35.《ネタバレ》 怖いのは、矢野中将が個人的には全くの誠実な人であること。清水豊松という「トカゲのしっぽ」を切ったのは、上司による保身のためなどではなく、軍や裁判という仕組みのシステムエラー。こういうのは、時代によるものなのだと以前は思っていましたが、今開催されているTOKYO2020オリパラの組織委員会。大会終了後に事後総括が行われた際には、どんな理不尽に責任取らされる担当者が出てくるかと思うと、悲しいです。印象的だったのは、同房の大西が名前を呼ばれた後、聖書を机に置くまでの間に覚悟を決めるところ。だから、囚人たちが大西を見送るために賛美歌を歌うというありえないシーンがとてもいい。夢のようなシーンだ。これは、10点。所ジョージ版があるのですね。それも見たい。 【なたね】さん [DVD(邦画)] 10点(2021-08-28 20:57:41) |
34.橋本忍の脚本はさすがで考えさせられる内容ではありましたが、所々能天気な音楽が流れたりして拍子抜けしてしまう場面があったのが惜しいです。 【川本知佳】さん [DVD(邦画)] 5点(2014-06-07 21:11:33) |
33.橋本忍らしいしっかりした脚本で見応えがあり、メッセージを伝えるラストも心に響く。 主演のフランキー堺は確かに善良という印象は受けるし、好演しているとは思うけど、 ふっくら健康的で悲壮感はあまり感じなかったかな。そのおかげか、 重たい内容がさらりと見れたけど・・・。力作ですな。 【MAHITO】さん [DVD(邦画)] 6点(2011-08-26 15:16:30) |
★32.《ネタバレ》 こういう映画って、どうしても「反戦」のメッセージを読み取らないといけないと言うような風潮の中で、学生時代を学んだ。当然、その時代に自主上映会で最初に観た時には、「この映画は、反戦を訴えているんだ」と考えながら観た。しかし、今から見るとまだまだ戦後を引きずっていた、あの時から時間が過ぎ、"洗脳"も溶けかかってきた今、これを見ると、この映画の主題は「絶望」ではないかと思えてくる。 激しい戦闘シーンで殺し殺される恐怖を描くのでもなく、戦闘による重症や被爆などによる悲しみを見せるでもないこの映画が、かくも絶望を思わせるのは、表題にもなったこの「今度生まれ変わるときには、誰にも邪魔されることもない、深い海の底の貝になりたい」という言葉に現れている。直前に妻や子供に対して、もう一度会いたいという思いを綴りながら、来世にはもう何ものとも関わりないことを望む。すべてを拒絶する絶望感。「戦争」というよりは、理不尽に対する怒り。いや、怒りという能動的な力もない悲しさ。 同じように戦闘のない戦争を描いた映画、「戦場のメリークリスマス」のハラ軍曹も、同じように死刑になる。彼もまた、自分の行動は、日本軍の軍人としては当たり前の行動だと理不尽を嘆く。それでも彼は「メリークリスマス」と祝いの言葉を他者に与えた。
豊松の絶望感、いかばかりであったか。 【Tolbie】さん [DVD(邦画)] 8点(2011-07-20 15:09:22) (良:1票) |
31.《ネタバレ》 子どもの頃、この映画を最初にときは暗い、怖い、恐ろしい映画だと思った。数年後その怖いもの見たさにまた見た。このときは主人公のフランキー堺がなぜ死刑になるのか、悪いのは上官なのにと腹立たしく思った。 大人になって、ビデオで3度目を見た。このときは戦争はなぜ起こるだ、戦争が憎いという反戦の気持ちで見た。そして今回、DVDで4回目を見た。 橋本忍氏は、名作と言われる多く日本映画の脚本を担当してきた押しも押されもせぬ名脚本家である。その彼が唯一とも言えるほどめずらしくメガホンもとったのが、この「私は貝になりたい」である。(後にリメイクされた映画は他の監督作品) 私がこの映画を見て最近思うことは、人間を理解することの難しさ、特に国家や民族の壁を乗り越えて理解し合えることの難しさ、そしてさらにそれが戦争という溝を間に挟めば・・・。 上官の命令は天皇陛下の御命令、従わないのは非国民、日本人にはあるまじき事という当時の日本の軍国主義精神が、欧米人に理解できるわけがない。また日本軍隊には、「捕虜は絶対に大切に扱わなければならない」というジュネーブ条約の精神が理解できるはずもなかった。 そうしたすれ違いの中で行われた軍事裁判、哀れなのは上官の命に従った2等兵、「私は貝になりたい」という想いはそうした中で生まれたのだ。 戦争から遠くなってしまった若い人にこそ、見てもらいたい映画だ。 【ESPERANZA】さん [映画館(邦画)] 8点(2011-02-27 08:39:18) |
30.戦争行為や自国軍隊の有り方はもとより、勝者が正義面する軍事裁判の理不尽さを見せ付けられます。天が罰を下せるのなら何千何万何十万の非戦闘員を爆弾で殺戮した米兵も絞首刑になるのです。当人や残された肉親が味わう思いを何時の世代までも語り継がねばならない事をエンディングに思いました。 |
【きーとん】さん [DVD(邦画)] 6点(2010-08-08 13:03:24) |
28.裁判にも欺瞞を感じるが、もともとは陸軍の上官たちの横暴が招いた不幸で、軍国主義時代のカースト制への批判である。これに近い世界は、現代の企業にも残ってるけどね。部下にやらせて責任を押し付ける。特に不況になると、その色が強くなる(愚痴)。時代や世相が変わっても、組織における人間関係はあまり変わっていない。勘違いしている上官と上司は同類です(また愚痴)。あんな上官にだけは、なりたくない。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2009-08-25 21:37:26) |
27.悲しくて、辛くて、泣けて泣けて、どこの町にでもある平凡な散髪屋の主のどうしようもないこれ以上不幸なお話はそうは無いと思います。夫は必ず帰ってくる事を信じて最新の散髪台を導入して張り切って店をきりもりしていた奥さんが余りにも哀れで幼い子供とともにこの先どうなるのか気がかりでなりません。 【白い男】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2009-08-16 12:42:12) (良:1票) |
26.終盤、教誨師に理不尽を訴える主人公。その目にじわじわ浮かんでくる涙。こちらも涙なくして見られません…。 【次郎丸三郎】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-06-12 01:21:06) |
|
25.《ネタバレ》 タイトルとラストシーンが何よりも強烈です。これだけで、ドラマとしての一定水準は約束されたようなものですね。ストーリー自体があまりにも有名となってしまった作品ですが、この作品の本質的テーマは何なのかと考えると意外と難しい。私は、組織の中に組み込まれて自我を喪失することへの恐怖と警告なのではないかと考えています。あと、映画としては、ところどころ妙にホームドラマチックで緊張感が抜けてしまうのが難点。 【Olias】さん [DVD(邦画)] 6点(2009-05-15 02:00:07) |
24.《ネタバレ》 見る前から多少展開は分かってたし辛い展開ってのは覚悟してましたが・・・。 戦争さえなければ幸せに暮らしていけたのに、無理矢理戦争に連れて行かれ、アメリカ人を傷つけただけで死刑とか、あまりにも酷い。結局は下の人間が押し付けられてしまう。 戦争ってのはどこまでも憎い。 突然の死刑執行で、今までの希望を全て絶望にしてからは心を突かれた。そしてラストの手紙を読み上げるのと死刑台に向かう姿を見てもうどっと涙が出てしまった。主人公は明るい性格でずっと笑顔で話をしてたりして、それが余計に悲しい。 戦争の悲惨さを物語るのには十分な傑作。でもテーマがかなり重いので、軽い気持ちで見ると後悔するかも。 【ラスウェル】さん [DVD(邦画)] 9点(2009-03-20 17:21:55) |
23.橋本忍自身によるテレビ用脚本の劇場版だが、撮影・音楽・美術など東宝黒澤組の錚々たるスタッフの支えによって、映画として差別化が図られている。縦構図を多く取り入れ、画面に奥行きをもたせると共に、随所で丹念な長回しを多用してフランキー堺他の演技の持続から迫真性を引き出している。最期の笠智衆との静かな対話場面などがその白眉といえるだろう。村木与四郎氏による床屋の細やかな内装美術とその画面内配置は、主人公夫婦の人となりや戦中戦後の生活実感をよく表現し、対照的に巣鴨プリズン内の殺風景をより際立たせている。暗闇に浮かぶ絞首台の俯瞰ショットとハイライトも強い余韻を残す。そうした「善良なる」主人公への感情移入や共感を促す作劇や演出はそつない故に、映画自体の宿命ながら「反戦」という理性的主題論においては非常に弱い。例外的エピソードに基づくドラマは横浜裁判という国際問題のもつ欺瞞性を日本のヒエラルキーの問題へと矮小化させ、「戦犯」裁判の本質を見誤らせる危険を多分に孕んでいる。 【ユーカラ】さん [ビデオ(邦画)] 5点(2009-02-09 21:45:27) |
22.《ネタバレ》 これは真に迫った物凄い作品だ。 日本軍の末端たる二等兵が、上官からの命令により人を殺し、その罪が問われて死刑に処せられる。 縦社会の日本軍内で、上官に逆らうことなどできようはずもない。 つまり、フランキー堺演ずる主人公は、死刑というものから逃れようもなかったわけだ。 何たる悲劇。 戦争の愚かさと残酷さを、深刻に考えさせられた。 だが、何分、後味が悪すぎる。 戦争の何たるかについて真剣に考えさせられるし、フランキー堺の名演もあって、素晴らしい作品だが、とにもかくにも後味が悪すぎる。 あー、辛い。 【にじばぶ】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2008-04-10 23:41:12) |
21.戦争がいかに多くの悲劇を生み出すか。 政治家はこの映画を観て憲法9条を再度論ずるべし。 【12times】さん [DVD(邦画)] 9点(2007-09-01 00:21:16) |
20.《ネタバレ》 BC級戦犯の勉強をしていて資料のひとつとして観ました。(資料施設で資料として閲覧しましたが、視聴環境に該当するものがないので「DVD鑑賞」としています)。戦犯の皆さんの遺書(「世紀の遺書」)も何度も読み、ガリ版の巣鴨新聞も多くの手記も読みしてきましたが、この映像はディテールが非常に正確に表現されています。例えば「死刑になった人たちは、実は生きていて北海道で使役している」などの噂が死刑囚房で広がる。アメリカの祝日の前日の早朝に処刑が行われる様子(祝日にゆっくり休めるように「済ませておく」んですよ・・)。死刑囚が処刑房におくられる時におこる「賛美歌での送り」。特に賛美歌での送りは文面ではなく実際に男性のみの涙声での「主よみもとに近づかん」を聴くと鳥肌が立つ思いです。原作と言われる本を書いたK氏は毎朝、死刑囚が読経したり、賛美歌を歌う様子に嫌悪感を露わにし噂に一喜一憂する死刑囚に対してかなり冷めた記述をしていますが 戦後直後に収監され「戦後社会」を知らぬ戦犯と、何年も逃亡を続けて「戦後を生きた」K氏との違いでしょう。この映像で描かれているのは前者の戦後を知らない戦犯で思考は戦中の軍隊生活のまま、不条理の中、処刑されるという複雑さを抱えています。 もしよければ図書館で「世紀の遺書」をお読みいただくと、彼らの苦悩を知ることができると思います。城山三郎氏ではないですが、日本の組織社会は戦犯をうんだ軍隊組織とあまり変っていません。組織のの中で損をする人・得をする人・上手く逃げる人・・あなたの周りも、あなた自身も見つめてみてはいかがでしょうか? 【グレース】さん [DVD(邦画)] 9点(2007-08-18 21:03:27) |
19.戦後の民主主義における社会について、丁寧に且つ力強く描くことによって、観ていて物凄く考えさせられたと共に観終わった後、フランキー堺の好演もあって何とも胸に迫る思いで一度観ただけでいつまでも心に残る。床屋を営む普通の人が何故?こんな酷い目にならなきゃならんのだという気持ちになりました。それにしてもフランキー堺の演技は本当に素晴らしい!好き嫌いは別として一度は観ておいて損のない作品だと思います。 【青観】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2005-08-12 22:56:13) |
18.田舎の床屋の親父がある日突然赤紙一枚で召集され、上官の命令は天皇陛下の命令という号令と共に戦争犯罪人となる。確かにこの男は不運といいたい気持ちは判るし、助かりたいという気持ちも判るが、余りにもエゴ丸出しで共感は出来ない。自分の人生を省みる気持ちが13階段を登る時まで少しも感じられない。階段を登り死の直前まで自分は何になりたいだなんていう逃避思考の人間に同調できない。彼の上官のように、自分の罪は罪と認め、死を迎えるまで他人のために尽くす、こんな人間こそ生きる価値がある人間だと思う。 【亜流派 十五郎】さん [ビデオ(字幕)] 3点(2005-05-16 21:21:03) |
17.《ネタバレ》 この映画を最初に観たのは昭和30年代の半ばでしたが、その当時と比べて日本人の意識はどの程度変わっているのかと言うと基本的な部分は全く同じようにも思えます。上官に対して「あなたは捕虜の殺害を命じた。」で死は免れる。兵卒に「あなたは捕虜を殺した。」で絞首刑。それで日本の軍隊での兵卒が上官の命令に従わずに捕虜を殺さなかったらどんな目に遭うか(軍法会議にはかけられないけれどリンチに遭うでしょう)ことは全く考慮されないことを不条理、不運としてこの床屋の言い分を受け入れてしまうところに恐ろしさがあって、それが軍隊でなくても多くの組織での組織防衛のためのルール破りの源泉になっているのですから。だからこの不運な男が汚物として扱われるのが当然とに意識が整うときまでは真の意味での自立などは難しいのかも知れません。恐らく日本人が戦犯裁判に関わっていたらこの不運な兵卒は死刑を免れたでしょうけれど、そんなことで責任を上にも下にも追及しない社会が多くの道徳的退廃を招いているようです。本当はこの不運な男の遺族とかが上官に対する訴訟とかを起すことが正論なんですが、それを抑圧する社会構造が問題の根源のようです。 この裁判の正当性とかへの疑問は別として裁判を通じて主人公は行為と責任について何も重要なことを学んでいないので、せめてまた人間に生まれかわることは勘弁して貰いたいと言うのは酷なのでしょうか。 【たいほう】さん 6点(2004-11-01 00:51:51) (良:1票) |
16.いま、この映画を観終わった僕が感じている怒りは、一体何処の何に対して、誰に対して怒りを感じているのか、僕自身少しも理解できていない。では、日本に?命令を下した上官に?死刑の判決を下したアメリカ人に?どれにも当てはめる事が出来そうな気がする。だけど、その中の何かに怒りを絞ったとしてもどうにもなりそうにない。もし、嘘だとか権力によって殺されたのなら、それならば簡単に腹を立てる事が出来る。でも、この話の中に嘘はないし、権力もない。あるとすれば、言葉の違いか文化の違い。だからこそ怒りのぶつける場所が見当たらない。出来る事ならアメリカ人に怒りをぶつけたい。そうすればきっと少しは気が楽になる。でもそれがまた、他国への怒りに繋がり、戦争への引き金に繋がって行きそうで怖い。憎しみは憎しみを呼び、憎悪は憎悪を呼び、そして怒りもまた、怒りを買う。これの繰り返しによって、いまこの時も世界中の何処かで戦争が起きている。だからいま、過去のミスをミスで終らせないように、同じ過ちを二度と繰り返さないように、いま、僕が抱いているこの怒りの感情を、ゆっくりと時間をかけて頭の中で整理し、しっかりと理解し、静めて、胸の奥に秘めておきたいと思う。そして、この感情を抱かせ、考えさせてくれたこの映画に深く感謝している。 この映画は日本人が目を背けてはならない、戦争が残した傷跡が、しっかりと、深く刻み込まれた名画だった。 【ボビー】さん 8点(2004-10-31 21:21:30) (良:2票) |