6.《ネタバレ》 原作未読、ドラマ未見。
さすがに松本清張原作作品だけのことはあり、見応えが十分だった。
終盤の豪華出演陣も驚かされるばかりだ。
当時としては最先端なのかもしれないが、今観るとかなり違和感のある映像も逆に新鮮でなかなか面白いと感じた。
また、主演の院長が軽薄でどうしようもなく雑魚っぽいところも個人的にはツボ。
現在の映画においては、こういうキャラが主演になることは少ないだろう。
男と女の様々な欲望が絡み合っているが、あまり計算しているように思えず、本能のおもむくままという状態もどこか生々しいところがある。
それぞれがスマートな知能の持ち主ではなく、間の抜けたところがあるため、より人間らしくみえる。
そして、男と女の“性格”が要所要所で上手く描かれているように思われる。
特に、個人的には“殺し方”に特徴が現れていたと感じられる。
男は首絞めやナイフといった暴力的かつ直接的な手段を選ぶものの、女は薬といった間接的ともいえる手段を選んでいる。
男は感情で行動し、女は冷めた目で行動するということだろうか。
現代の男女の在り方を考えると、逆のようにも感じるが、当時としてはそういうものだったのかもしれない。
いずれにせよ、男性よりも女性の方が、肝が据わっているのは事実だろう。
徹底的に利用する女と、徹底的に利用される男という構図も面白い。
もし、院長が婦長を女性のように徹底的に利用することができれば、恐らく身の破滅を防ぐことができただろう。
それができないのが男の性というものか。
院長もわるいやつだが、院長や下見沢を手玉に取る槙村の“わる”が映像上見えてこない点が面白いところでもあり、物足りないところでもある。
完全な“わる”を見せることもないが、もうちょっと彼女なりの“恐ろしさ”を醸し出してもよかったか。
自分の“弱さ”を見せたり、簡単には落ちないような“強さ”を見せたりと、様々な顔は見せているものの、“恐ろしさ”はストレートには感じられない。
刺殺されるという結果を踏まえると、彼女の“恐ろしさ”は相当なものなのだろうが。