94.今年、「断捨離」なんて言葉が話題になった。自分と物との関係を見直して、暮らしや人生を調えていくプロセスのことだそうだ。
人間は、その人生をまっとうしていく中で、様々なことを取捨選択している。
その最初の選択が、実は“おもちゃ”に対してのことなのかもしれない。
もちろん僕も幼少期にはたくさんのおもちゃで遊んだ。お気に入りは、トミカのミニカーや、ダイヤブロックの人形で、この映画の冒頭と同じように、“彼ら”を駆使してひたすらに空想の世界に没頭した。
でも、29歳になった現在、当時遊んだおもちゃで現存しているものは、ほぼすべて無くなってしまった。
どこかで無くし、誰かに譲り、そして捨てたのだろうと思う。
普通、記憶にも留まらないその「選択」を、この映画は最上のエンターテイメントをもってして物語る。
大学生になる“持ち主”が、自分たちをどうするのか。
大学生活に連れて行ってもらえるのか、屋根裏の物置に追いやられるのか、保育園に寄付されるのか、捨てられてしまうのか……。
そこからおもちゃたちのアドベンチャーが始まる。
ピクサーの魔法によって文字通り魂が吹き込まれた“ウッディ”をはじめとするおもちゃたちの躍動感と感情が凄い。
人間たちが現れ、ただの“おもちゃ”として振る舞う様にも、しっかりと感情が滲み出ている。
エンターテイメント性溢れるアドベンチャーを経て、おもちゃたちは、自分たちが持ち主に本当に愛されているという「幸福」を知る。
そして、おもちゃたちが選んだ自分たちの進むべき道。その「選択」が素晴らしい。
何かとの大切な“つながり”は、避けられない“別れ”があってはじめてその真の価値が見出されるものかもしれない。
あまりに愛くるしいこのおもちゃたちの映画に、そういうことを感じた。