59.《ネタバレ》 この作戦の誤算は作戦参謀のシュタウフェンベルクが
戦略家では有ったけれども戦術家では無かった事でしょう。
シュタウフェンベルクは明らかに大局だけを見つつ、この綻びだらけのクーデター作戦を成就しようとしていた。
空白地帯と化している本拠ベルリンにおいて予備兵を総動員し、重要拠点を力ずくで押さえ込む。
あとは出たトコ勝負の時の勢いを借りて、強引に全てをひっくり返してまおう。
確かにその大局的視点においては非常に素晴らしいクーデター作戦でした。
もし、シュタウフェンベルクが少しでも局地的な観点から物事を見れる人間なら
ヒトラーが死のうが生き様が、狼の巣から伸びる電話線を全て切ってしまったはずで
それは1個小隊ほどの私兵が居れば可能だったはずです。
決行後は事の成否に関わらず、オルブリヒトが直ちに予備軍司令官フロムを拘束し、即時作戦の実行へ移る。
実行後、宣伝相のゲッべルスと宣伝省を真っ先に押さえたのちに
伝令部を制圧して情報統制を図り、その後SS本部、ゲシュタポなどを各個襲撃して行けばもしかするとこのクーデターは成功していたかも知れない。
特に通信兵大将のフェルギーベルに通信遮断を依頼する事自体が間違っています。
彼からは狼の巣から伸びる電話線の位置を聞き出せばあとは事が足りたはず。
また、ヒトラーは自分が反ナチス派から再三狙われている事は、以前から分かっていました。
いま味方としている側近の中にも自分のやり方に対し、迷いが有る事を見抜いていたのかも知れません。
そう考えるとヒトラーは反逆者を炙り出す為に
ワザと彼等を泳がせてこのクーデターをを決行させる事で一挙に事態の収拾を図ったのではないか?
実はこの作品はそれも暗に匂わせた作りに成っています。
トレスコウが取りに行ったリキュールを「ココで飲みますか??」と、意味有り気に笑うブラント大佐。拳銃を卓上に出したまま、反逆者の事にも触れています。
別荘で新任の予備軍参謀長であるシュタウフェンベルクを呼び、ギロリと見据え「ワーグナーを知っているな」と、言うヒトラー
「生かす者と死すべき者を選び。。。」この辺りは相当にキワドイシーンです。。。
事実、このクーデター失敗以後は反体制派の大粛清が行われ、敗戦まで1度も暗殺計画は起こってません。
歴史的事実は事実として記録される以上に、深く暗く横たわっています。。。。