63.《ネタバレ》 日本アカデミー賞では、主演女優賞以外の演技賞を総なめしたようだが
この映画では、本当は特に主演といえるほどの役柄はないのではないだろうか?
子役の位置づけも重要だし、複数のエピソードが織り成す人情話であって
どのエピソードがメインかは見方によって異なる。私的には、この映画
の骨格になっているエピソードは、六子の集団就職と、母親への誤解を解かれて
の帰省だと思ってるので、主演女優は掘北真希だと考える。汽車に乗って上野駅
に到着して、東京を初めて目にしてその象徴が建設中の東京タワー。
そして、ラストシーンは、六子の帰省と夕日に浮かぶ完成した東京タワーを見上
げる人々。東京に住む人は何代か遡れば、多くが東北方面か上信越北陸方面から
の上京者であり、いまでこそ、東京駅がすべての発着点だが、当時の上野駅は、
故郷と東京を結ぶ特別に意味のあるノスタルジックな駅だった。
私自身は、東京の出身だが、親の出身が上信越方面なので、何度も帰省に同行し
たことがある。やはり、新幹線ができる前の上野駅は、東京駅とはまったく違っ
た雰囲気があった。上野駅から帰省した経験を持つ人にとっては、
この映画は最初のシーンで一挙に昔のあの時にタイムトラベルしてしまうに違いない。
脚本、VFX、音楽、キャスティング、演技などなど、すべてが見事に結びついて、
昭和のファンタジーを完成させていた。ラスト近くで、竜之介が淳之介に、
いずれヒロミさんのカレーを食べれるようになるとか言っていたような気がする
が、これは続編があることの暗示なのだろうか?