15.《ネタバレ》 新聞記者が主人公でこのタイトル、鑑賞前はどんな内容か想像もつかなかったが、マスメディアがいかに「英雄」を仕立て上げていくか、そしてメディアの情報操作によっていかに大衆は左右されるか、というところが物語の要である。裏取引やマッチポンプを駆使しまくり、一世一代の大スクープをものにしようとするゴロツキ記者の存在は、マスメディアという権力の欺瞞性と無責任性を象徴しているし、また彼の記事に踊らされる大衆の愚鈍さも強調され過ぎるほど強調されている。しかし、大挙訪れる野次馬相手に商売人が増えるのはわかるが、いくらなんでも一人の人間が生きるか死ぬかの瀬戸際にいるのを横目に遊園地まで建設して事故現場がレジャーランドと化していく展開は、あまりに非現実的ではないか?そこはアメリカらしいダイナミックなジョークとして割り切るべきなのか? やはり腑に落ちないのは、他の方も書いているように、名誉欲の塊で人情や友情などクソくらえという人間だったはずの主人公が、終盤になって被害者を必死で救出しようとジタバタし、挙げ句の果てに肝心な締め括りの記事をすっぽかしてまで被害者を慰めに行くという豹変ぶりである。彼のスクープ計画は被害者が生還する前提だったからというのは理解できるが、死んだならまた計画変更してスクープを創作すればよく、彼はそういう転んでもタダでは起きない破廉恥人間として描き切った方がスッキリしたのではないか。 ラストは主人公の死を想像させるが、死ぬほどの深手を負ったようにはとても見えなかったので(刺されてから大勢の人と会っているのに指摘したのが一人だけ)、その後、病院のベッドで目を覚ましたのであろう。 【あやかしもどき】さん [DVD(字幕)] 5点(2021-01-11 17:09:50) |
14.《ネタバレ》 冒頭軽薄な記者登場からのビリー・ワイルダー一流のコメディ感とタイトルのギャップに戸惑っていたものです。え、どういう話?しかし、カーチスと保安官が手を組んでからの流れは、確かに「地獄」。鉄火場をてこにして、次のステージに進もうとする輩ってどんなときにもいるんだな(今の日本にもね)。たくさんの人の大小さまざまな私欲が集まったところで、カーチスという触媒を得て、一気に進む負の化学反応。一人の気の毒な男をじっくりと遠回しにして殺すカーニバル。カーチスは、レオのいまわの際に、涙流したんですよね。これはもう本当の悪党だよ。 【なたね】さん [DVD(字幕)] 9点(2020-03-16 09:54:57) |
13.功名心しかない新聞記者と彼の記事に踊らされる大衆に対するビリー・ワイルダーの冷ややかな視線をイヤと言う程感じます。あの現場に観覧車が回っている光景に苦笑してしまうのですが、近所のスーパーに昨日まであったトイレットペーパーがスッカラカンになって唖然としたのを思うと普遍的なヒトの感情なのかと思えます。先月103歳での大往生を遂げられたカーク・ダグラス(合掌)の作品を支配する存在感が光る秀作。 |
12.《ネタバレ》 ビリー・ワイルダーと言えばどうしてもコメディが有名ですけど、実は人間のエゴや赤裸々な行動を描かせても天下一品なんです、要は何でも出来ちゃうということです。まだスターリンが生きてて朝鮮戦争の真っただ中という時代に、ここまで商業ジャーナリズムの偽善性とそれに扇動される大衆の愚かさをあからさまに描くとは大したものです。邦画では長い間「新聞記者と弁護士は正義の味方」というステロタイプが蔓延っていたことを思うと、日本映画の問題意識の欠如を嘆かずにはいられません。もっともハリウッドでは、フランク・キャプラの『群衆(41)』という本作と同様の視点で撮られた映画もありまして、キャプラもワイルダーと同じくコメディ畑の監督なのが面白いところです。主人公の野心ギラギラの新聞記者がカーク・ダグラスだというところで、もうこの映画が傑作になる運命だったんでしょう。脚本もワイルダーらしい巧緻な構成が光りまくっています。冒頭で押し掛けた田舎新聞社の編集長を「ズボンを履くのにサスペンダーとベルトの両方を使う男は騙せない」と評したダグラスが、一年後には同じスタイルになっているのは脚本の芸が細かくて笑わせてくれます。最初のころは半分は善意を持って集まってきた民衆が、だんだんイベント目当ての野次馬に過ぎなくなり、特別列車まで仕立てて押し掛けるエスカレートぶりの異様さ、もうここにはワイルダーの大衆に対する嫌悪すら感じます。ちょっと不満だったのは、最初は冷酷・無慈悲な人間だったダグラスが途中から生き埋めになったレオに同情するようになるところがいささか唐突なような感じを受けるところです。ラストになると完全に良心に目覚めて勧善懲悪っぽい幕の閉じ方で、これは例のヘイズ・コードや大スターであるカーク・ダグラスへの忖度があったのかもしれません。そこら辺は、時代が違えどもメディア報道をテーマにした、ジェイク・ギレンホールの『ナイトクローラー』とは偉い違いです。まあ『ナイトクローラー』はリアルではあるけどあまりにやり過ぎ、とんでもないお話しですけどね。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2020-01-31 22:24:24) (良:1票) |
★11.《ネタバレ》 いやあ、凄い!流石はワイルダー監督作品だ!社会に対する皮肉、新聞者の実体、人間のわがままぶりを見事に描いている。洞窟内で死んでいく男の女との終盤戦の攻防、女の首を絞めた後に刺され、それでも最後まで己の信念を貫き通して元の新聞社で倒れるカーク・ダグラスの演技の凄さ、ワイルダー監督、何を撮ってもどんなジャンルの映画を撮っても平均点以上の映画にしてしまうのが凄い。ワイルダー監督の作品の中にあって、知名度の少ない作品ではあるけど、今時の社会派の映画ではなかなか味わえない素晴らしい傑作! 【青観】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2016-11-27 20:19:31) (良:1票) |
10.いやー、これは地味に傑作!! 少々長く感じたのはご愛嬌、終盤に迫り来るサスペンス風味は独特の魅力あり。 音楽もそれを盛り立てる。 カーク・ダグラスが渋かっこいい。 アゴの割れ目が凄い。 そして、今も存命なのが凄い。 これって、隠れた傑作。 ジャーナリズムに対して、徹底的に皮肉を込めて描いている。 その皮肉の徹頭徹尾ぶりに、ビリー・ワイルダーの執念さえ感じた。 【にじばぶ】さん [DVD(字幕)] 8点(2016-09-08 00:47:05) |
9.《ネタバレ》 主人公の新聞記者はよほどのワルなのか、それとも頭がすごく切れて先を見通せるのか、救出を遅らせ落盤事故のニュースを拡大させる。しかしもう少しでというところで被害者も当の本人も死んでしまう。被害者の冷酷な妻に憤慨したのは改心したからではないだろう。最後にはどんなふうにニュースを締めたかったのだろうか。「ベルトとサスペンダーの両方をしている人は騙せない」とか「固ゆで卵より固い」など辛辣なことばが多く遣われたり、野次馬が増えるとともに入場料が上がっていくのもおもしろい。傑作の多いビリー・ワイルダーの映画の中でも指折りの名作だと思う。 【ESPERANZA】さん [DVD(字幕)] 9点(2015-07-14 16:21:12) |
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8.《ネタバレ》 面白いな~、カーク・ダグラスの演技力(魅力)でグイグイ引っ張っていきますねぇ~~。今から60年以上前のものだけど今でも十分通用する内容で、いろんな意味で見応え十分です。バタッと倒れて終わり!というのも斬新で、なかなかのものでゴザイマシタ 【Kaname】さん [DVD(字幕)] 8点(2014-12-01 01:41:43) |
7.6人しか投稿してないということは知名度は低いのでしょうか?邦題は酷いですがなかなかの傑作なのでもったいないですね。みんな機会が会ったら見た方がいいですよー。主役のカーク・ダグラスは初めて見ましたが演技力が抜群なのでグイグイ引き込まれてしまいますね。さすがに親子だけあってマイケル・ダグラスとクリソツで遺伝子の力すげぇって思わされます。(まだご存命なようでビックリしました。)お話ですが、何年か前にあったチリの落盤事故でも不倫だのなんだのお祭り騒ぎになっていたことが記憶に新しいため、なかなかリアルな話に感じれて面白かったです。締めのシーンが好みじゃなかったのでもう少し違った感じだったら10点あげてたかな。 最初に現場に現れた家族が段々とその場に溶け込んでいくのが笑えました。 【映画大好きっ子】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 23:34:25) (良:1票) |
6.《ネタバレ》 ああ、この映画からずいぶんたったが、今でも通用するではないか。ビリー・ワイルダーが先見性があったのか、今でもジャーナリズムは商業的なのか。後者だな。そういう意味でもなかなかの佳作。 【min】さん [DVD(字幕)] 8点(2013-08-16 21:44:10) |
5.《ネタバレ》 今で言うオリバー・ストーンが社会を皮肉ってるような感じかな、ビリー・ワイルダーの痛烈な皮肉映画。ある新聞記者が特ダネを見つけてしまったが為に過剰な宣伝をしてしまったが為に結局は自分を追い詰めて堕ちちゃうんですよね。この辺は昔も今も全く変わらずねつ造してもいつかはボロがでてばれちゃうんですよねー。で、その新聞記者を目力があるカーク・ダグラスがやってるから余計に迫力を感じてしまって雰囲気が異様。コメディ映画で一世風靡したワイルダーとは大きくかけ離れたジャーナリズムの真髄を見せてくれた映画でした。 |
4.《ネタバレ》 彼の作歴上では「サンセット大通り」に負けず劣らずけれん味溢れた一本だと思う。特に寂れた町に集まる・散らばる群衆を描いた一連のシーンははっきり言って馬鹿馬鹿しいくらい大げさな表現に終始してしまっていて可笑しい。(ま、その位「真実を見抜けない」愚かな大衆を描いている=アメリカ人ではない監督ワイルダーの視点を感じるのだけど)あとは俳優カーク・ダグラスの凄い「目力」を堪能しよう。息子マイケルにもその資質は引き継がれている。が眼にいろんな感情がこもっている分、やっぱりお父さんの方に迫力を感じる。下の方も書かれているがそこまで悪漢を演じていた彼が改心するに至る流れが弱すぎる事、あとは彼以外の俳優に魅力が足りないのがちょっと惜しいかなという気がするが、この主題に関しては制作から50年以上経った今でも理解・共感出来るはず。隠れた佳作。 【Nbu2】さん [DVD(字幕)] 8点(2011-06-05 17:03:31) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 人は他人の不幸で利益を得たり楽しんだりしている。しかも汚いことに、そうしたマネをしていながら「自分は善人として行っている」と信じて疑わないのだ。 ニュースを伝えるメディアがそれが最も露骨に表れるので本作でもそこにスポットしているが、この醜い心は人間に普遍であるといえよう。ある意味、自分のやっていることが汚いことであることを自覚出来ているカーク・ダグラスの方がまっとうだとさえいえるかもしれない。 【θ】さん [DVD(字幕)] 8点(2010-08-06 00:26:26) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 何にも無い田舎町に車が一台やってきて、それを皮切りにあっという間にワンさと人が押し寄せ楽団や遊園地まで開かれお祭り騒ぎになり、事件が終結すれば蜘蛛の子を散らすようにまたまたあっという間に消えて行く野次馬の演出が見事です。最初にやって来た一組の野次馬以外の顔を見せないことで、この不特定多数の群衆が事件の当事者と無関係な人々であるいうことも強調されています。また、騒ぎを煽った張本人カーク・ダグラスが突如として良心に目覚めるところはキャラクターが違うのでは?と思いますが、改心したあたりから走り出す異様に暗く重々しい雰囲気が辛辣で、メディアや権威といったものを痛烈に皮肉っています。カーク・ダグラスがバッタリ倒れて〝The End〟の文字が出てくるラストも衝撃的です。 【ミスター・グレイ】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-11-11 18:32:40) |
1.《ネタバレ》 他人の事故で盛り上がる大衆の物語。生き埋め事故に遭遇したジャーナリストが、その救出をドラマチックに演出していくの。それに乗ってくる大衆の興奮のエスカレーションぶりが、さりげなくもすさまじい。現場に集まってくる野次馬たち。そのうち入場料を取るようになり、人混みの向こうでは風船売りが仕事を始める。列車で次々と「人の不幸を黙って見ていられない心優しいアメリカ人」たちが訪れ、一番乗りした人はそれを強調する。救出現場のそばに遊園地ができて人は遊び、助からなかったと知ってはさめざめと泣く。これはまだ新聞がメディアの中心だった時代の話で、現在のテレビ時代はもっと過激にカーニバルが展開している。これだいぶ昔に見たんだけど、この辛辣さが強烈だったんで、その後ワイルダーの喜劇を見ても、どこかひんやりしたものを常に感じてしまうのだった。原題が「THE BIG CARNIVAL」で、ひどい邦題付けたなあと思ってたら、ワイルダーの付けた題「ACE IN THE HOLE」を、不入りで会社が変えたのだそう。邦題はけっこう忠実に訳していたわけだ。ワイルダーは対談本で「ノータリンめが」と題の改変を憤慨してたが、凡人の私には「ビッグ・カーニバル」のほうがいいように思うけど。 【なんのかんの】さん [地上波(吹替)] 8点(2008-02-07 12:24:46) |