11.《ネタバレ》 オープニング、江戸川の風景をバックに寅さんのテーマ曲が流れる。
しかし、「ん?歌声が違うぞ・・・?」と、不安になるオープニング。
終盤の泉の家族のドラマはちょっときついものはありましたが、
寅さんをこよなく愛する者にとっては山田監督がもう1度寅さんを見せてくれた、それだけで十分でした。
当然、現在の時が流れるドラマの登場人物としての寅さんは登場しませんが、
現在を生きる登場人物が懐かしく回想するという形で、過去の作品の中にいる寅さんが登場します。
その1つ1つが懐かしい。そして無理やり登場させているという感が無いんです。
今を生きる登場人物の心の中に生き続ける寅さんがふとした出来事をきっかけに当たり前のように顔を出す。
裏の工場はもうありませんが、あけみが裏から出入りする生活の動線が何も変わって無いとか細かい所も良かった。
特に今を生きるリリーが登場し、寅さんとの思い出を語るシーンも見どころの1つ。
(僕の希望としては「リリー、俺と所帯持つか・・・。」の方を使ってほしかったですが)
今のリリーさんがさもありなん、という感じで。
僕以外のお客さんも、みんな寅さんが好きな方ばっかりだったんだろうな。
例えば、さくらが仏壇に供えられたメロンを見て、「メロンと言えばお兄ちゃんを思い出すのよ。」
その後にはあのメロン騒動が出てくるのが分かっているから、もうこの時点で笑いが起こるんですよ。
第1作から随分時は流れましたが、寅さんの作品の世界の中の時の流れ、
演じる俳優さんたちの時の流れに、今、本作を見る者の時の流れが重なり合う。今年最初の劇場での映画鑑賞は、
何も考えることなく実にゆったりとした気分で、心が温まるいい時を過ごすことができました。
ラストに次々と登場する歴代マドンナたち。そして交互に挿入される満男の表情。
この「ニュー・シネマ・パラダイス」のラストを彷彿させる本作のラストと、
高羽哲夫さんや、今は亡き主要キャストに捧ぐspcial thanksからは
山田監督の寅さん愛が溢れ出ているかのようでした。