1.■主要な舞台となるのが、雑貨屋奥の和室。襖に挟まれた二間続きで、通りに近い側はちゃぶ台が置かれ一家の食事の場となり、奥の側は高峰秀子の亡夫の遺影が飾られた高峰の寝室となっている。この二間を使った演出が素晴らしい。半分だけ開けられた襖、片方の部屋だけ点されている灯り、この二間を行き来する高峰と加山雄三。とりわけ加山が義姉への思慕を告白するシーンは絶品としかいいようがない。■さらにこの二間は、土間を挟んで台所、二階へ続く階段へとつながっており、この空間には灯りが点されていない。階段へと挙がる加山、あるいは通りを背景にした高峰の姿を逆光のシルエットで捉えることとなる。■と、セットについてしか私は言っていないのだけど、そんなの観れば分かるよ、って話だ。でも、そうとしか言えないっす。成瀬のこうした巧妙なセットの使い方と、それを心得た撮影やら照明やら演技者にただただ感服するのみ、ただただ頭がぐるぐるするだけっす。もちろん、後半、電車での加山と高峰の道行きは名シーン中の名シーン。DVDを買うのは国民の義務だな。