295.《ネタバレ》 マニュアル主義、プロファイリング、官僚主義、責任のなすりつけ、中間管理職の限界、ネット犯罪、サイコ犯罪、少年犯罪、犯罪とゲームとの同一化、家族間の乖離、男と男の友情など、様々なことを盛り込んだ割には意外とまとまっていることに驚かされる。
ラストの重傷及び敬礼が余計という気がしないわけではないが、なんとかして盛り上げようとする製作者の意図であり、“映画”としてはぎりぎりでアリというところではないか。
稚拙で単純という手法かもしれないが、目くじらを立てるものでもない。
現場や所轄を無視して、マニュアルにこだわり、上層部の意見にふりまわされる挙句に、全体像が掴めず、誘拐捜査が難航する辺りはなかなか面白い。
「羊たちの沈黙」のように小泉今日子に相談するシーンがやや突飛すぎるかもしれないが、マニュアルや既存概念を超えてみろというメッセージとも受け止められる。
現場を徹底的に洗い続けた結果、犯人に辿り着いた和久の捜査や、真下や雪乃によるネット捜査による成果もマニュアル主義を批判している。
また、副総監と和久、室井と青島という脈々と受け継がれるキャリアとノンキャリアの友情や、捜査の在り方を変えたいという熱い思いが感じられるようにもなっている点も評価したい。
自分の若かりし日を思い出すような和久の暖かい眼差しも印象的だ。
閉鎖的な警察機構、上司の命令を聞かなくてはいけない組織体系、責任の所在を曖昧とする行政組織の体制の中で、自分の理想を実現できないというもどかしさや苛立ちを抱える室井と、「室井さん、指示してくれ」と叫ぶ青島との関係性や信頼性が見事に描かれている。
警察機構の中で身動きが取れなかった室井に対して、青島なりのやり方で室井の背中を押したということがきちんと伝わってきた。
そのおかげで降格を免れない事態に陥ったが、きっと這い上がってくれると室井のことを信じているのだろう。
リハビリを懸命に続ける姿から、自分は現場で頑張る、室井は偉くなるために頑張って欲しいという青島の決意が感じられる。
改めて見直してみると、結構“熱い”作品だったと感じさせる。
10年近くが経過した後の新作と比べると、その“熱さ”に対する落差が残酷とも言える。
せっかくの優良コンテンツが単なるおふざけになってしまったことが残念でならない。