1. 溝口健二についてこれまで言われてきたこと、たとえば新藤兼人による溝口健二論など、それらをいちどはずして、虚心坦懐に観るほうがいい。これなどもそうしてみれば、けっこう悪くない。戦時中「食べるために撮った」と溝口は述懐したという話だが、とはいえそこはミゾグチケンジ、溝口健二に器用にシャシンが撮れたとはとうてい思えない。刀の鍛冶のシーンなどは、おそらく役者をぎりぎりとしぼっただろうし、このシーンはなにやらサイレント時代のドイツ映画かスウェーデン映画をほうふつとさせるものがあって、結構でした。それに戦時末期とはいえ、撮影をはじめとして、スタッフの蓄積された技術をと十分感じさせるものがあって、そんなに悪くない。