5.人間と人間。動物と人間。
それぞれが物云わず見つめ合う交感シーンでの繊細な眼の表情が、
最後のシークエンスに至るまでことごとく素晴らしい。
虎やグリズリーなどの動物たちだけでなく、不動産のセールスマンや検査官や
レジの女性など、端役一人一人に至るまでの目配せも実に丁寧だ。
また、巧みなのは印象的な台詞の反復だけではない。
窓ガラス越しに出会うこと。相手に眼差しを返すこと。陽の光を浴びること。
そうした視覚的主題の反復もまた重なり合って、
マット・デイモンとスカーレット・ヨハンソンの表情の切り返し、
エル・ファニングとコリン・フォードの表情の切り返しをより美しいものにしている。
キャメロン・クロウの選曲自体も相変わらず良いのだが、
夜の動物や虫たちの声を静かな背景音として聴かすべき三箇所で
音楽を被せてしまっているのが残念なところ。
引越し前の賑やかな夜との対比は利かせて欲しかった。