112.《ネタバレ》 原作は未読。伊坂作品のいかなる作品の1ページも読んだことはない。
前知識が何もなかったせいか、不思議な感覚にさせてもらえた。
感動というわけでもなく、友情に心を熱くさせるわけでもなく、不可思議なストーリーに驚かされるわけでもない(瑛太がドルジということくらい見ていけば分かるはず、自分はお弁当屋のお握りのシーンでだいたいの謎が解けた)。
しかし、ふわっとはしているが、心に何かを響かせるものを感じさせる作品だ。
切ないようでどこか暖かいような感覚。
がっちりとした絆ではないけど、人間と人間が深い部分で繋がりあったような感じだろうか。
このような独特な感覚を与えている点を評価したいところだ。
日本人同士ではなくて、国籍が違う二人という点もユニークなところ。
それをアヒルと鴨で表現している点もなかなかセンスが良い。
ただ、あえて触れないが、全てを完全にまとめきれていない部分もありそうなので、その辺りが減点材料となるだろうか。
また、河崎が神と崇めていたディランの曲を琴美が聴き、琴美が歌っていたディランの曲をドルジが聴き、椎名が歌っていたディランの曲をドルジが聴き、出会うはずのない椎名とドルジを音楽が引き合わせるという展開も面白い。
「フィッシュストーリー」等の伊坂作品にも表れるが、“音楽によって人を結び付ける”ということが、彼の作品らしいと感じさせるところ。
瑛太も濱田も松田も個人的に嫌いではないもののそれほど好きではない役者だったが、変な色を付けずにナチュラルに演じていたように思われる(濱田は色を付けていたかもしれないが)。
序盤、瑛太はなぜ変にはっきりとした喋り方をしているのかと思ったが、彼なりに役柄を検討した結果なのだろう。
ラストもややボカしている点も悪くはない。
犬を助けようとする男が轢かれるわけがないと思うのか、そうでないかは観客に委ねられている。
いずれの結果にせよ、あの二人は一歩成長して前に進めたということが伝わってくるラストとなっている。