2.《ネタバレ》 成瀬映画の例外的に強力なシーン!相思相愛の恋人があるにも拘らず親から政略結婚を強要されている男が草原に仰向けになっていて、その憂鬱を馬上の女性の出現が一挙に吹き払う。大蒼穹をバックに圧倒的に爽快に現れ出るこの馬上の魅力的な女性がなんと政略結婚の相手なのである。もはや何も悩む必要はないのであって、洋装で颯爽と馬に股がるこのモダンガールへと一挙に心変わりである、「メソメソする」和装の入江たか子を棄てて! 日本映画史におけるモダンガール像のきわめて政治的な機能を、成瀬映画も担ったのだ。銃後を守るのみならず外地にも乗り出すような積極的な女性像は、求められ利用され、やがて時期が来れば排除もされるだろう。