2.《ネタバレ》 映画に登場する海底炭鉱跡地のロケーションが、モノクロフィルムの質感と共に生々しい存在感をもって迫る。
金網の向こう側に米軍潜水艦が停泊している佐世保軍港を歩く鈴木瑞穂を撮った移動ショットは明らかに盗み撮りだろう。
ここでも物々しい空気がフィルムを通して伝わってくるようである。
被爆者部落の中を縦移動していくカメラの静かなリズムが、それだけで息詰まる迫力を生んでいる。
ところどころに鳴り響く米軍機の爆音もまた観る者の緊張を決して解かせない。
北林谷栄を襲う投石の雨。それをカメラは傍観しない。
暗闇の中からカメラに向かって飛んでくる石礫。トラックのライトに浮かび上がる彼女に、カメラ側から投げつけられる石礫。
両者の軸線上にカメラは位置し、双方に同化する。
観客もまた、石を投げつける側であり、投げつけられる当事者であるということだろう。