20.《ネタバレ》 アデルとヘンリーは母子相姦にでもなりそうなほど支え合っている関係。
ひょっとしてフランクが二人の前に現れなかったら、このまま二人は依存し合い、世間から離れてふたりきり引きこもりの日々になり、ヘンリーも自立したり家族を持つことができず、年老いた母とその年金をあてにして生きる独り身の息子…という未来もあり得ただろう。
そこへ、フランクが現れた。
アデルは愛息ヘンリー一筋だったが、もう一度人生をやり直す相手に出会え、希望に輝き出す。
しかし、ここでかわいそうなのはヘンリー。
父親のように感じられたフランクが、恋人のように大切にしていた母を奪う相手…という葛藤。
ラブラブな二人に、自分は捨てられるのでは…という不安。
そして自分は決して踏み込みうることのない母の性的な部分に、フランクはあっけなく入り込み、夜になると”リズム”を刻んでるのだ…という、思春期ならではの悶々とした思い。
ぶっちゃけ、フランクとアデルは自分ら都合で息子を彼らの逃避行の道ずれにして、学校の初日に授業に出させなかったり、いきなり転校させたり、アデルがやってることは児童虐待案件である。
ヘンリーは普通ならグレちゃいそうな酷い扱いだ。
でも、フランクが現れたおかげで、アデルは彼が服役中もずっと待ち続けていた姿を見てヘンリーはそんな母の様子に諦めをつけられた。
父親のもとで育ち、どうやらパートナーにも恵まれ、フランク仕込みのパイを作るシェフにもなって自立できた。
ヘンリーにとって、こういう展開でしか、乳離れはできなかったのだ。
そして十数年を経てアデルのもとにもフランクが戻り、この母子はハッピーエンドを迎える。
時間と悲しみは費やされたが、フランクのおかげで、母子の本来あるべき姿になれたといううまいオチだと私は思う。
(ちなみに、序盤で母子がスーパーに出かけた時、ハラボテの女性が映っていた時、私はなんか引っかかるものがあった。
なぜここでハラボテ女?
でも、それは伏線だったわけですね。)
少年時代のヘンリ―役の子は実にお顔といい表情といい適役。
母親を大切にするマザコンフェイス、基本的にノーが言えない弱気そうな眉と目元、彼が息子役ではなかったら、点数も下がっていたと言ってもいいくらいの逸材だ。