32.《ネタバレ》 追記 2022/10/11
最初観たのが民放でかなりカットされていたのですが、今回NHKBSでフルバージョンで観て
全体の流れがようやく分かって少しはこの映画の捉え方が変わりました。
この作品をSFやタイムスリップ物として期待するとはちゃめちゃな作りで批判的になるのは
しょうがないところですね。
ある人物の過去の人生を語る場合には、主人公が知人を訪ね歩いて話を聞く、本人の残した
日記を読む、などが現実的ではありますが、もっと安易な方法として主人公が過去にタイム
スリップしてしまうという方法があると思います。
この物語ではタイムスリップは、登場人物たちの過去の人生や関わりを説明する為の道具に
すぎないということで(かなり乱暴でご都合主義的)、そこに突っ込みをいれてしまうとも
うこの映画を楽しめなくなってしまうのではないでしょうか。
この映画はあくまでも父と息子の和解と再生を主体とした物語として捉えるべきなのでしょう。
ただそれにしても、みち子さんの自分殺しは必要だったのだろうか?真次と佐吉の話だけでは月
並みで花がないと思ってみち子の物語も付け加えたのでしょうか。父と息子の物語に社内不倫や
近親相姦はそぐわなかったのではないでしょうか。
野平先生は満州の戦闘シーンで登場した民間人と同じ人のようなのですが、彼はどのような役
割を果たしていたのでしょうか?昭一の実の父という話もあるようですが、よく見ると違うよ
うです(もしそれなら昭一が死んだ時に野平先生と民江の間のやり取りがもっと描かれるべき
でしょう)。民江がお焼香をあげる戦死した遺影の人物(東京帝大生?)が実の父親のようです。
などなど、物語自体にも不明な点は多くて、これらについては未だに理解不能です。
ただ不可解なものがあるゆえに奥深い(そう見える)作品になっているとも言えるでしょうが。
ちなみに自分は一時期新中野の近くに住んでいたことがあり、みち子さんのアパートから見える
丸の内線の車両基地が中野富士見町のものだと思って、あちこち探し回ったけど見つからなかった
のですが、今回調べたらあれは茗荷谷の基地だったようですね。
(以下は初見の際のオリジナルコメント)
ここでの批評がかなり厳しかったので、期待せずに見ましたが、まあ合格点はつけられると思いました。厳しい批評の方たちは、この作品をSFタイムスリップ物として期待したのかもしれませんが、実際にはノスタルジックなメルヘン物語ではないかと思います。ですから、あっちこっちに勝手にタイムスリップするのも、過去から現代に電話してしまうのも、目をつぶってあげましょう。親が若かった頃に戻って、人生を精一杯生きている姿を見てみたいというのは、多くの人が抱く心情ではないでしょうか。特に現在の親が風采があがらなかったり、不仲だったりすればなおさらのこと。ここの批評を読んで初めて、あの老先生が長男の実の父だったことが分りました(あの映画の中でどうすればそれを読み取れるのだろうか)。意外と筋書きは凝っているのですね。登場人物の年齢がおかしいという批判がありますが、43歳の主人公が30年前の東京オリンピックの年(64年)に最初にタイムスリップした、ということは、現代の設定が1994年ということになり(田園都市線が新玉川線と呼ばれていたのは1990年代)、みち子さんも65年に生まれたとして現在29歳でぎりぎりセーフではないかと思います。お時さんはちょっと若すぎるかもしれませんけど(あの時代では超高齢出産になります)。舞台となった丸ノ内線や新中野が結構現在の自分に関係のあるものばかりだったので、いつか自分も地下鉄で同じような経験をするのではないか、などとなんか人ごととは思えませんでした。