52.2001年に放映された「HERO」はとても好きなドラマだった。
「検事」というこれまであまり題材にされなかった職業を描いたことによる斬新さと、サスペンスとエンターテイメントを巧く織り合わせた脚本力の高いドラマだったと思う。
ドラマ終了からすぐ続編シリーズへの期待が高まったが、「映画化」に対しては懸念の方が強く、それほど興味が涌かなかった。
テレビドラマの枠で小気味良く展開する方がこの作品の性質に合っていたと思ったからだ。
実際に観てみると、思っていたよりは、映画作品としての完成度は一定水準に達していると思う。
ただ、やはり少々無理矢理に“肉付け”して仕上げている感も否めない。
尺を満たすために全体的にテンポが悪く、無駄なシーンや展開も多かったと思う。
ドラマシリーズではほとんど描かれることがなかった法廷シーンは、とても面白味があったと思う。
時に冷静に、時に熱情的に弁論を繰り広げる木村拓哉演じる久利生は魅力的だったし、豪腕弁護士を演じる松本幸四郎との対峙は緊迫感があり良かった。
つまりは、もっと法廷シーンが多くて良かったし、被害者家族の描写や、証拠集めのプロセスなど「事件」に対する本質を更に深く描けていれば、ドラマシリーズとは一味違った「法廷映画」として更に完成度を高められたと思う。
そういう意味では、色恋に走り過ぎていたり、安易なエンターテイメント性にすがってしまっている部分が見えることは残念だ。
しかしながら、ドラマシリーズのファンにとっては楽しい作品であることは確か。
観て損はないと思うし、改めてドラマシリーズでの続編を期待したい。