎よりむしろ魅力的。終始暗い眼をしていた女房おたきは、又十郎の善良さが許せなかったのだと思う。気の弱い又十郎が、自分のためにつく「うそ」が澱のようにおたきに溜まり、最後の「隠し通せないうそ」で感情を決壊させたのだろう。 【なたね】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2009-11-13 00:02:39) |
30.ここでの評価が物凄く高かったので期待して視聴・・・・・したがそれほどのものは無かった。 又十郎に全く感情移入できないことと、90分に満たない上映時間ながら場面の一つ一つが冗長に感じられてしまうところに問題があると思う。 また、登場人物一人ひとりの言動がどうも形にとらわれすぎていて機械同士が喋っているようにしか見えない。これは演者が感情表現に乏しいからであろう。 そしてとにかく作品全体に漂う異常な古臭さである。この時代の作品にも古臭さを感じさせない作品はいくらでもある。邦画という視点から見ても黒澤映画の足元にも及ばないのである。 【理不尽みるく】さん [DVD(邦画)] 2点(2009-09-28 22:00:31) (良:1票) |
29.色んなレビューサイトでの評判を聞き、ようやくDVDを見つけました。1937年の映画ですが、現代でも通用する映像技術、演技、そして切なくも悲しいストーリー。これを名画と言わずして何と言おう。近年の歴史映画には類を見ない、実に素晴らしい作品だと思います。ラストなんてもう鳥肌が。映画には時代なんて関係ないもんだな、と再認識いたしました。全ての映画ファン必見でございます。 【Fukky】さん [DVD(邦画)] 10点(2009-09-22 21:01:13) |
28.《ネタバレ》 邦画史上最高の遺作。ただこの映画を「遺作」とするのは忍びがたい。竹中労氏の名書「鞍馬天狗のおじさんは」でアラカン(嵐寬寿郎)が語る青年山中貞雄は天才でも何でもない、ただ愛すべき「映画馬鹿」であった。風采はあがらない、生活観念も少し乏しいが映画を撮る事にかけては物凄い才覚をもっていた彼。アラカンの独立プロを経て大手映画会社に移り、これからという時に忍び寄る戦争の影。そんな世相の中で撮られたこの作品は、お通夜の席であっても「笑わなければやってられない」寂しさが画面から溢れてきてやりきれない。そしてラストの紙風船。ここまで強い寂寥感を持つシーンを以降私は観たことが無い。 出征前の送別会で山中は前後不覚になるほど酔いつぶれ、座敷の階段を転げ落ち「自分は不器用だから戦場に行っても死ぬだけやわ」と号泣し、戦場へ向かって行った。そしてその一年後中国大陸で戦病死する。遺書「最後に、先輩友人諸氏に一言。よい映画をこさえて下さい。以上」 【Nbu2】さん [映画館(邦画)] 10点(2009-07-12 02:49:14) |
【Yoshi】さん [DVD(邦画)] 7点(2008-12-03 20:44:12) |
26.《ネタバレ》 雨の数秒1カットの幕開け、金魚売を挟んだ新三と大家のかけ合いの妙、そして人物紹介と長屋で暮らす人々の生活感を瞬く間に描ききった“お通夜の宴”の奇跡のような導入部。長屋に住む人々の暮らしの鮮やかな描写、その味わい。ひとの感情と所作を巧みな構図で丁寧に描き、その顛末を悉くバッサリと割愛することで、これ程までに映画は奥行を増すものなのか。その手法にどっぷりと浸り、酔いしれる。髪結の新三はもとより、海野又十郎も大家さんも、皆が僕の中でずっと生き続けるに違いない。こんな映画は他にない。 【よし坊】さん [DVD(邦画)] 10点(2008-11-02 11:49:33) |
25.全編通して全く古さを感じさせない重厚なドラマですが、圧巻はやはりラスト5分。タイトルや冒頭の通夜のばか騒ぎなどからもっとお気楽で心温まる物語を想像していたのに、まさかあんな結末を迎えるとは…。昨今のヘタな自称どんでん返し映画などより遥かに勢いよくひっくり返される衝撃の結末にはただただ悶絶。 【とかげ12号】さん [DVD(邦画)] 9点(2008-08-20 20:53:06) |
★24.《ネタバレ》 人情、この作品の持つ表現力は、現在の技術をもってして不可能。この映画にやっと辿り着いた。 |
23.さすが山中貞雄の代表作だけあって、痺れる緊張感がありました。 【にじばぶ】さん [ビデオ(邦画)] 6点(2007-10-13 10:19:44) |
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22.《ネタバレ》 70年前の作品ということで、さすがに古さは感じましたが、逆にそれがリアルな感じになっています。(この作品から70年程遡ると江戸時代ですからね・・・・) 非常に重苦しいストーリー(現代社会の閉塞感にも相通じるものがあります)ですが、時に喜劇的な要素も含まれているので最後まで一気に惹きこまれるように観ることができました。 しかし、長屋の様子や縁日のシーン、そして雨の情景など日本的情緒の映し出し方が本当に素晴らしいです。あと、セットや小道具も中々効果的でした(ルビッチ監督の作品を思い起させます。) 何というか、観終わった後何度も反芻してしまう作品ですね。 【TM】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2007-06-13 18:11:42) |
21.雨の中たたずむ男のシーンが頭から離れない。。映画であることのすべてがつまっている作品。せりふ、カメラ、照明、構成、役者、ストーリー、音楽、、どれをとっても文句の付け所がない。これが「映画」ってものなんですね!!! 【kaneko】さん [ビデオ(邦画)] 10点(2006-12-05 14:11:11) |
20.《ネタバレ》 山中貞雄の現存する三作のうち一番最後に観た作品。遺書に「人情紙風船が山中貞雄の遺作ではチトサビシイ」とあるけどほんと寂しい作品です。日本映画史上に残る傑作というのも確かにと思う。ただ言われるほど暗いとは思わないし名作だと思うけど、三作の中では「百万両の壷」のほうが好きかな。 【バカ王子】さん [DVD(邦画)] 9点(2006-06-11 00:08:13) |
【くさや620号】さん [DVD(字幕)] 10点(2006-05-28 13:55:54) |
18.《ネタバレ》 無頓着で気楽な平民の日常と極限に厭世的なテーマとが織り成す無常観。 髪結いのプライドと浪人のプライドが一つの夜にそれぞれの終局を迎える。それぞれの短刀が光る。プライドなんて持ってはいけない身分の二人が必死こいてかっこつけた結果は・・・コロ・・・コロコロ・・・コロ・・・ス―――――――。語り継がれるわけでもなく、理解されるわけでもなく、長屋ではただ日常が続く。。 本作を語る上でどうしても避けて通れない特徴が画面の奥行きへの徹底。どんな路地でも人物を奥から手前へ、手前から奥へ歩かせ、画面の奥には何の関係もない人物を映り込ませる。長屋での新三の部屋が角部屋という設定も奥行きを出すための配慮だろう。その思惑は見事に的中し、長屋の逆側から映すカメラが人の行き交う長屋の様子を冷静に映し出し、その空気が画面を越えて運ばれてくる。 些細な出来事を通して主要な人物から長屋の人間一人一人にまで命を吹き込んでゆく人物描写力も言うまでもなく見事。傑作の名に恥じない出来映え。 【stroheim】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2006-04-20 05:32:59) (良:1票) |
17.《ネタバレ》 黒澤明率いる黒澤組の合言葉が「山中に追いつけ追い越せ」。今の映画環境では誰も真似のできない(雲待ち3日とか)完全主義を貫いた山中貞雄の早すぎる遺作は、なんとも暗くて悲しい物語。しかし長屋の住民たちの日々の暮らしの描写は、幸福とはいったいなんなのかを提示してくれているようだ。隣人をからかい、ふざけ合う、そして怒ったり笑ったりしながら生きてゆく。何かにかこつけては皆で飲んで大いに笑う。お金の使い方もよく知っている。いつもよりもっと笑う。女はあきれる。そこに幸福がある。冒頭で首をくくった住民は元武士。そして主人公も元武士。要らぬプライドのせいでこの幸福に気づかず、やっと気づいたとき、そのことに気づくはずもない妻によって無理心中、、。やるせない悲しみを完璧な紙風船の動きがさらに増幅させて終わる。ただ、この暗さ、この悲しさの中に、たしかに幸福感が存在している。だから傑作なんだと思う。ただ完璧なだけではなく、ただ巧いだけでもない。映画の中にただならぬ人生の喜びと哀れみが存在する。 【R&A】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-12-26 18:01:58) (良:1票) |
16.《ネタバレ》 しょっぱな、動機不明の○○で始まる。「一体どうしたんだろう?」「お侍も色々あんだよ」と、長屋の人たち同様、我々を惹き込む。人の死すら酒の肴にする、活き活きチャキチャキとした長屋のにぎわい。現代って、近所づきあいとか難しいです。公園の草むしりに出てくる人、来ない人。来ない人に対しては、「○○さん来てないわよ、やぁねぇ」などと陰口をたたく。この映画では、いまの時代では見かけることが不可能になりつつある、裏表のない近所づきあいが、前半、正に下町の人情をほのぼのと展開していく。一方で、どこにでもいる浪人・海野、無頼・新三にスポットを当て、仕事の無心などの生活が苦しい事情を、鬱々と映し出しています。山中監督が仕掛ける陽と陰のコントラスト。そしてラストの海野家の○○。冒頭の○○がここでフッと記憶に蘇る。ぞっとします。どの家庭に不幸があろうとも、長屋(ご近所)はいつも通り、活き活きチャキチャキとにぎわうもの。監督が当時感じていたであろう世相を映画化したのに、なぜか現代に通ずるものがあり、不思議な印象でした。結局、あの二人は駆け落ちしたのかなぁ? |
15.《ネタバレ》 この映画を観て感じることはただ一つ!こんなにも凄い映画をわずか20代で撮った山中貞雄という監督は物凄い!今の日本の監督でこんな凄い作品を撮れる監督はまずはいないと思うし、まして、20代で撮るなんて絶対考えられません。わずか30歳という若さで戦争により亡くなってしまった山中貞雄監督の死は日本映画界における大きな損失だと思う。とにかくこの映画のその映像といい、物語の凄さ、ラストの溝に落ちて流れていく紙風船の描写は鳥肌が立ちます。 山中貞雄監督の最高傑作であって、それだけではなく日本映画史上、10本の中に入る素晴らしい大傑作だと思う。私の中で観る度に評価が高くなる稀な映画として、当然の如く満点の10点です。 【青観】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2005-06-16 22:30:24) |
14.幸運にも図書館で借りることができ、鑑賞しました。戦前の日本にこれだけ完成度の高い群像劇映画が存在していたとは、ただただ驚愕の極みです。ぜひ山中貞雄監督の他の作品も観たいのですが、現在ではフィルムがほとんど散逸しているということで、残念でなりません…。この映画の存在を教えてくれた他のレビュアーさんたちに感謝の気持ちでいっぱいです。 【K】さん 9点(2005-03-24 10:10:53) |
13.山中貞雄監督の作品をはじめて拝見させて頂きました。観る切っ掛けは、やはりこのサイトでの平均点が異常なほど高かった事と、レヴュアーさん達の感想の中で絶賛を受けている、そんな作品を観ないわけにはいけないと思い、そして日本最高傑作と言われるこの作品を観て見たい、という思いからTSU○AYAでビデオを借りた次第であります。そしてビデオをセットし、再生ボタンを押すと、物々しい雰囲気からストーリーが始まり出しました。すると、いきなり画面に映る映像に驚きを感じました。なぜなら画面の向こうに移る風景や背景がまるでその時代の街を本当に映したかのように、全てがリアルだったからです。これほどまでに鮮麗された映像の時代劇は観た事がありません。そして映像だけでなくストーリーもとてもリアルだった。この映画の中に登場する人々の思考は、現代人の心理とほとんどが同じで、その人々の考えや思考に共感とまでは言えませんが、結構理解できました。しかし、前評判が高過ぎて、自分の中で期待の風船を膨らまし過ぎてしまいました。ストーリーの重苦しさ、苦しみがどうも僕にはつら過ぎて、直視する事ができませんでした。この映画を最高傑作だ!と感じれない自分自身にすごく腹が立ちます。あぁ残念だ・・・ 【ボビー】さん 7点(2004-07-27 23:46:20) (良:1票) |