37.《ネタバレ》 コメディを軸にしたホームドラマはハリウッドの得意分野ですし、日本人も含めて需要は高いと思います。
私自身も肩の凝らないこの様な作品は嫌いじゃありません。
コメディとハートウォーミングの比率を序盤では前者に終盤にかけて後者に比重を高めていくのも平常運転だと思います。
定番と言えますが畳み掛けやアップテンポな展開にはせずに舞台をハワイにした事でレイドバックして見やすい印象になっています。
スコッティの友達に謝りに行った時のマットの態度で彼のダメ親父っぷりは直ぐに分かります。
家庭を顧みない彼をはじめ娘達や昏睡状態の妻も自分勝手に過ごして来ました。
鉢植えの花を誰も気にしなければ枯れてしまうのが当然の様に、家族が好き勝手にやっていれば家庭はバラバラになってしまいます。
もしエリザベスが事故にあっていなかったらどうなっていたでしょうか。
キング家は勿論、スピアー家も巻き込んで崩壊していたのは確実でしょう。
しかし、皮肉にも事故をきっかけにキング家は纏まって行きます。
要因は弱音を吐いたり感情的になりながらもマットをはじめ娘達も家族に視線を向けた為でしょう。
マットやアレックスが意識のないエリザベスに対して罵倒します。
また、アレックスのバカ彼氏シド(愛すべきキャラクターです)とフラストレーションを募らせながら会話したり、妻の尊厳死の報告に義父を訪ねに行ったら容赦無く罵られたり、妻の浮気相手をみんなで探しに行ったり等の数日間の彼の行動は数年間家族を放っておいたツケにより散々な結果ですが、真剣に家族とその周辺を含めた問題に向き合っているシーンにもなっています。
死に直面しているエリザベスがいるキング家の絆が深まるのに対してスピアー家がボロボロになって行ったのもまた皮肉です。
そんなブライアンへの複雑な感情もあったのかもしれませんが、受託者であるマットは先祖から託された土地の売却を辞めてしまいます。
いとこのヒューに「家族だろ」と言われますが、壁に掛かっている会った事もない様な何人もの先祖達の何枚もの写真を見て彼等先祖達と未来の子孫達を含めてハワイに住んでいる全ての人々が自分の『家族』なのではないかと感じたのかもしれません。
ですからマットには一族だけの私益に応える選択は出来なかったのではないでしょうか。
自分達一族だけが好き勝手にやっていればハワイという『家族』がバラバラになってしまうという事を妻の事故による今回の件から学んだのかもしれません。
エリザベスの散骨のシーンを挟んで、一度失ってしまったら二度と取り戻せない美しいこの島の財産とも言えるハワイの風景の数カットと、戻っては来ない彼女の死によって繋ぎ留められた3人の家族が一枚のブランケットと2つのアイスクリームをシェアしている光景を対比させています。
双方から穏やかな美しさと静かな希望を感じさせてくれる一連のシークエンスはとても印象に残りました。