31.《ネタバレ》 原作未読。映画を見た感想は「お腹いっぱいご馳走様でした!」と数年ぶりに大満足できた一本です!! 冒頭は、私語ばかりで落ち着きのない生徒たちと、それを当たり前にして話をする教師の姿にイラッとしましたが、ラストにはそんな気分もすっかり消え失せてニヤリ&スッキリ。ものすごくスカッとしました! 日頃「子供産んで無責任な育て方してる奴は社会の迷惑だ」と思ってる口なので、不謹慎と思われようと、今回の物語の二人の母親がその責任を取らされたのが気持ち良かったです。少なくとも今回の物語のケースは二人とも母親失格間違いなし(なので「こんなしっかりした親にしっかり育てられて、何故?!」というようなケースならどうなのか気になりますが)。しかし大人の男が全く存在しない世界の話でしたが(ウェルテルもまだ若すぎて「大人」ではない)、これはしっかりした大人の男が不在の社会がいかにして甘ちゃんで勝手な子供たちを作り出すかというのを見せられた思いです。そもそも物語から無視されるほど、男親側も情けない。【追記】以前、少年院の子供たちの手記集を読んだことがあるが、ある程度同情はできても「そんな甘えで人を殺すな!」「ふざけんな!」と怒りたくなるものがいくつもあった。テレビ報道を賑わせた有名事件も含め、犯罪動機のほとんどはバカバカしさに満ちている(大人の犯罪だってバカバカしいのは多い)。なかには自分自身の心理さえつかめなくて真実の動機など本人にも把握できてないケースもあるだろう。現実にバカバカしい悲劇が何件もある。失った命の天秤の向こう側にあったものの質がそういうことなのだ。それだけに主人公森口の放つ「どうしてですか」の末の「バカバカしい!」は印象大。命の重さを表す「パチン」と「ドカーン」の対比もいい。昔は真剣に向き合って叱ってくれる恐い大人というものがいた。今は「子供と同じ土俵に立って大人げない」なんて言われかねない世だが、一方で「子供も大人と同じに法で罰しろ」とも言う。少年法云々の前に、子供たちを作り育てているのは大人たち社会であることを思う。その大人の責任が先。自分の場合、少なくとも命に関わることされれば真剣怒る。反省したふりなんて楽勝でこなしそうな少年Aなど、司法や警察や世間といった他人任せで済ますほど自分は他人の心や力を信じないし、本当に痛みを思い知らせることができるのは当事者だけだと思う。 【だみお】さん [映画館(邦画)] 10点(2010-06-14 16:45:53) |
30.《ネタバレ》 原作未読。どのような視点で評価するかによって、採点がえらく変わってしまう作品だ。話の筋は、こちらの意表を衝く展開の上、事件がてんこ盛りに発生するので楽しめるのだが、現実性があるかと問われると、少し疑問符を付けざるを得ない。いくら口封じをしたところで、クラスの誰かが血液入り牛乳の件を親か他の先生に話すに決まっている(と思う)。そもそも、犯人Bが怯えすぎ。頭が悪く、人を信じやすいという設定だが、あれだけマザコンならイの一番に親に話すだろう。 あとは、主人公がたかが中学生の少年たちに対してまともに相手をしすぎ。僕だったらいくら子供を殺されてもああいう対応はしないと思う。同じ土俵で争う自分が大人気無くて恥ずかしくなるし、そんなに暇じゃない。僕だったら、少年AもBも、普通に警察に突き出し、一旦少年院に送ってもらう。彼らもそのときは「有名」になれたと喜んでも、大人になれば結局は損をするわけで、彼らが大人になった後に過去の事件を持ち出してねちねちと攻めたてて、孤独に追いやった方が、よっぽど「復讐」の醍醐味を味わえるのではないか。大人になって手に入れたものを失わせるほうが、「目には目を」の精神にも合致していて美しい。 映像に定評のある監督だけに、確かに映像の使い方はうまい。ともすれば単調になりがちな「語り」が多い映画だが、スローモーションを効果的に使った映像で、生徒たちの思春期のきらめきを見事に表現できていた。ただし、終盤の爆発シーンは冗長だったが。 学校に心底うんざりしていた中学生の頃に観たら、もっとカタルシスを得られたかもしれない。中学生の持つ「うざさ」が、すごく良く描けていた。うざいいじめっ子、うざいネクラ、うざい秀才。みんな身の回りにいたような気がする。そのリアリティを加味して、総合で6点。話の展開には不満が残るが、観て損は無い作品だと思う。 【枕流】さん [映画館(邦画)] 6点(2010-06-14 00:17:11) (良:1票) |
【Keicy】さん [映画館(邦画)] 8点(2010-06-13 21:04:58) |
28.《ネタバレ》 この話、ひとことで言えば、「ばかばかしい」。 これは、前に原作小説を読んだときに感じたことでもある。映画も基本的には原作をそのまま踏襲しているので、話の展開自体は同じように「ばかばかしい」。 なので、最後の方で再登場した松たか子が吐き捨てるように呟いた「ばかばかしい!」という台詞には正直ドキッとした。ほんと、そうですよね。ばかばかしい話ですよね。このプロット、この展開。松さんの言うとおりです。。 松たか子。前作「ヴィヨンの妻」も良かったけど、本作も堂に入った演じっぷりで、台詞回しや表情、そして、うしろ姿にはとても迫力があった。最後の「どっかーん」も鬼の形相のような笑顔も結構ぐっときた。 映画は、ばかばかしい話を随所に映像的に盛り上げていて、なかなか見所があった。この監督の映像感覚は相変わらず面白い。賑やかさの中に毒が効いていて、はっとさせられる場面もあった。ただ、あの断続的な映像が100分間ぶっ続けなのだから、やっぱり疲れるかな。 この話が観ている時の衝撃以上に全く心に残らないのは、話自体がマンガ的、キャラクター小説的だからだろうか。ノリとしては、よくある少年マンガのキャラ対決と同じかなと。少年が罪を犯す理由が「世間に自分を認めさせるため」であり、特に母親との関係に自我の心理的な動機を求める。100年前からの伝統に基づく実に類型的なお話である。(そこに最初から父親の影すらないのが現代的だけど) ついついそういう所につっこみを入れながら観てしまうのだが、何れにしろ、しっかりとキャラが立っていたので、この手の物語としてはかなり出来がよいのだと思う。マンガとしてみればその破天荒なばかばかしさは痛快だったし、多少の違和感を残しながら、最後はしっかりとオチが付いて、めでたし、めでたし、である。 告白とは? ということを考える。私の告白とは誰の告白なのだろう。私? 告白する私とは誰だろう? 告白すればするほど、いや、告白したつもりが、ただそう言わされているだけで、それが本当の私であるという確証など何処にもない。そうだろうか? 今や告白こそが私そのものであり、それ以外の本当など存在しえない、つまり「本当の私のココロ」などというものこそ、もはやありえないのだ、、、と考えてみる。そういう「告白」に人々が振り回されるという意味において、この映画の「告白」は実に現代的で軽い、なーんてね。 【onomichi】さん [映画館(邦画)] 8点(2010-06-13 20:48:35) (良:1票) |
27.《ネタバレ》 色々とコメントしたいところですが私はあえて・・・やはり最後の一言 「~なんてね。」 がつくかつかないか。原作は電話のみのやり取りで、更に疑問を投げかけて終わっているが、映画は実際に目の前に現れ少年の髪を掴み、軽い感じの~なんてねを使用している。 監督の優しさから出た言葉なのか、空想を広げようとしたことなのか?・・・はたまた主人公の復讐に狂気を持たせたかったのか?私はどれなのかよく解りません。 実際爆発したのでしょうか?それも明確でもありません。 私は爆発しなかったと思っていたのですが、一緒に見に行った母は私と意見が違っていました。 もし少年2人の母親が復讐と化した教師の操りによって、結果的に息子に殺されてしまったのであれば、見終わった後の感じ方が全く変わってしまう・・・。 個人的に「後は想像で・・・」という終わり方が好きではないので-2点にしています。 見た人によって色んな意見が出ると思われる、問題作ですね。 映像も、役者さんの演技も見事でした。 血が苦手な私はちょっと眩暈がしました。 母は見終わった後、呆然としてすれ違う人と何回も肩がぶつかっていました・・・。 そんな映画でした。(今後忘れることもないであろう濃い映画。) あまり人には勧めたくありませんがね・・・。 【だんぼ32cm】さん [映画館(邦画)] 8点(2010-06-13 15:05:15) |
26.《ネタバレ》 大賞受賞に偽り無し!面白すぎて一気に読破してしまった湊かなえの原作。 ベストセラーの低脳映画化などよくある事、不安過多で鑑賞したが、この作品の出来栄えは想像を遥かに超えていた。この作品のもつ“あの”異様な空気が存在し続け、鑑賞時間があっという間に感じてしまったほど。 既に内容など分かってるのにここまで面白いと思ったのは稀ですし、この監督と自分はシンクロしてたのかと思うほど想像どおりの映像化なのが怖い。。面白いと一概に言うのは語弊があるけども素晴らしい作品。今後は「告白」の監督と宣伝文句決定か!?(笑) 物語は原作同様に登場人物の告白、各々の主観形式で進んでゆく。それ故、序盤から非常に台詞が多いのも特徴だが、その台詞ひとつひとつがシークエンスとなってる点も興味深い。「人間の失敗作だよ」ではなかったのはアレですが、一語一句に至るまでもほぼ忠実。映画なりに脚本はコンパクトに纏まられているが、全体が青白いトーンであったり、モノローグの挿入方法やカメラの目線や高さがどうしてあの位置なのかなど、映像化への昇華、演出が見事というしかない。 先生の告白で始まるファーストシーンは特に象徴的であり、これから語られる作品の異様さがにじみ出ている。学級崩壊寸前の雰囲気の中、淡々と冷静に淡白に語る先生。そして生徒が興味を惹くキーワードを小出しに話していくにつれ、静まり返っていく教室内。このあたりはホント背筋の凍る怖さを感じました。松たか子のキャスティングは良かったがウェルテルはちょっとイメージ違ったかな。 賛否両論のクライマックス、逆周り時計のエピソードがあんな形ででてくるとは驚き。後味良くないと思われつつも「ドッカーン」で気分スッキリしたのは自分です…なんてね! 【シネマブルク】さん [映画館(邦画)] 10点(2010-06-13 12:24:17) |
★25.《ネタバレ》 この悪意満載の映画には正直、興奮した。結末どころか中身が全部わかっている以上、映画になったときに期待するのはどの辺まで小説のアイデアを拝借してまるで違うものが作られているかということだが、ここまで同じ話なのにここまで面白く、映像や音の威力というものの神髄を見たかのようだった。
後味が悪いことや、倫理観が壊れてしまうような感覚、自分が知っている子供世界との差異へのたじろぎのような不快感は、すでに全く同じような原作の感想を方々で見ている。この作品が持つ不快感というのは明らかに作り込まれた不愉快であり、人造であるが、自然と作品の主張であるかのように存在感がある。
人工物であるという、隙のようなものがある種の箱庭感、安心感を醸すのだがこの作品に神経を逆なでされた人たちは、策略に乗せられても現実世界をもう一度認識することで強い不快感を顕わにする。それはこの作品の中で広がるいやな世界を否定することで現実世界の安心感を確かめたということだと思う。
しかし、これほどの不快感を人に与える暴力的なお話であるというところに私は何とも言えない魅力を感じてしまう。原作のもつ人に煩累を植え付ける暴力性を否定する書評やレビューが自然と、その嫌悪感の虜になった人たちの評価を浮き上がらせる。なんというか巧妙な心理操作がたまらない。心地よささえ感じてしまった。
松たか子がなぜかすんごい美人に見えて、吸い込まれるように感情移入してしまう。言い逃れする余地を存分に残し、最後には仕返しのためなら無差別に殺してみせる。実行犯を仕立て上げておきながらなお、すべてを失っている彼女は、真実が露見したら自殺するから良いもんね位の軽い薄ら笑いを浮かべた。「私が命の重さとか言っちゃって面白かった?ケケケ」的な確信的な薄ら笑い。が、なぜかすんごい爽快感だった。なんだこのザマーミロという爽快感。
なんかオレ変なんだろうなきっと。 【黒猫クック】さん [映画館(邦画)] 9点(2010-06-13 01:09:44) |
24.《ネタバレ》 アップとスローモーションの多用、不安を煽るCGの曇り空、松たか子の舞台的な芝居掛った演技、唐突に始まるクラスメイトのダンス、ステレオタイプに肉付けされた反抗的な中学生達。全体が「ああ、作り物の世界だな」と思える演出はいつもの中島哲也らしい。原作小説の中盤を一纏めにして描いた事はストーリーのテンポを考えると上手い選択ですし、観客の物語に対する関心をグイグイ引っ張っていく手際は流石だなと思えます。 ただこの映画(原作も)、観客が聖職者の生徒への復讐が成し遂げられ様を見てスカッとしてしまう所が最も怖く、最も面白い点だと思いましたので、前述した様な「作り物で~す」と思える舞台にしちゃったのは個人的に勿体無いなと。画作りをリアルにすればするほど松たか子に感情移入出来て、最後の復讐を目の当たりにした時、観客に恐ろしい爽快感が残ると思うのですが。でも何故か人が死ぬ所だけはやけにリアルなんですよねぇ。 【民朗】さん [映画館(邦画)] 5点(2010-06-13 00:37:28) |
23.自分は「39 刑法第三十九条」という映画が好きで、この映画の予告編に同じ匂いを感じて見に行った。 けど、ダメだった。 とにかく映像とセリフがバラバラの回想・独白シーンが延々と続いてウンサリしてしまう。 それでも飽きずに見れたのは、グロシーンに目が引かれるから。 でも、ウンザリだから次のシーンを想像してしまい、ほぼ想像通りになってまたしばらくするとウンザリの連続という感じ。 そして、終盤のCGシーンはハァ?なんじゃこりゃ?としか思えなかった。 期待して見に行った分、ちょいガッカリ。 【まかだ】さん [映画館(邦画)] 5点(2010-06-12 18:09:47) |
22.評価を見て大いに期待しましたが自分には解せない部分があり過ぎました。自分が中学生の時にもバカな生徒はいたし苛めもありました。人並かそれ以上に色々悩んだこともありましたが、だからといって映画としてこう言う表現はいかがなものでしょうか。どんな悲劇もエンターテイメントに昇華する監督の腕前に期待しましたが本作では救いは一切無く、奈落の底に突き落とされます。その点はリリィシュシュに似ているかも。しかし今の子供達はここまでバカじゃありませんよ。制作者側の悪意を感じる表現が散見できました。良いところも沢山あります。松子も大好きだし素晴らしい監督だとは思いますが本作に関しては人には絶対に勧めたく無いと思いました。 【Kの紅茶】さん [映画館(邦画)] 4点(2010-06-12 18:02:49) (良:3票) |
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21.《ネタバレ》 すごい映画だ。原作が良いのか映画化が上手いのか。原作は未読だが賞も獲っているし、両方いいのだろう。いろんな意味で登場人物が皆こんなに残酷でエゴイスティックな映画は初めてだ。好き嫌いが分かれる映画かも。ただ、傑作であることは間違いない。最初は登場人物の行動が理解できないが、告白が進むにつれその理由が怖いくらいにクリアになっていく。その演出がうまい。一見モノクロといってもいいくらいの彩度の低さだが、これを通常の彩度にすると血の色が鮮烈過ぎて、登場人物の告白に対する集中がかけてしまうに違いない。だからこの色合いは正解だと思う。また、深刻な内容に一見合わなそうなBGMの選択が恐ろしくいい。あと個人的には木村佳乃の演技が良かった。 【MASS】さん [映画館(邦画)] 9点(2010-06-12 17:58:38) |
20.凄い映画でした。自分ごときには、うまく感想が書けそうにありません。点数のみで失礼します。 【KAZY】さん [映画館(邦画)] 10点(2010-06-12 15:47:37) |
19.《ネタバレ》 全く笑えない状況なのに、優雅なBGM、美麗な映像が異様。正直、この演出はグロい。 気持ち悪い。今までに「下妻物語」「嫌われ松子の一生」「パコと魔法の絵本」とゴテゴテとしたポップカラーで演出力の高いインパクトのある映画を撮ってきた中島哲也監督、本作では演出センスはそのままに、しかし、楽しげな演出を180度ひっくり返して、完璧なまでの不快感を存分に与えてくれる。 この気持ちよいくらいの不快感(矛盾)は、パク・チャヌク監督の「オールド・ボーイ」等の復讐三部作に近いものがある。 個人的には、この映画で描かれているリアリティだとか、社会性だとかはこの際どうでもいい。人間ひとりひとりは、割といそうな感じではあるが、(悠子先生除く)展開は容赦なく、ありえなく豪快。 悲劇性、不快感は高いけれども、やはりこれは、ひねくれた一流エンターテイメント作品のように僕には見えた。余りにもぶち切れた展開と、異様な演出は、この世のものとは思えず魔界の住人を描いたもののように見えてしまって、僕には特に考えさせられたとか、心を動かされたなんて部分は正直全くなかった。 しかし、それでも傑作だと言いたいだけの力がこの映画にはあった。 こんな褒め方をしたくなった映画は初めてかも。 【すべから】さん [映画館(邦画)] 9点(2010-06-12 00:24:41) (良:2票) |
18.相変わらずの中島監督節。個性ある作風は強烈に心に残る。 当たり前のように血しぶきをたて人が死に、人間の狂気を淡々と描いた構成。前半は衝撃展開の連続だが、後半は結局告白の繰り返しになるのでやはり飽きる。 ラストも正直いまひとつ。これは期待しすぎると肩すかしだね。 【テツコ】さん [映画館(邦画)] 5点(2010-06-11 20:35:29) |
17.《ネタバレ》 10点、9点ばかりの中で申し訳ないが平均点を下げさせて貰う。中島哲也監督らしい観る者を話の中へと引き込んで離さない演出力と映像美、あの汚れた感じの空の色、雲の色の不気味さこそが人間の怖さ、この映画の不気味さ、狂気というものをよく表しているし、自分勝手な奴らきり、人間が如何に自分本位な考えで生きている生き物なのかを皮肉たっぷりに描いている作品としての評価という意味では見事である。しかし、この映画を見て馬鹿な真似をする奴ら、刑に罰せられないからと犯罪を犯す少年、少女が今以上に増えてしまわないか?映画というメディアによる影響力の強さ、人が人を人とも思わずに殺人を犯す人間、それを警察でもない森口教師のように自分の手で復讐しようなんて思う人達がどれだけ周りの人達を不幸にするかということのやりきれなさ、娘を自分の教えているクラスの生徒に殺された教師、殺した二人の少年、少年Aと少年Bの幼児性、誰よりも目立つことしか考えない愚かな少年Aとそんな少年Aを羨ましく感じている少年Bという対照的な二人の少年、そんな二人に関わってしまった結果、悲劇的な死を迎えることとなる教師森口の娘と二人の少年の気持ちを誰よりも理解していたたった一人のクラスメイトの美月、何の罪も無いのに自分勝手な二人の犠牲となってしまった二人のことを思うと、どんなに凄い映画であれ、手放しに絶賛する気持ちにはなれない。この映画は人が人を信じ、疑い、互いが自らの命は自分の手で守らなければならない。娘を守ることすら出来なかった教師の視線から見た場合と加害者である二人の少年とその母親との視線とで大きな違いが沸いてくることは見た人なら絶対に解るはずである。少年法という制度がある以上、どんな罪でも刑に処せられない中学生、私はそれが中学生であれ、例え小学生であれ、年齢など関係なく罰するべきである。日々そのぐらい思ってます。この映画を誰が最も観るべきか?それは子供でもなく我々普通のいわゆる一般の大人でもない。では誰に最も見せるべきか?国の法律を変えることの出来る人達、そういう人達にこそ見て、一日も早くこの今のおかしな少年法という制度を無くして頂きたい。 【青観】さん [映画館(邦画)] 6点(2010-06-10 22:22:15) (良:4票) |
16.映画館でコーヒーを買ったのに、一口も飲むことができず上映終了となったのは始めてだわ・・。決して気持ちのいい映画ではないけど「哲也は天才」。でも「下妻」が少し懐かしい。松たか子という役者はすごいですね。さすが舞台で鍛え上げてきた役者だと思った。 【グレース】さん [映画館(邦画)] 8点(2010-06-10 20:41:17) |
15.凄い映画だ。 下妻からパコまで、どれも大変気に入っていたが、全てを「どっか~ん」とぶっ飛ばすほど、この作品はいい! いままでが予行練習だったかのような、色、動き、話、演技。1シーンに入ってる情報量が多くて、途中、時計を見て1時間経ってないのにびっくり、これはつまらなくて長く感じたのではなく、これだけの時間でこれだけ表現してるのかという事に驚愕した。 教室で蠢く悪魔のようなガキ共、バカ熱血教師、子供を制御できないアホ親、そして教師森口。当然私の立ち位置は森口講師側に居る訳だし現代の子供達の現実をメディアでしか知らない私は少なからずこのような生き物であろうと思ってもいる。 R-15などと言わずに子供達に見てほしい、こんな風に思われていることを。実際高校生風の2,3人が数組観ていたが、皆、押し黙って映画館を後にしていた。 100分ちょっとでこの満足感、すばらしい! 【カーヴ】さん [映画館(邦画)] 9点(2010-06-09 11:53:48) |
14.《ネタバレ》 凄い映画を見た。きっと日本の歴史に残る偉大な作品になるだろう。文句のつけようがない素晴らしい原作。それを映像化する事によって活字では生み出せない、残酷さ、悲惨さ、そして美しさを垣間見せる事ができたのではないだろうか。物語は女教師の告白から始まり、その告白に関わった人物それぞれの視線からの告白で進められる。この斬新なストーリー展開がじわじわと我々に訴えかけてくる。物事は一方的な考えで判断する事はできないと。教育とは何か?あくまで教師と生徒という立場で丁寧な言葉で接し、同じ目線に立って行う教育。はたまた教師という壁を取り払い、身内のような、兄弟のような関係でタメ口で話し、あだ名で呼び合って行う教育。命の重みとは?娘のためなら自分の命を投げ打ってもいいと思うものもいる。自分を認めてもらうためにそれを奪って注目を浴びようとするものもいる。愛するとは?例え殺人を犯した人間であろうとその人を理解しようとするものがいる。ただの暇つぶしで自分の理解者を弄ぶものがいる。そういった物事の多面性を上手く描き、それらが醸し出す人間の暗黒面の姿は見てるものに不快感な衝撃をも与える。う~ん、この作品、文句のつけようがないわ。 【関白宣言】さん [映画館(邦画)] 10点(2010-06-09 00:52:41) (良:1票) |
13.《ネタバレ》 原作未読。娘を殺された女教師の告白と復讐なのかと思いましたが、関わった人間のそれぞれの視点からの告白という形態で、誤解や偏見による見解の相違や論理感で悲劇を生みだし進んでいく展開は中島監督の演出の巧さもあってグイグイと引き込まれるモノがありましたね。編集や間の取り方、子役も上手いし音楽も良いな。 学生時代を思い出しながら観ましたが、「いるよなぁ、このタイプ」と思うような生徒達と無駄に熱血で話を大きくする先生、現実を直視できない母親、子供が思うようにいかないと切れる母親などリアルを感じました。 感情が死んだのかと思わせるような淡々とした口調で告白する森口。彼女は理論的で理詰めで精神的に追い詰めるやり口で怖かったな。最後の「なぁ~んてね。」って台詞は色々なトコに掛けているような解釈ができるので深みが増した。 学級崩壊、いじめ、徒党を組み場の雰囲気に流されノリで悪さを繰り返す少年法に守られた冷めた子供たち。守られていると解った上で軽々しく人の命を奪うのは稀な例だが、命の重みを理解するには自分の大事なモノが壊されないと、ってのは感じますね。全てお遊び感覚なんだろうな。日本の未来はどうなるんだろう。 まぁこの無軌道な子供たちやその親に鉄槌を喰らわすような作品をよく撮ったし、凄いなとしか言えませんわ中島監督。これに対して観た人がちゃんと理解し、向き合うかはその人次第だろうけどね。 【ロカホリ】さん [映画館(邦画)] 10点(2010-06-08 22:26:59) (良:1票) |
12.《ネタバレ》 告白とは主観だ。そこには話者の思い込みや誤解、そして嘘が含まれる。つまり告白とは純然たる真実をありのままに語るものであるとは限らない。少年と少女が睦まじく戯れる同じ光景が、少女の告白においてはまぎれもない恋である一方、少年の告白の上ではくだらない暇つぶしに過ぎないようにだ。いびつな道路反射鏡や防犯ミラー、あるいは姿見に反転させて中島哲也監督が描くのは、そうしたこの世界の不確実さだ。窓外の風景は常に磨りガラスやカーテンにより遮蔽され、リアルから切り取られたその世界の上空には常に不純物としての雲が配置される。時に鈍色に時に茜色に空を蔽う雲は、まるで真実を不透明に彩る彼らの告白=嘘の暗喩のようだ。森口先生の娘を殺した修哉と直樹それぞれの嘘、直樹の母親の嘘、修哉の理解者たる美月の嘘、1年B組の教室に渦巻く嘘、さらには熱血教師ウェルテルの滑稽な存在意義それ自体の嘘。だが、無限の嘘で塗り固められたその箱庭を、中島は最後の最後に容赦なく爆破する。そうしてそこにただ一つの真実を強烈に叩きつける。それは、粉々に魂を砕かれる人間の、想像を絶する痛みと、断末魔だ。中島が『夏時間の大人たち』や『嫌われ松子の一生』で祈るように描いてきた、階段上の一室で両手をひろげて自分を待ち侘びてくれる、大切なだれかの愛情。修哉にとってのその階段が、愛が、木っ端微塵に破壊され焼失するさまは、まさに胸をえぐるばかりの壮絶さだ。愛する人に見せたかったくだらない発明品=逆回り時計によって甦る彼の切望した光景が、針を戻したこの装置に再び跡形もなく焼き尽くされるその地獄。牛乳に血を混ぜたと語る森口の告白を、美月の告白における森口が覆したように、時限爆弾の顛末もまた森口の嘘であったかもしれない。「あなた方は嘘をつくのが実に上手」だと生徒たちを評する彼女にとっては、その嘘こそを彼らへの復讐の刃とすることに大きな意味があるからだ。大切なものが消える音が私にも聞こえたと森口は言う。すさまじい形相で彼女が放つ爆発音は、あの夜プールサイドで彼女自身が聞いた、その音でもあるだろう。そうして森口が突きつける、本当の地獄。想像を絶するその痛みに自らも貫かれた時、少年Aはようやく森口と同じ地平に立つ。リアリズムの映画ではない。正しい映画でもない。だが、ただ一つの真実が、凄まじいその痛みが、観る者の胸をも木っ端微塵に打ち砕く。 【BOWWOW】さん [映画館(邦画)] 10点(2010-06-08 12:36:37) (良:3票) |