9.《ネタバレ》 202分という上映時間の割には、長さを感じさせない映画に仕上がっており、この点に関しては大いに評価したいところだ。
原作は読んだことがないが、その膨大な原作を練りに練りこんで脚本化して、一人の男の半生を興味深く描き込むには相当な労力を要したことだろう。
飽きるということは全くなく、むしろもっともっと色々なことを深く描いて欲しかったというところが正直な感想。
ただ、つまらないという印象は全くないが、男の人生・生き様に関して、深く感銘を受けるというものもなかった。
実際の事故や人物をベースに描いているので、深くえぐり取ることができずに、ぼやかさざるを得なかったのかもしれないが、ストーリーを流すことを主眼に置きすぎて、ポイントが少々ズレてしまったところがある。
企業も政治も何もかも「どろどろ」としているが、その「どろどろ」が上手く活きていないような気もする。
上映時間だけは長いが、長ければそれだけ深く描けるということはないようだ。
観客に訴えたいポイントを“核”にしなければいけないが、その“核”が少々見えてこない。
『苦しみの果て、悲しみの果てのアフリカの地で恩地が何を見て、何を感じたのか』が自分には深いところが分からなかった。
恩地とココロを通わして、何か同じことを感じ取ったり、考えることができなかったのは自分が幼すぎるからだろうか。
「逃げずに立ち向かい戦い続けた男」「波から落ちないように戦い続けた男」「戦うことから逃げてしまった男」など、様々な男の生き様と、その男を支え続けた女の姿が描かれている。
自分自身の性格が「逃げずに戦う男」ではなくて、「戦うことから逃げてしまう男」なので、本作の“核”が感じ取れないのかもしれない。
兄が妹に対して、「生きている時代が違うから分からない」というセリフがあったと記憶しているが、まさにそういう感想だ。
ただ、人類が生まれた地であるアフリカという場所に立って、再び生れかわれる、再びスタートできるというような気持ちがあったのかもしれないというようなことは感じられた。
自分自身との苦しい戦い、悲しみの果てにも人間はやり直せるというようなメッセージをもっと本作から深く感じ取りたかったところだ。