79.《ネタバレ》 いい映画だと思います。出てくる人達が皆普通の人で、描かれる物語も普通、人が死ぬ時も普通、とにかく様々な面で普通なので、その分共感できる部分が多々ありました。原節子はちょっと善人過ぎて、なんだか無理している感が漂っているような気がしたのですが、そういう不自然さも含めて描きたかったのか、それともあれは自然な演技でああいう人が当時はいたということなのか、まぁまだまだ私が勉強不足なのでしょう。 【あさしお太郎】さん 8点(2004-08-31 01:32:58) |
78.「私ずるいんです」 笠智衆に対して頑なに言い募る原節子は、最後に救われたのだと僕は思う。「東京物語」とは、大都会でひとり生きてきた原節子演じる紀子が自らの頑なさを笠智衆という在るがままの御仁にぶつけることによって救われる物語なのである。もちろんこの大傑作映画は、登場人物たちのさざめく日常を丹念に描き、様々な人々の様々な奮えを静謐に表現することによって、実に多面的で奥が深い作品となっている。その多くの場面に僕は感銘を受けた。 それでもやはり、原節子という優しさの象徴のような女性がその内情の弱さを吐露する場面は、この物語のクライマックスであり、それは笠智衆という「精神」の静かな態度によってしっかりと受け止められるのである。最終的に、笠智衆は妻に先立たれ、子供達には厄介者扱いされるような不遇の立場にあるわけだが、彼はその立場を捩れなく自然に抱えこむことによって、決して自らの弱さに屈しない、かつ自らの強さを誇張することのない凛然とした「勁さ(つよさ)」を見出すのである。原節子が最後に救われ、癒されたのはそんな彼の自然さであり、「勁さ(つよさ)」である。彼女が自分の「ずるさ」と自然に向き合えたことこそが彼女自身の癒しだったのだ。 笠智衆が一人佇む最後のシーン。彼が自分の人生を十分に反芻しており、そのことから滲み出る自然体であることの「勁さ」というものを僕は切に感じることができた。そして、僕も救われたのである。 【onomichi】さん 10点(2004-08-25 01:20:02) (良:2票) |
77.開始五分はとにかく穏やかだった。その五分と言う間に、日本映画の“静けさ”の本当の意味を知った。音楽はいらない、日常の音がただ静かに音楽のような役目になって、二人の会話を浮き立たせる。そして二人の穏やかな会話が心を和ませた。自分が持っているのにも関わらず、自分は持っていないと言って強情を張り、でも結局自分が持っている事がわかると、黙り込む。しかし妻は決して夫を責めない。その心の余裕、やさしさに感動し、泣きかけてしまった。二人は決して争い事を起こさず、無理もまったくせず、ただ自然に相手を想い合う老夫婦。優しさに満ちていた。そして僕の心は完全に癒され、幸せな気分になった。この時点で既に10点をつけると確信した。そして二人は東京へ。大都会、多人口、日本の中心へ。未知の世界へと足を踏み入れた二人だった。始めは子供達も親切に親を想い、見ていたが、徐々にその姿も雑になって行く。その姿はあまりにもあからさまで、僕自身、怒りの感情が爆発して、壁に穴を空けてしまうのを抑えるのにすごく苦労した。どうして親の気持ちを理解しない?親がどれだけ我が子を想い、どれだけ愛しているかなぜ解らない?親が何を求めて東京に来たのかなぜ気付かない?あまりにも辛く悲しかった。観続けているのが辛くなった。そんな中、血の繋がりのまったくない紀子だけがこの辛さ(暗さ)に光を灯していた。老夫婦を心から想い、優しく包み込む紀子。あまりの優しさ、親身さに涙が止まらなかった。血の繋がりはなくとも、まるで親子のような“愛”が老夫婦と紀子の間にはあったのに、実の子供と親の間には薄っぺらな形だけの親子のような関係のようにしか見えず、悔しさすら込み上げ、奥歯を噛締めても涙が止まらなかった。本当に親子の絆はこの映画のようにいつかは薄れてしまうのだろうか?そんなの辛過ぎます。悲し過ぎます。僕は絶対そんな大人にはなりたくない。でも、今はそうならない自信がある。それはこの映画を観たから。僕に親という掛け替えのない存在の大切さに気付かせ、深く考えさせる切っ掛けを作ってくれた。僕はこの気持ちを絶対に忘れない。僕に親の大切さを“映画”という形で教えて下さった小津安二郎監督に、感謝の気持ちと敬意を払い、10点を点けさせていただきます。僕はこの映画が大好きです。本当にありがとうございました。 【ボビー】さん 10点(2004-08-23 15:17:13) (良:3票) |
76.《ネタバレ》 日本の家族。親孝行。シンプルなせりふと映像から伝わってくるものは計り知れない。なんともいえない間と空気感。老夫婦の寂しげな背中。忘れられない。きれいな夜明けのような映画。 【kaneko】さん 10点(2004-07-31 13:47:33) |
75.家で一人で見ていて、終わった後思わず立ち上がって拍手したくなりました。日本映画の最高傑作は東京物語だと思います。何より脚本が素晴らしいです。登場人物個々の心情が簡素な整理でも伝わってきます。日本語も美しいし。これを見ていて思うのは、どんなに日本の風景は変わっていても、日本人はそんなに変化していないということが分かります。良く「最近の若い人は……、昔は……」とよく年配の方がおっしゃるけど、そんなことは50年前(今その台詞を言っている人たちが子供の頃)も同じことを言っていたんですね。「最近の若い者は親も殺すから」みたいな台詞、田舎から出てきた親を邪険に扱う子供たち(でも彼らなりに大切にしようとしているんです)、祖父母になつかない孫、そんなの昔も今の一緒じゃないか。お父さんもお母さんも本当は寂しいけど息子や娘にはそれぞれの生活があることがわかってる、ものすごく謙虚で他人に理解がある心が温かい人たちです。こういう年配者の謙虚さが今の日本にはなくなってしまったような。逆に若い人が見れば、両親を大切にしたいという気持ちがきっと芽生えてくると思います。10歳から100歳までの全ての人がこの映画を見てくれたら日本はきっと少し明るくなると思います。 |
74.懐かしくて美しい。全てに時代が感じられ、淡々とした一つ一つのやりとりに深みがある 。こういう作品が色褪せることはないのでしょう。 【KING】さん 8点(2004-06-17 09:54:13) |
73.《ネタバレ》 前半部分は単調なリズムだし映像がほとんど変わらないから、退屈だったけど、後半はもう感動しまくったなぁ。笠智衆さん35歳でこの演技は凄すぎです。 【夏目】さん 10点(2004-06-13 21:30:25) |
72.わたしが観た小津安二郎作品の中で一番好きな映画です。東山千栄子と笠智衆が、わたしの亡くなった祖父母に似ていて、何度観ても泣いてしまいます。日本人で、日本語で、この映画を観れて本当に良かったと思います。 【rexrex】さん 10点(2004-06-12 12:42:45) (良:1票) |
71.この物語の雰囲気と低い視点から撮られた安定感のある映像がとてもあっていた 人がしゃべるときに胸から上の映したカットがさらに映像の安定感を増していてとてもよかった 台詞は普段よく使うような言葉であるのに一言一言が心に響いた 今の時代は騒がしすぎてこのような静かな作品は記憶に残らないかもしれない しかし僕はそうは思わない 静かな作品だからこそメッセージがストレートに伝わり記憶に残るのだと思う 人生において見落としがちな重要なことを気づかせてくれるようなとてもよい作品でした 【ぺぷとりじ】さん 9点(2004-06-08 21:50:18) |
70.小津映画の代表の一つといえる秀作である。淡々と日常が流れ、簡素過ぎてつまらないという人もいて賛否両論になるが、私はこれほど人間の本質を掘り下げ、感情の露骨さを表現された映画はないと思う。台詞に無駄な装飾もなく、有り触れた台詞しか使っていない。独特の小津調で語られる台詞は奇才故の絶妙な間隔が敷き詰められており、言葉々々の間の背景に哀愁と深遠さを附加させるものである。またモノクロ映像がもつ世界観は未完映像として、観る側に色の創造性と人間がもつ蒙昧な意識を揺動させる力がある。だから、私は観る度に進行する記憶と連鎖し呱々の声として心に鳴り響くのである。習慣性の幸せは淡々と消費され、必然のものとして受け入れられてしまう。突如失われる残酷な現実を突きつけれるまで軽薄なものだけにしかないのである。喪失感からしか生まれない存在意義の大きさに悔恨の念を含みながら人間愛を瞑想に耽る。それにうちひしがれそうになりながらも強靱の力で活きようとする人間たちの同志が憧憬の人間像として垣間見せられるのである。小津の抒情が収斂された雅やかな映像を真摯になって受け入れなければならないことであり、自信を内省的に反芻させられた映画でもある。半世紀を過ぎても色褪せることなく現在も不動の名画として活き続け、変わり行く時代と共に進化し続ける。 【ぼん】さん [映画館(字幕)] 9点(2004-05-16 06:43:10) |
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69.改めて評価する必要もないでしょうが、心理描写の細やかさとカメラワーク、進行のテンポが見事にかみ合った作品だと思います。今の時代にはすべてが遅すぎ、静かすぎるのかもしれませんが。アジア諸国で上映し、反応を聞いてみたい作品です。個人的には、唐沢版「白い巨塔」の最終回の翌日、BSで放映されていたのを見て、改めて衝撃を受けました。「白い巨塔」での財前教授の死は、それなりの深みをもっていたと思うのですが、やはり「東京物語」と比べるといかにも平板にあざとく思い返されました。人の死をみつめるという現代人が逃げてしまう現実を思い返させてくれる作品でした。 【モリブンド】さん 10点(2004-04-30 15:42:43) |
★68.《ネタバレ》 主要人物が、喜怒哀楽を強く押し出すことなく奥にぐっと噛みしめようとする様が、逆に感情の奥深さを感じさせます。特に、笠の枯れた佇まい。逆算すると、当時の実年齢は50歳前後のはずなのに、枯淡の境地にあるかのような立ち居振る舞い、台詞。特筆すべきは、ラスト近くで近所の婦人と会話するシーンの、笠の「背中」です。妻を失い、表にこそ出さずに気丈にふるまっているものの、内心にある寂寥感を、見事に背中だけで表現しています。笠の隣にいつも寄り添っていた妻は、もうそこにはいない。わずか数十秒のこのシーンだけで、この点数を計上してもいいくらいです。 |
67.この映画のテーマは望郷なのでしょう。ああ田舎に帰りたいなあ。そんな誰しもが持っている感情をくすぐったに過ぎないのかも知れません。俳優陣の演技も決して上手いとは言えず、ひとり輝きを放つ原節子氏も妙に不自然な目線と色っぽさで浮いているとしか思えません。半世紀前の映画とはいえ。悲しいことに「東京物語」で描かれているような親子関係はさらに悪化している。彼等夫婦が言っていた通り、平気で親を殺す時代。なんぼかまし、幸せな方なのだ。親は子供の考えていることが分からず、子供は親の考えていること等興味がない。それはそうなのだが、あまりにも親子の間に壁があり過ぎて、幼少の頃や青年期になにかあったとも思える描写が気になる。父親がよく酒を飲みそれが嫌だったというが、その程度の事でこの扱いはあまりに大人気ない。もうみんな良い歳なのだから知人や友人の死を経験して、人の痛みを理解して良いはず。すばらしい映画なのですが、なにか感動できるものが欲しい一本です。 【wish】さん 7点(2004-04-03 10:06:59) |
66.遠く離れた親子の再会と母親の死、淡々とした日常をありのままの描いているのは良く判るが、特別なものを感じられず高評価が理解できない。田舎から出てきた親を鬱陶しく感じることや死んだ母親の形見分けについて口出しすることはよくある話で声高に非難される出来事とも思えずこの作品でもっとも自然であった杉村春子の演技を評価したい。寅さんシリーズでの笠智衆は好きだが、この作品では台詞が棒読みに聞こえて感情が伝わってこなかった。山村總や大坂志郎を懐かしく思う年代の私だが、50年前にこの風貌の笠智衆に興味を持って見るばかりで、作品の価値が解からないのはまだまだ人生経験が足らないということなのだろう。 【WEB職人】さん 5点(2004-03-20 23:23:52) |
65.《ネタバレ》 所詮映画は作りモノですが、これはどこにでもありそうな世界のようでいてかなり異質な世界なのでは?と思う。この映画をみて「ある、ある、ある」って思うのか?「ない、ない、ない」って思うのか?私は後者だ。そもそも「忙しい、忙しい」っていってるのはダイタイ暇なヤツが多いし、単に面倒なだけでしょ?上京した親の相手が面倒な気持ちもわからないでもないし、上京時の扱いはまだ許容範囲としても、母が危篤→死の過程での子供達の反応・言動はちょっとひどい。「ない、ない、ない」って思う。よって青いと言われようが、香川京子を断固支持する。原節子の心情の吐露は誠実さの表れで、映画的には悪くは無いのだが、妻を亡くし落胆する義父にワザワザ言う必要はないのでは?と感じる。普通は言わないだろう。散々凹まされたラストの笠智衆の姿は「人間最後は一人なんだ」という事を切実と感じさせる。いろいろ考えさせられる作品ではあるが、かなり後味の悪い作品だ。家族は各々独立して然るべきで、ベタベタする気は無いけれども、これをみて「家族なんてこんなもの」と訳知顔にはなりたくない。 <追記>20年ぶりに再見。印象はさほど変わらないが、年を取ったせいかやや「ある、ある、ある」感が増したような。オチを知った上での再見の収穫としては、単なるよき父という印象であった笠智衆が「場末の医者」に甘んじている長男を期待ハズレと感じていたこと。あとは義母が泊まりにきた時の「ズルイ女」原節子の電気を消すシーンの表情が何とも言えず意味深であったことかな。 |
64.別にどうでもいいような普通の話を淡々と描いていて普通に終わる。誰にでもあるようなことだからこそ、考えさせられるし、多くの人の心を捉えるのかもしれない。 映画では長男と長女は冷たくて、次男の嫁はいい人みたいになっているが、むしろ長男と長女のほうが普通だと思う。本人も言っていたが、原節子はずるいだけ。「いい人も悪い人もいないんです。みんな自分の生活があるんです」。その通りだと思う。それでも、やはり、自分のことより他人の事を思える人がどれだけいるのかと考えてしまう。人間の汚さ、冷たさ、そしてわずかな優しさを温かく包み込むような視線で描いた名作だと思う。けっして面白くないが・・・。 【ぷりんぐるしゅ】さん 6点(2004-03-19 06:47:46) |
63.《ネタバレ》 家族は、どういう関係にあろうが、一番身近な存在である。戦後まもない高度経済成長前の日本の家族の様子を、夫婦、実の親子、義理の娘といった関係を通して、丁寧に描いている。子供とはいえ、すでに独立して別の家庭を営んでいることもあり、肉親との関係でも、一見気を使っているが、どこかよそよそしい。実の親だからこそはっきり言えるようにも感じる。逆に、血のつながっていない義理の娘は、遠慮があるのか、むしろ、より優しさをもって親と接している。末の娘は、正直に兄や姉を批判するが、義理の姉は、年齢を重ねると悟ることとなる心境を諭す。一方で彼女は、義理の父には、複雑な自分の気持ちを正直に話もする。家族を構成する各人の思いと葛藤が、物語の進行にあわせて、少しづつ観る者の心に染み渡ってくる。深く静かな印象が心地よい。実生活をベールに包み、男たちの夢とあこがれを壊すことなく、映画の中のイメージを守り通した、原節子の女優魂に乾杯。と言う訳で、世の男達のほとんどは、結婚するならば原節子の演じたタイプの女性を夢見るだろうな。でも、現実は甘くない。運が良ければ、しかも、奇跡的な運の良さを持ってしても、せいぜい三宅邦子タイプだな。そして、ほとんどの男は杉村春子タイプと一緒になってしまう。働きもしないで太っている杉村春子タイプだな。 【パセリセージ】さん [地上波(邦画)] 10点(2004-02-23 13:02:12) |
62.《ネタバレ》 人間の汚さ、ずるさ、優しさを深く描き出した作品。淡々と進むが、ものすごい奥行きを持っていると感じた。そして、あまりに現実的で冷たさを感じるシーンと、優しくてあたたかなシーンの対比が鮮やか。最後の「日が長うなりまして」と笠智衆さんのいうシーン、空間の空き過ぎた部屋の構図が心にしみる。 【アイカワ】さん 10点(2004-02-22 10:54:51) |
61.小津作品初めて拝見しました。この作品の良さは若い頃見ていたらきっと今ひとつ充分に自分の心に伝わらなかったのでは、と思っています。自分もある程度の年齢に達し、結婚し、子供も出来て親になってここに登場するそれぞれの人たちの気持ちがよく理解できるようになりました。結婚すると親の事を決して邪険にするわけではなく自分の生活の事をまず考えてしまいがちになるし、そこには親子だからという甘えもあります。子供というのは親が子供を思う程親の事は考えないものなのですよね。あの時にもっと親孝行しとけばよかったな、、と思う頃には親が亡くなってたりです。普段忘れがちになる親子の気持ちや生きてゆく事の意味などこの作品から教えられた気がします。劇中出てくるセリフのひとつひとつよく親や親戚たちとやりとりしてた言葉だったのでよけい胸に響いてきました。(特に“あんたが大きくなる頃にゃ婆ちゃん生きとらん~”のセリフは、うちの母が今子供たちによく言ってることだ)ラスト近く一人になった周吉が海を見つめているシーンは、三年前に亡くなってしまった自分の父親と重なって泣けてきました。 【fujico】さん 10点(2004-02-16 15:34:03) (良:2票) |
60.良い映画は、いくつもあります…、でも、心に残る映画は数える程度しかありません。この作品は、正しく心に残る映画です。 【Φ’s】さん 10点(2004-02-13 12:43:10) |