88.《ネタバレ》 いま見終りました。素晴らしい作品です。
まず1つ言いたいのはイデオロギーうんぬんと言う前にこの映画は1級のエンターテイメント作品ですね。
主人公は奇異な行動で知られる中学の理科担当の教師で昔は爽気を持って授業をしたが今はまったくやる気が無い。
そんな時に事件が起こる。天皇に会わせろと62式機関銃(たぶん)を引っさげ彼の担当のバスをバスジャックする老人。
それを阻止しようとする頑健でタフで有能な角刈り警官。
彼は否応無しに渦中へ巻き込まれますが反面そのどれもが彼にとっては非日常的で刺激的だった。
よし!俺もやろうと決意する。
原子力発電所に忍び込み核燃料を盗み出し濃縮しやがて銀色に輝くプルトニウム239を精製するのに成功する。
このプルト二ウムを作ってゆく過程が凄いです。。。これでよく映倫通ったもんだと思いました。
それぐらいリアリティーたっぷりです。
兎も角主人公は原爆を完成させ国家を相手に交渉を始めますが
実は自分自身がこの国の戦後体制に冒されて居るのを知る。
この国に不満は有るがじゃあこの国をどう変えたいのか?
それは主人公自身にも結局分からない。仕方なく部屋に帰り所無く原爆を抱えて眠る主人公。
この辺りの演出も非常に素晴らしいですね。
いうなれば原爆作成は彼の自己表現であり他者との繋がりを作る道具だったのかも知れません。
その繋がりに選んだのがバスジャックのタフな警官といつも聞いていたラジオ番組のディスクジョッキー。
しかし対立と葛藤の中、最後はそのどちらも死んでしまう。
また彼自身も放射能被爆により先が短い事を知る。。。
しかしまあ、この監督さんは凄いですよ。まったく。
自分が拘りたい所は徹底的に拘りますがその分粗も多い。
後半のカーチェイスやヘリ襲撃場面、ムチャな原爆奪還、「細かい部分はええんじゃ!!」っていう監督さんの声が聞こえて来る様でした(笑)
ラストの原爆爆破シーンは同時の映像技術では難しかったのでしょう。これで良かったと思います。
ともあれこの戦後社会を一刀両断した切り口の鋭さをはじめ
これだけの内容を1本の映画にみごと収め切った事には驚嘆を禁じ得ません。
このジャンルでは正に日本映画史に残る作品だと思いました。