1.《ネタバレ》 新藤兼人監督の作品はそれなりに観てきたが、本作が個人的には一番。
主人公の生い立ちを丁寧に描くことで、暴発する要因となった背景が浮き彫りにされている。
集団就職で東京に出てきたが、仕事から何から全てがうまくいかず、歯車が狂う。
だがそれはきっかけに過ぎない。
主人公が暴走し、連続殺人を犯すに至った根本的要因は、その生い立ちにあった。
不遇な生い立ちを経て大人になった人間は、一生、その不幸な生い立ちを背負い続けねばならない。
それを、監督の新藤兼人は訴えたかったのだと思われる。
勿論、不幸な生い立ちを経験した全ての人間が殺人を犯すわけではない。
だが、大なり小なり、社会で疎外感を感じるであろうことは、想像に難くない。
ただその一方で、目を覆いたくなるほど凄惨なシーンが、主人公の生い立ちを描く部分において沢山出てくる。
これにはさすがに暗い気持ちになった。
暗い気持ちになる映画は、あまり好きではないが、作品の重厚さとメッセージ性の強さが秀でているので、映画として十分に楽しむことができた。