6.《ネタバレ》 シベリア抑留の厳しさがどれくらい真に迫っていたかには疑問符がつくものの、家族と離れ離れになった男たちの苦悩は伝わってきた。
決して希望を失わない、二宮君演じる山本に敬服。前向きに生きようとする彼の言葉は、どこか有島武郎の「小さき者へ」を思い出させる。
山本のダモイが果たせないことは予想がついたものの、やはり帰してやりたかった。
彼の死を知った北川景子演じるモジミの慟哭は有無を言わせぬ迫力があり、「嘘つき!」と叫ぶ彼女の心の痛みが、スクリーンを通じて胸に突き刺さった。
そしてその後の遺書を記憶するシーン。
これは予想外だった。
確かに、文字を残すことはソ連の罪を暴露することにつながる恐れがあり、当局としては絶対に許せないところだろう。
没収につぐ没収。
ならば記憶するしかない。
山本を慕う仲間たちの思いがやるせなくて美しくて、泣けて仕方なかった。
安田顕も良かったが、中島健人君が特に良かった。読み書きを教えてくれた山本に対する思いが伝わる、本当に胸が熱くなるシーンだった。
最後の山本とモジミが海岸で二人並んで、思いを伝え合うシーン。北川景子の表情が抜群で、これをラストに持ってくるのも憎い演出。
そこで終わっても充分戦争のむなしさや、愛する人を思う気持ちの尊さは伝わっていたと思うのだが、なぜか二人の息子として登場する年老いた寺尾聡。
これは寺尾聡の無駄遣いだし、蛇足だよ。くどい。
もう少し観る者の感性を信じて欲しかったかな。
でも、いい映画だった。