4.《ネタバレ》 社会派の熊井啓。
彼は人間を見つめることで社会を問う。
決してシステムなどには目を向けない。
鑑賞後、問われているのは私たちだ、という作りである。
原爆の苦しみ、その後の日本での差別の苦しみ。
被爆者の行き場のない気持ちは、女の子の暴行事件を起こしてしまう。
その女の子もまた、日本で差別されかねない地域の子だった。
そして高度成長の日本の置き忘れている問題を表すかのように、
女の子の恋人がもがき苦しむのを、団地の若奥さんたちが鈍感に笑う。
心を失った医者の存在も我々に突き付けてくる。
長崎という場所の特殊性もある。
原爆を落とされたうえに、米軍基地があるのだ。
被爆者の複雑な気持ちは、想像ができないほどのものだろう。
熊井啓監督は、冷徹なまでの演出技術で、怒りを伝えてくる。